今回は、エヴァンゲリオンシリーズにおける、加持リョウジの正体、目的、死因、同人が結成したヴィレ、クレーディト等について考察します。
新世紀版(旧作)
新世紀版の加持リョウジの正体
新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版、コミック版)の加持は、ネルフ特殊監察部に所属していましたが、同時に日本政府内務省調査部にも所属し、ゼーレの命令でネルフの内偵を進めていました(多重スパイ)。
赤木リツコ、葛城ミサトとは学生時代からの友人でしたが、ミサトとは恋人関係にもありました(この点は新劇場版と共通です。)。
テレビアニメ版第8話において、ネルフドイツ支部から、惣流アスカ、エヴァ弐号機とともに来日し、碇ゲンドウのもとにアダムの胎児を届け、そのままネルフ本部(日本)勤務となりました。
ミサト「特務機関ネルフ特殊監査部所属 加持リョウジ、同時に、日本政府内務省調査部所属 加持リョウジでもあるわけね」
加持「バレバレか」
ミサト「ネルフを甘く見ないで」
加持「碇司令の命令か?」
ミサト「私の独断よ。これ以上バイト(スパイ)を続けると、死ぬわ」
加持「碇司令は俺を利用してる。まだいけるさ。だけど葛城に隠し事をしてたのは謝るよ」
テレビアニメ版第15話 加持がターミナルドグマに侵入したシーン
目的と行動
新世紀版の加持の目的は、ゼーレ、ネルフ、人類補完計画の真相を知ることでした。
加持は、独自の調査によって、真実に迫ろうとしていました。
テレビアニメ版第15話では、エヴァパイロット選出のために設けられた人類補完委員会(ゼーレメンバーの一部で構成)直属の諮問機関であるマルドゥック機関について独自調査を行いました。
また、ネルフ本部地下のリリスが磔(はりつけ)になっているターミナルドグマ「MAIN L.C.L PLANT」にも侵入しました(もっとも、この時点ではリリスをアダムだと誤解していた。)。
テレビアニメ版第19話では、加持は、スパイであることがネルフにバレたことにより(もっとも、ゲンドウは初めから分かっていて利用していた。)、ネルフ内部での席を失っていました。
加持「アルバイト(スパイ)が公になったんでね、戦闘配置に俺の居場所はなくなったんだ。以来、ここで水をまいてる」
テレビアニメ版第19話 第14使徒ゼルエル戦
テレビアニメ版第20話では、ゼーレは、第14使徒ゼルエルを捕食した初号機がS2機関(生命の実)を取り込み覚醒したこと、零号機、弐号機、ネルフ本部を大破させたことについて、ゲンドウに不信感を抱き、加持に冬月コウゾウを連行するよう指示しました。
ゼーレ「これも碇の首に鈴をつけておかないからだ」「鈴はついている。ただ鳴らなかっただけだ」「鳴らない鈴に意味はない。今度は鈴(加持)に動いてもらおう」(加持のカット)
テレビアニメ版第20話
その後、加持は、自らも殺されるかもしれないことを悟り、ミサトに対し、それまでに収集した情報をカプセルに入れて渡しておきました。
テレビアニメ版第21話では、加持は、ゼーレの指示に従い、冬月を拉致、拘束して、ゼーレのもとに連れて行かせるよう手引きしました(実行したのは加持自身ではない。)。
しかし、加持は、その後なぜか冬月の監禁を解いて解放しました。
加持「外の見張りには、しばらく眠ってもらいました」
冬月「この行動は、君の命取りになるぞ」
加持「真実に近づきたいだけなんです。僕の中のね」
テレビアニメ版第21話
冬月を解放した後、加持は、何者かによって射殺されました。
加持が冬月を解放した理由
上記のとおり、加持は、ゼーレの指示に従い、一旦は冬月の拘束を手引きしましたが、その後、解放しています。
この理由については、テレビアニメ版では描かれませんでしたが、コミック版の同シーンで描写されていました。
加持「外の見張りにはしばらく眠ってもらいました」
冬月「私をさらっておいて、また助けるとはな。理解に苦しむな」
