今回は、エヴァンゲリオン新劇場版における、エヴァ第13号機の正体、モチーフについて考察します。

エヴァ第13号機とは
Qでネルフ(碇ゲンドウ)によって建造された機体です。
初号機と見た目がそっくりですが、目は4つあり、腕も4本あります。通常時は2本の腕は胸元に折りたたまれ収納されています。
エヴァの中で唯一ダブルエントリーシステムが採用されており、パイロットが2人搭乗する仕組みになっています(理由は、後述の建造目的に関係しています。)。
パイロット:シンジ、カヲル、オリジナルアスカ
Qにおける第13号機には、碇シンジと渚カヲルがダブルエントリーして搭乗していました。
他方、シンエヴァにおいて、使徒化した新2号機を倒した際の第13号機には、オリジナルアスカとカヲル(オリジナルアスカの股下に小さく描写)が搭乗していました。
クローンアスカ「式波タイプ。私のオリジナルか」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
オリジナルアスカは、プラグスーツを着ておらず、裸姿で、クローンアスカによる平手打ちがすり抜けていたことから、パイロットというよりも魂のような状態になっていたと思われます。
カヲルは、Qラストの(ニア)フォースインパクトの際、DSSチョーカーによって死亡していましたが、メカニックデザインの山下いくとさんのTwitterによると、エントリープラグには「カヲル再構成装置」が設置され、魂はなくなったものの、第13号機を動かすためだけに「抜け殻」として再生されていたようです。
「アダムスの生き残り」の意味とは
第13号機は、「アダムスの生き残り」と言われていました。
シンエヴァの、ヤマト作戦による旧南極セカンドインパクト爆心地跡への突入シーンでは、5本の十字架が立っていました
したがって、セカンドインパクトには、5体のアダムスが投入されたと思われます。
しかし、旧南極セカンドインパクト爆心地跡にあった5本の十字架の内、1本だけは傾いていました。
この傾いた十字架に対応する1体が、セカンドインパクトを生き延びた「アダムスの生き残り」として、後の第13号機の素体になったと考えられます。
「生き残り」である以上、第13号機の素体は、アダムスのオリジナルです。
なお、「アダムスの生き残り」は、セカンドインパクト後、ネルフ本部付近へ運ばれ、序の冒頭で描写された白線の巨人跡を作ったと考察しています。
神の機体
シンエヴァの、第13号機に停止信号プラグを刺そうとする前のシーンにおいて、アスカは、「神の機体をうたったところで、所詮は人の造り出した第13番目の汎用ヒト型決戦兵器」と言っていました。
「神の機体」とは、何を意味するのでしょうか。
アダムス(神)のオリジナルが素体
上記のとおり、第13号機は、アダムスのオリジナルである「アダムスの生き残り」を素体として建造されました。
エヴァンゲリオンシリーズでは、「神」と呼ばれる対象が複数いますが、アダムスのオリジナルも「神」と呼ばれています。
ATフィールドがない
セントラルドグマにおける改2号機、8号機との戦闘シーンにおいて、第13号機は、8号機の撃ったAAA(アンチATフィールド弾)を吸収してしまいました。
つまり、第13号機には、ATフィールドがありません。
真希波マリ「ATフィールドがない?まさか…この機体」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
改2号機との交戦において発生していたATフィールドは、ガンダムのファンネルのような外部装置によるものでした。
ATフィールドがないことは、何を意味するのでしょうか。
この点については、シンエヴァにおけるゲンドウのセリフが参考になります。
ヴンダー甲板上で赤木リツコに銃で撃たれたゲンドウ(ATフィールド不発生)「神に障壁はない。来るものを全て受け入れるだけだ」
ゲンドウの補完シーンでシンジと対話するゲンドウ(シンジが近づくとATフィールドが発生)「ATフィールド?人を捨てたこの私に?まさか、シンジを恐れているのか?この私が」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
