今回は、新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版、コミック版)における惣流・アスカ・ラングレーと、新劇場版における式波・アスカ・ラングレー、オリジナルアスカ、幼い子供のアスカ(SS ASUKA)の正体について考察します。
新世紀版 惣流・アスカ・ラングレー
新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版、コミック版)における「アスカ」は、惣流(そうりゅう)・アスカ・ラングレーでした。
セカンドチルドレンとして、エヴァ弐号機の専属パイロットを務めました。
惣流アスカは、精神崩壊によって人形をアスカだと思い込む母親の惣流・キョウコ・ツェッペリンに振り向いてもらおうとエヴァパイロットを志しますが、母親は自殺してしまいます。この経験がトラウマとなり、惣流アスカは劇中を通し苦しみ続けました。
新世紀版においては、新劇場版のようにアスカがクローンであるとの設定はありませんでした。
新劇場版 式波・アスカ・ラングレー
新劇場版における「アスカ」は、式波(しきなみ)・アスカ・ラングレーでした。
第2の少女 エヴァ2号機担当パイロット
アスカが初登場したのは、破の、時計のような第7使徒戦です。
殲滅後、葛城ミサトは、「紹介するわ。ユーロ空軍のエース。式波・アスカ・ラングレー大尉。第2の少女。エヴァ2号機担当パイロットよ」と説明していました。
式波タイプクローン
シンエヴァの新2号機VS第13号機のシーンにおいては、オリジナルアスカが登場しました。
式波アスカ「式波タイプ。私のオリジナルか」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
それまで新劇場版で活躍してきた「アスカ」が、実は「式波タイプ」のクローン(コピー)だったことになります。
そして、シンエヴァのアスカ補完シーンにおいては、無数の培養槽と式波タイプが描写されました。つまり、式波タイプは、もともとは多数存在していたことが分かります。
綾波タイプとの相違点:調整が不要
その後、大量の式波タイプの顔写真が次々と消えていき、最後に2枚の顔写真だけが残されたところで、次のとおり、ネルフの英文書面が映されました。
Candidate has failed to meet established performance requirements.
Thorough assessment of subject’s condition and circumstances has concluded any probability of recovery and/or regaining prerequisites to be minimal.
Research resources have been reallocated.
This decision is final.
シン・エヴァンゲリオン劇場版 アスカ補完シーン
上記の英文を和訳すると、次のとおりになるかと思います。
1「候補者は、定められたパフォーマンスの必須条件を満たしていない。」
2「被験者の状態と状況を徹底的に評価したところ、回復及び(又は)必須事項を取り戻す可能性は極めて低いと結論付けられた。」
3「研究資源は再割り当てされた。」
4「これは最終決定である。」
まず、第1文の主語が、「Candidates」(候補者達)と複数形になっていないことから、この英文書面は、最後に残った2人の式波タイプの顔写真の内の1人についてのものだと思われます。
次に、第2文が問題になりますが、「回復及び(又は)必須事項を取り戻す可能性は極めて低い」とは、「肉体が維持できずに回復しなかった」ことを意味すると考えます。
つまり、同じクローンである綾波レイは、碇(旧姓:綾波)ユイをオリジナルとする「綾波タイプ」であったところ、定期的にプラントに入って「調整」を受けなければ肉体を維持することができませんでしたが、これと同じような現象が「式波タイプ」にも発生していたと思われます。
つまり、ネルフは、「調整」をしなくても活動を続けられる個体を作ろうとしており、「調整不要なこと」がパイロットとしての「prerequisite」(必須事項)だったのだと考えます。
劇中において、アスカが「調整」を受けるシーンはありませんでしたので、「式波タイプ」の内、最後に残ったアスカは、調整が不要な「必須事項」をクリアした個体だったということです。
左眼の眼帯:第9使徒の浸食と融合
破において、「浸食タイプ」である第9使徒の浸食を受け、アスカの左眼には第9使徒が宿りました。
その結果、眼帯の下の左眼に使徒封印柱を埋め込んで、第9使徒の力を抑え込まなければならなくなりました。
後にアスカは、シンエヴァのヤマト作戦において、第13号機に停止信号プラグを打ち込む際、ヒトを捨てて第9使徒の力を開放することになります。
なお、第9使徒とアスカの融合は、ゼーレに仕組まれたものであったと考察しています。
復活 ヴィレへ加入 北上の救出
破の第9使徒戦後、アスカは第9使徒と融合したことにより、使徒封印柱に囲まれた部屋で隔離措置をとられることになります。
赤木リツコ「細胞組織の浸食跡は消えたもの、使徒による精神汚染の可能性も否定できない。このまま隔離するしかないわね」
伊吹マヤ「まさか、処置ってことはないですよね?」
赤木リツコ「貴重なサンプル体よ。あり得ないわ」
