今回は、エヴァンゲリオン新劇場版における、インパクト（儀式）に必要な「トリガー」と「贄」（にえ）の意味について考察します。
「トリガー」「贄」というワードは、新世紀版（テレビアニメ版、旧劇場版、コミック版）にはなかった用語です。
トリガー（trigger）とは
劇中では、インパクトに関連して、「トリガー」という言葉が多用されましたが、これが何を意味するのかはっきりしませんでした。
「トリガー」とは、銃などの「引き金」のことであり、何かを起動する装置という意味があります。
エヴァの世界において、インパクトの「トリガー」とは、「インパクト（儀式）の主体となる存在」のことを指していたように思われます。
贄（にえ・sacrifice）とは：使徒
「贄」とは、神への捧げものを意味します。
「贄」については、「トリガー」と比べるとはっきりしており、「使徒」を指していることが分かります（ただし、後述するとおり、アドヴァンスド綾波シリーズも贄になり得ます。）。
インパクト（儀式）を引き起こすためには、上記「トリガー」１体に対し、使徒の「贄」１体が必要になると考えられます。
以上のことは、次のセリフから読み取ることができます。
碇シンジにサードインパクトの説明をした渚カヲル「生命とは本来世界に合わせて自らを変えていく存在だからね。しかしリリンは自らでなく世界の方を変えていく。だから自らを人工的に進化させるための儀式を起こした。古の生命体を贄とし生命の実を与えた新たな生命体を作り出すためにね。全てが太古よりプログラムされていた絶滅行動だ。ネルフでは人類補完計画と呼んでいたよ」
エヴァンゲリオン新劇場版：Q
フォース（アナザー）インパクトの際の碇ゲンドウ「私が神を殺し、神と人類を紡ぎ、使徒の贄をもって人類の神化と補完を完遂させる」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
以下、各インパクトの「トリガー」と「贄」についてまとめました。
ファースト（ジャイアント）インパクト
ファーストインパクトは、「インパクト」とは呼ばれているものの、天体衝突のことであり、儀式としての他のインパクトとは意味合いがまるで異なるため、トリガーや贄なるものは存在しません。
セカンドインパクト
トリガー：４体のアダムス
シンエヴァでのフォース（アナザー）インパクトは、NHGネルフ戦艦４隻が、各３枚、計１２枚の光の翼を発して起こされました。
これを見て、葛城ミサトと赤木リツコは、次のような会話をしていました。
ミサト「光の翼？セカンドインパクトと同じ方術でフォースを起こすつもりなの？」
リツコ「いえ。ガフの守り人として建造された船をトリガーには出来ないはず。それに黒き月を取り巻く事象が計画とは違う。これはゼーレのシナリオにない、私達の知らない儀式よ」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
また、序の破予告シーン及び破の加持リョウジの回想シーンにおいては、光の巨人（アダムス）４体が描写されていました。
以上の状況とセリフから、セカンドインパクトを読み解くことができます。
セカンドインパクトは４体のアダムスが光の翼を発したことが分かり、リツコのセリフを逆に読むと、セカンドインパクトでは、光の翼を発した者がトリガーになったと読むことができます。
したがって、セカンドインパクトは、４体のアダムスがトリガーになったものと考えられます。
贄：４人のアドヴァンスド綾波シリーズ
対して、贄となった使徒については全く描写がありませんでした。
セカンドインパクトの時点で既に存在していた可能性のある使徒は、第１使徒カヲル、第２使徒リリス、北極ベタニアベースで研究されていた第３使徒しかいません。
しかし、後述するように、カヲルとリリスは、通常の使徒とは異なり、「神」としてトリガーとなるべき存在です。また、上記３者は、セカンドインパクト後も生存しており、贄にはなっていなかったと考えざるを得ません。
では、他に贄になり得た存在はいたでしょうか。
この点、シンエヴァの、新ネルフ本部が旧南極爆心地跡に向かうシーンにおいて、冬月コウゾウは、４人のアドヴァンスト綾波シリーズについて、「フォースインパクトの要とされる黒き月の復活。そしてアダムスの器の贄となる雌雄もなく純粋な魂だけで造られたけがれなき生命体アドヴァンスド綾波シリーズの再生」と言いました。
アドヴァンスド綾波シリーズについて、「アダムスの器の贄」となる存在であると説明されています。また、「再生」と言っていることからして、アドヴァンスト綾波シリーズが過去にも存在していたことが分かります。
したがって、セカンドインパクトのトリガーになった４体のアダムスにはそれぞれ（初代）アドヴァンスト綾波シリーズが搭乗していたと考えられ、当該４人のアドヴァンスド綾波シリーズが贄になったと考えられます。
ニアサードインパクト
トリガー：擬似シン化初号機＋シンジ
ニアサードインパクトは、破のラストで描かれましたが、このとき擬似シン化した初号機がトリガーになりました。
このことは、同シーンで加持リョウジが「数が揃わぬ内に初号機をトリガーにするとは。碇司令ゼーレが黙っちゃいませんよ」と言っていたことからも明らかです。
ただし、Ｑにおける次のセリフを合わせ読むと、擬似シン化した初号機とシンジが一体となってトリガーとなったと考えることができます。