つまり、「神」と呼ばれるアダムスは、他者を恐れる心の壁であるATフィールドを持たない存在なのだと思われます。
したがって、アダムスのオリジナルから建造された第13号機にもATフィールドがないのだと考えられます。
第13号機の建造目的
第13号機は、何のために建造されたのでしょうか。
リリスの結界を突破するため
カヲルは、第13号機のダブルエントリーシステムについて、セントラルドグマへの侵入を許さなかった「リリスの結界」を破るためのものであると説明していました。
カヲル「大丈夫さ。これを突破するための13号機だからね。2人なら出来るよ」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
なお、画コンテ1054では、もともと「これを突破するためのダブルエントリーシステムだからね」というセリフになっていました。
2本の槍を抜くため
また、カヲルは、セントラルドグマでリリスの骸とマーク6に刺さっている2本の槍を持ち帰るためのダブルエントリーシステムであるとも説明していました(ただし、2本の槍を抜かせるためのゲンドウの罠でした。)。
カヲル「そう。ロンギヌスとカシウス。2本の槍を持ち帰るには魂が2つ必要なんだ。そのためのダブルエントリーシステムさ」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
最後の執行者とするため
Qの、第13号機が完成したシーンにおいて、冬月コウゾウは、「最後の執行者がついに完成したか」と言っていました。
執行者とは、儀式の執行者、すなわちインパクトのトリガーとなる存在であることを意味していると思われます。
実際、第13号機は、(ニア)フォースインパクトと、フォース(アナザー)インパクトのトリガーとなりました。
第13号機のモチーフ
アダムスのモチーフは熾天使(セラフィム)
まず、前提として、私は、アダムスとリリスについて、共に天使階級の最上位である熾天使(してんし・セラフィム)であり、リリスはその中でも特別で最強ながら地上に堕ちた12枚の翼を持つ堕天使ルシファー(ルシフェル)をモチーフにしていると考察しています。
したがって、第13号機の素体である「アダムスの生き残り」も熾天使の内の1体であると考えます。
第13号機はルシファー双子の兄弟ミカエル
以上を前提に、私は、第13号機は天使ミカエルをモチーフにしていると考えます。

ミカエルは、神と人とを仲介する天使長であり、名前は「神に似たる者は誰か」という意味とのことです。
シンエヴァの、第13号機と新2号機の接触シーンにおいて、オリジナルアスカが「最後のエヴァは神と同じ姿」と言っていたことが想起されます。
ミカエルの階級は「大天使」(アークエンジェル)とされていることが多いようですが、「熾天使」(セラフィム)に位置付ける説もあるようです。
また、ミカエルは、ルシファーと双子の兄弟であるとする説があります。
第13号機をミカエルと考える根拠は、次のとおりです。
根拠1:初号機とそっくりな分身的存在
私が第13号機をミカエルだと考える最大の理由は、初号機と見た目がそっくりで対となる分身のような存在である点にあります。
シンエヴァの、第13号機と初号機との対決シーンにおいて、ゲンドウは、「第13のエヴァ。希望の初号機と対をなす絶望の機体だ。互いに同調し調律をしている」と言っていました。
また、シンエヴァの、ネオンジェネシスの際にガイウスの槍が初号機を貫くシーンにおいて、初号機から第13号機が分身のように分裂して現れる描写がありました。
上記のとおり、私は、リリスがルシファーをモチーフにしていると考えていますが、さらに、初号機がリリスのコピー(クローン)であるとも考察しています。
そうすると、第13号機と初号機は、双子のミカエルとルシファーという関係になり、見た目がそっくりどころか、対となる分身のような存在であることの説明ができます。
なお、ミカエルが「神に似たる者」なのだとすれば、その双子であるルシファーもまた神に似ているということになります。
このことは、エヴァインフィニティが初号機の姿をしていることと関係していると考えています。
共にコアが2つある
上記の他、第13号機と初号機は、コアが2つある点で共通しています。この特徴は、他のエヴァにはありません。