エヴァンゲリオン新劇場版:破
破のラスト、ニアサードインパクトの際には、アスカはまだ復活していませんでした。
しかし、シンエヴァ特典映像3.0(-46h)の北上ミドリの回想シーンは、サードインパクト後の世界でしたが、ここでアスカは、ヴィレの一員として、子供だった北上をエヴァインフィニティから救出しました。
また、サードインパクトにおいて、2本の槍をリリスとマーク6に突き刺して儀式を止めることができたのは、アスカと真希波マリしかいなかったと考察しています。
したがって、アスカは、ニアサードインパクトとサードインパクトの間に復活し、ヴィレに加入したものと考えます。
エヴァの呪縛とは:半使徒化
破ラストのニアサードインパクト後、初号機と共に封印柩に入れられ、宇宙空間に隔離されていた碇シンジは、Q冒頭のUS作戦によってヴィレに救出され、14年ぶりにアスカと再会を果たすことになります。
14年ぶりに再会したにもかかわらず、14前年の姿(14歳)のまま肉体が成長していないことについて、アスカは、「エヴァの呪縛」のためであると説明しました。
シンジ「アスカ。さっき14年って。でも、眼帯以外変わってない?」
アスカ「そう。エヴァの呪縛」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q US作戦後
「エヴァの呪縛」(にかかる)とは、エヴァとのシンクロ率が高まりすぎることにより、プラグ深度が限界値を超え(エントリープラグとコアとの距離が近づきすぎる)、エヴァの汚染を受けて人外化した状態になることをいいます。
具体的には、水さえ飲んでいれば食事や睡眠が不要となり、肉体は年をとらず(ただし、髪だけは伸びます。)、L結界密度の高いコア化したエリアでもLCL化せずに活動できるようになります。
まるで生命の実を持つ使徒のような体質に変わりますので、「半使徒化」ともいえると思います。
次のセリフからすると、アスカはシンジよりも半使徒化が進んでいたことが分かります。
アスカ「もういいかげん、寝るマネも飽きた。いつになったら寝られるんだろう」
アスカ「まだあんた(シンジ)はリリンもどき。食べなきゃ生きていられない。だから食え!こちとらずっと水だけだ。何も変わらない体になる前に、メシのまずさを味わっておけ!バカガキ!」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 第3村
アスカ「他はろくな身体形状変化がないくせに、髪だけは伸びる。うっとおしい」
マリ「頭髪には神も汚れも煩悩も宿っている。まさにカオスな人の心の象徴よん。姫が紛れもなく人間である証じゃないの」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 アスカ散髪シーン
アスカは、破の第9使徒戦において、エヴァ3号機のコアに引き込まれたことにより、「エヴァの呪縛」にかかりました。
オペレーター「プラグ深度100をオーバー!精神汚染濃度も危険域に突入!」
ミサト「なぜ急に?」
オペレーター「パイロット、安全深度を越えます」
リツコ「引き止めて!このままでは搭乗員がヒトでなくなってしまう!」
エヴァンゲリオン新劇場版:破
「エヴァの呪縛」にかかったパイロット一覧
- レイ:セカンドインパクト時 白レイの考察はこちら
- アスカ:破の第9使徒戦時
- マリ:破の第10使徒戦時 マリの考察はこちら
- シンジ:破のニアサードインパクト時
- カヲル:Qの(ニア)フォースインパクト時 フォースインパクトの考察はこちら
シンジに怒っていた理由
Q冒頭のUS作戦後、アスカは、14年ぶりに再会したシンジを、いきなり殴ろうとしました。
このアスカの気持ちの真相については、アスカ自身がシンエヴァのヤマト作戦前に語りました。
アスカ「最後だから聞いておく。あたしがあんたを殴ろうとした訳、分かった?」
シンジ「アスカが、3号機に乗っていたとき、僕が何も決めなかったから。助けることも、殺すことも。自分で責任、負いたくなかったから」
アスカ「ちっとは成長したってわけね。最後だから言っておく。いつか食べたあんたの弁当、おいしかった。あの頃は、シンジのこと好きだったんだと思う。でも、私が先に大人になっちゃった。じゃ」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
アスカが第9使徒に浸食された際、シンジが判断を放棄して何もしなかったことについて怒っていたというわけです。
テープで補修したプラグスーツ
上記のセリフによれば、アスカは既にシンジへの好意が無くなったかのようにも思えますが、完全に無くなったわけではありませんでした。
シンエヴァ特典映像3.0(-120min.)、つまり、Q冒頭US作戦の120分前の時点において、アスカは、マリにシンジと会えたらどうするのかを聞かれ、「ぶん殴る!」と言いつつ、破で着ていたプラグスーツをテープで補修した上で着替え、マリの提案にのって初号機の回収役を行うことにしました。
アスカは、シンジと14年ぶりの再会が見込まれることから、わざわざシンジが見覚えのあるプラグスーツに着替え、シンジに最も早く会える初号機回収役として、US作戦に臨んだというわけです。
第3村に行かなかった理由
シンエヴァにおいて、アスカは、相田ケンスケの自宅に引きこもり、第3村には近づきませんでした。
この点について、ケンスケは、「諸事情あって、式波は村には顔を出せないんだ」と言っていました。これはなぜでしょうか。