リツコ「彼を初号機に優先して奪取するということはトリガーとしての可能性がまだあるということよ」
カヲル「碇シンジ君。一度覚醒しガフの扉を開いたエヴァ初号機はサードインパクトのトリガーとなってしまった。リリンの言うニアサードインパクト。全てのきっかけは君なんだよ」
エヴァンゲリオン新劇場版：Q
擬似シン化した初号機と、その魂に相当するパイロットのシンジは、一体であるということなのだと思います。
なお、私は、この擬似シン化した初号機＋シンジが第１１使徒になったと考察しています。
贄：第１０使徒
劇中の描写から、贄となったのは「最強の拒絶タイプ」である第１０使徒でした。
サードインパクト
トリガー：リリス＋マーク６
サードインパクトは、シンエヴァの、ヤマト作戦前のミサトの回想シーンで描かれましたが、トリガーについてははっきりしていません。
序の、ダイヤモンドのような第６使徒戦で、ミサトは、リリスについて、「この星の生命の始まりでもあり終息の要ともなる第２の使徒リリスよ。サードインパクトのトリガーとも言われているわ」と言っていたことから、リリスがトリガーだったと考えることができます。
ただし、上記シンエヴァでの回想シーンでは、リリスの頭部を切断し、リリスと融合するマーク６が描かれていましたので、このときのトリガーは、リリス＋マーク６（融合）ということになるかと思います。
マーク６は、通常の（第１３号機以外の）アダムスの１体であることから、単体（リリス抜き）ではインパクトのトリガーにはなれなかったと考えます。この点は、別途考察しています。
贄：第１２使徒
このときのマーク６は、リリスの他、第１２使徒とも融合していたと考察しています。
したがって、贄は第１２使徒ということになると思われます。
Ｑのセントラルドグマで、式波アスカが「まずい！第１２の使徒がまだ生き残ってる」「サードインパクトの続きが始まる前にこいつを片付ける！」と言っていたことからしても、第１２使徒がサードインパクトの贄だったと考えられます。
（ニア）フォースインパクト
トリガー：擬似シン化第１３号機＋カヲル＋オリジナルアスカ
（ニア）フォースインパクトは、Qラストで描かれましたが、このときの描写から、擬似シン化した第１３号機がトリガーになったと思われます。
ただし、上記のニアサードインパクトと同様、魂に相当するパイロットのカヲルも一体となってトリガーになったと考えます。このことは、カヲル自身が、シンジに対し、「君のせいじゃない。僕が第１３の使徒になってしまったからね。僕がトリガーだ」と言っていたことから伺えます。
また、この時点で第１３号機に密かに搭乗していたオリジナルアスカも、同じくトリガーになったと考察しています。
贄：第１２使徒
劇中の描写から、サードインパクトを生き残った第１２使徒が贄となりました。
フォース（アナザー）インパクト
トリガー：擬似シン化第１３号機＋カヲル＋オリジナルアスカ
フォース（アナザー）インパクトはシンエヴァで描かれましたが、トリガーは、（ニア）フォースインパクト同様、擬似シン化した第１３号機＋カヲル＋オリジナルアスカだったと考察しています。
ミサト「これより本艦はフォースインパクトの不可逆的な阻止のため旧南極爆心地跡に在留中のネルフ本部を強襲。儀式のトリガーとなるエヴァ第１３号機の無力化を目的としたヤマト作戦を決行。これまでの全てのカオスにケリをつけます」
ミサト「光の翼？セカンドインパクトと同じ方術でフォースを起こすつもりなの？」リツコ「いえ。ガフの守り人として建造された船をトリガーには出来ないはず」※
シン・エヴァンゲリオン劇場版
※ このセリフは、NHGネルフ戦艦がトリガーにはなり得ないことを示しています。
贄：第９使徒の力を開放したアスカ
劇中の描写から、贄は、第９使徒の力を開放した式波・アスカ・ラングレーでした。
アディショナルインパクト
アディショナルインパクトは、シンエヴァラストで描かれましたが、このインパクトは特殊でした（他のインパクトと方術が異なる。）。
エヴァンゲリオンイマジナリーにロンギヌスの槍とカシウスの槍が突き刺さることで発生しており、トリガーと贄について、次のような説明がなされました。
ゲンドウ「絶望と希望の槍が、互いにトリガーと贄となり、虚構と現実が溶け合い、全てが同一の情報と化す。これで自分の認識、すなわち、世界を書き換えるアディショナルインパクトが始まる。私の願いが叶う、唯一の方法だ」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
トリガーには「神」と呼ばれる存在がなる
以上のとおり、トリガーとなる存在には、一定の共通点が見いだせます（アディショナルインパクトを除く。）。
全て「神」と呼ばれる存在であるということです。
このことから、インパクト（儀式）のトリガーになるには、「神」であることが条件だったのでないかと思われます。
聖なる槍との関係
インパクトを発生させるにはトリガーと贄が必要ですが、アディショナルインパクトを除き、聖なる槍（ロンギヌス・カシウス）の存在は必須ではありません（ニアサードインパクト発動の際は槍がなかった。）。
しかし、槍がないと完全なインパクトにはなりません。
つまり、槍は、儀式発動の必須条件ではないものの、完成要素であるということができます。