第13号機は、通常のエヴァ同様、胸の中心にコアがありますが、さらにもう1つコアを持っています。
シンエヴァのマイナス宇宙へ行くシーンにおいて、ゲンドウは第13号機の口の中に入っていきましたが、口の中には、2つ目のコアが見えていました(ゲンドウは、口の中のコアにダイレクトエントリーしたと思われます。)。
また、破のラストで擬似シン化第2形態になった初号機にも、胴体にコアが2つ現れました。
他のエヴァにない、コアが2つあるという特徴は、第13号機と初号機が共に熾天使の中でも特別な存在であることを物語っています。
根拠2:単体でニアフォースインパクト起こせた
セカンドインパクトとフォース(アナザー)インパクトは、アダムス4体が光の翼を発して起こされました。
他方、ニアサードインパクトは、擬似シン化した初号機単体で起こすことができていました。
インパクトを起こすのに、通常のアダムスは4体必要であるのに対し、リリスのコピーである初号機は単体で足りており、アダムスと初号機(=リリス)ではその出力が違うと言えます。
では、第13号機はどうでしょうか。
擬似シン化した第13号機は、単体でフォースインパクトを起こすことができました。
つまり、第13号機も初号機と同等のエネルギーを持っていることになります。
ここからも、初号機(=リリス)と第13号機が双子のルシファーとミカエルの関係になっていることが伺われます。
名前に「第」が付く意味は
第13号機は、ナンバリングの前に「第」が付いていますが、これは他のエヴァにはない特徴です。
使徒になることを示唆
ナンバリングの前に「第」が付くのは、使徒の特徴です。
ゲンドウの罠により、第13号機は、カヲルとともに第13使徒化したと考察しています。
第13号機の名前に「第」が付くのは、後に使徒化することが示唆されていたのだと考えます。
始まりと終わりを示唆
「第」をつけた理由は、もともと13番目にしかなり得ない、なるべくして13番目になったということを強調しているのではないでしょうか。
エヴァンゲリオンシリーズでは、「始まりと終わりは同じ」を意味するフレーズが多用されたり、世界がループ(円環)していることも示唆されています。
時計でいうと始まりは1です。エヴァでいうと初号機が1にあたります。(零号機は0ですし、プロトタイプなので除外します。)
1時から1周回ると、13時になりますが、同じ1時の位置であるため、13も始まりを意味します。
1と13は、ともに始まりと終わりを意味しているのではないでしょうか。
なお、ミカエルを7大天使と位置付ける説によれば、ミカエルは日曜日を意味するようです。
日曜日もやはり1週間の始まりと終わりを意味しています。
まとめ
以上をまとめると、エヴァ第13号機は、神に似た天使ミカエルであり、ルシファーである初号機と双子の関係にあり、初号機にとって代わり新たな神となる存在、始まりと終わりを意味する存在、といったイメージで設定されたのではないかと考えます。
神に反逆したルシファーをミカエル率いる天使軍が打ち倒し、ルシファーは地上に堕ちたという伝説がありますが、初号機VS第13号機+他のアダムスの構図ともぴったり合うと思います。
ウルトラマンエースのオマージュ
ところで、第13号機は、ウルトラマンA(エース)のオマージュだと言われています。
破の、加持リョウジのセカンドインパクト回想シーンに出てくる4体の光の巨人(アダムス)は、カラータイマーの位置などから、左からゾフィー、マン、ジャック、セブンを表しているようです。
また、シンエヴァの、AAAヴンダーがヤマト作戦のため旧南極セカンドインパクト爆心地跡に突入するシーンでは、4本の立った十字架と1本の斜めに傾いた十字架があり、傾いた十字架にはエースのマークが見えました。
上記のとおり、1本の斜めに傾いた十字架は、「アダムスの生き残り」に対応していると考えますが、そうすると、第13号機はウルトラマンエースの位置づけになります。
ウルトラマンエースは、他のウルトラ兄弟と異なり、地球人と月星人の2人で変身する設定だったようです。
第13号機は、シンジと月にいたカヲルの2人が搭乗するダブルエントリーシステムでしたので、ウルトラマンエースの設定に大変よく似ていると思います。