アスカは、黒レイがケンスケの自宅を訪問した際、ピストルを取り出して警戒していました。あれは、ネルフを警戒しての行動だと思われます。
つまり、アスカは、ネルフに襲われた際に第3村の村民に迷惑をかけまいと、第3村から距離をとっていたのだと考えます。
アナザーインパクトの贄にされる
シンエヴァのヤマト作戦において、アスカは、第13号機に停止信号プラグを打ち込むため、新2号機の裏コード999(スリーナイン)によって第9使徒の力を解放し、完全に使徒化しました。
しかし、碇ゲンドウの罠にはまってしまい、第13号機に返り討ちにされた上に吸収され、アナザーインパクトの贄(にえ)にされてしまいました。
マリ「しまった!ゲンドウ君の狙いは使徒化した姫か」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 第13号機VS新2号機
マリ「ワンコ君。第13号機の中に、姫の魂が残置されてる可能性がある。だから姫を…アスカをお願い!」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 マイナス宇宙
オリジナルアスカの正体とは
上記のとおり、第13号機は新2号機を返り討ちにしましたが、その際、第13号機にはオリジナルアスカと渚カヲルが搭乗していました(カヲルはオリジナルアスカの股の下に小さく描写されていました。)。
オリジナルアスカは、クローンアスカのいる新2号機のエントリープラグ内に侵入してきました。さらに、クローンアスカによる平手内が素通りしていました。
当然ながら、物理的にこのような現象はあり得ませんので、オリジナルアスカは、初号機のユイ同様、第13号機のコアにダイレクトエントリーして魂だけの存在になっていたのではないかと思われます。
幼い子供のアスカ:SS ASUKA
シンエヴァのアスカ補完シーンにおいて、幼い子供の「アスカ」が描写されましたが、あれはどの「アスカ」だったのでしょうか。
幼女「アスカ」は、家族(ゲンドウ、ユイ)と触れ合うシンジを目の当たりにして、寂しそうな表情を浮かべていました。つまり、この幼い頃の「アスカ」は、シンジに会っていたことになります。
これに対し、破の時計のような第7使徒戦後、クローンアスカは、シンジ、鈴原トウジ、ケンスケの3人を見ながら、「で?どれがナナヒカリで選ばれた初号機パイロット?」と言いましたので、シンジに会ったことがなかったようです。
したがって、幼い「アスカ」は、破から登場したクローンアスカとは別人、つまりオリジナルアスカだと思われます。
ところで、幼い「アスカ」(オリジナルアスカ)のリュックサックの名札には、「SS ASUKA」と記載されていました(大画面でないと分からないくらい小さな文字です。)。「式波・アスカ・ラングレー」であれば「SS ASUKA」という表記にはなり得ないため、この点からも幼い「アスカ」がクローンアスカではないことが分かります。
シンエヴァの新2号機VS第13号機のシーンにおいて、クローンアスカは、オリジナルアスカに対し、「式波タイプ。私のオリジナルか」と言ったことから、オリジナルアスカも「式波」ではあるようです。
そのため、「SS ASUKA」の「S」の1つは、「SHIKINAMI」のイニシャルだと思われます。
そうすると、もう1つの「S」は何を意味するのでしょうか。
これは、新世紀版のアスカ、つまり「惣流」(SOURYU)の「S」だと考えます。
幼いアスカのリュックサックには、サルのぬいぐるみが付いていましたが、あれはテレビアニメ版22話(宇宙から精神攻撃を仕掛けてきた第15使徒アラエル戦)において描写された、惣流アスカが「新しいママからのプレゼント」としてもらったサルのぬいぐるみと同じものです。
新世紀版と異なる世界線であるはずの新劇場版において、「惣流」の名前が登場するのは不自然かもしれませんが、シンエヴァの補完シーンでは、幼いオリジナルアスカに大人のケンスケが会いに来るなど、時間軸や世界線がバラバラになっていたため、「惣流」が登場してもおかしくはないと思います。
アスカの補完シーンは、惣流、式波、オリジナル、全ての「アスカ」を統合し、救済するものだったのではないでしょうか。
シンエヴァラスト 大人になったアスカ
ケンスケから「いいんだ。アスカはアスカだ。それだけで十分だ」と言われると、旧劇場版のラストのような砂浜で目覚めた「アスカ」は、大人の姿になっていました。
「エヴァの呪縛」から解放されたことの描写だったのだと思われます。
また、左眼に眼帯はなく、ボロボロの赤いプラグスーツを着ていました。
このプラグスーツは、シンエヴァのヤマト作戦で着用していた白いプラグスーツ(深々度ダイブ用耐圧試作プラグスーツ)でないことはもちろん、新劇場版で着ていたどのプラグスーツとも異なるもので、新世紀版で「惣流」が着用していたものです(新劇場版 破で着ていたプラグスーツとよく似ていますが、首元左右の模様が微妙に異なります。)。
だからといって、大人のアスカ=惣流・アスカ・ラングレーというわけでもないと思います。
シンジが、「ありがとう。僕を好きだと言ってくれて」と言っていたからです。シンジを好きだと言ったのは、新劇場版のアスカだけです(ヤマト作戦前)。
つまり、大人になったアスカは、上記の幼いアスカ同様、惣流、式波、オリジナル、全てが「アスカ」として統合され、救済された姿なのだと考えます。