加持「真実に近づきたいだけですよ。僕なりのね。どうやらゼーレや委員会より、ネルフの方が真実に近いようです。それに、このままあなたが消される様なことがあれば胸が痛みますからね」
コミック版第8巻 ネルフ誕生
つまり、加持は、ゼーレに従うよりも、ネルフのもとにいた方が、今後遂行されるであろう人類補完計画の真相に近づけるだろうと考え、冬月を解放したことが分かります。
死因「よう、遅かったじゃないか」
テレビアニメ版第21話において、加持は、射殺される直前、自分を消しに来た人物に対し、「よう、遅かったじゃないか」と言っていた。
また、ミサトに対し、留守番電話のメッセージを残していました。
以上のことから、加持は、自分が殺されることを予期していたといえます。
加持が誰に何の目的で殺されたのかについては、ミサト説、リツコ説など様々な考察がなされました。
しかし、上記のとおり物語の流れを素直に見ていけば、加持を射殺したのは、ゼーレ又はネルフの関係者(ヒットマン)であると考えるのが自然だと思います。
新劇場版
新劇場版の加持リョウジの目的
新劇場版における加持は、ネルフに所属しゼーレに対するスパイ活動をしながら、ネルフ自体も調査したり、碇シンジ達を日本海洋生態系保存研究機構に連れて行ったり、ネルフの副指令になったり、反ネルフのヴィレを結成したりと、一見すると複雑な動きをしているように見えます。
しかし、その目的は、シンプルで一貫していました。
一言でいうと、「ありのままの世界を残すこと」でした。
加持は、ゼーレにもネルフにも懐疑的で、人類補完計画にも反対の立場をとっていましたが、人類(リリン)が滅ぶのを絶対に阻止したいというわけでもありませんでした。
人類よりも、自然や動植物を守ることに強い意志を持っていた人物だったといえます。
新劇場版の加持リョウジとは
ネルフの主席監察官 スパイ
加持のネルフにおける肩書は、主席監察官でした。
初登場したのは、破の冒頭、ユーロネルフ北極ベタニアベースです。
ゲンドウと冬月の命令で、ゼーレに対しスパイ活動を行っていました。
北極ベタニアベースで行われていたマルドゥック計画を頓挫させるとともに、ネブカドネザルの鍵を盗み、ゲンドウのもとへ届けました。
以上のことは、破の、ネルフ本部にネブカドネザルの鍵を持ち帰った際における、ゲンドウ、冬月との次のやりとりから分かります。
加持「いやはや大変な仕事でしたよ。懸案の第3使徒とエヴァ5号機は予定通り処理しました。原因はあくまで事故。ベタニアベースでのマルドゥック計画はこれで頓挫します。全てあなたのシナリオ通りです。でいつものゼーレ最新資料は先ほど。」
冬月「拝見させてもらった。マーク6建造の確証は役に立ったよ」
加持「結構です。これがお約束の代物です。予備として保管されていたロストナンバー。神と魂を紡ぐ道しるべですね」
ゲンドウ「ああ。人類補完の扉を開くネブカドネザルの鍵だ」
加持「ではこれで。しばらくは好きにさせてもらいますよ」
冬月「加持リョウジ主席監察官。信用に足る男かね?」
エヴァンゲリオン新劇場版:破
ネルフについても独自に調査
上記のとおり、加持は、ネルフの主席監察官でしたが、真実を知るため、ネルフについても密かに独自の調査を行っていました。
このことは、破の、北米ネルフ第2支部で4号機が爆発消滅した際のゲンドウと冬月の会話を盗聴していたことや、居酒屋での葛城ミサトとの次のやりとりから分かります。
ミサト「それより、ゼーレとかいうウチの上層組織の情報、もらえないかしら」
加持「例の計画を探りたいのならやめておけ」
ミサト「そうもいかないわ。人類補完計画。ネルフは裏で何をしようとしてるの?」
加持「それは、俺も知りたいところさ」
エヴァンゲリオン新劇場版:破
リリスとの契約まで知っていた
破ラストのニアサードインパクトの際、加持は、「数が揃わぬ内に初号機をトリガーにするとは。碇司令。ゼーレが黙っちゃいませんよ」と言っており、この時点で、使徒を10体殲滅するという「リリスとの契約」の内容についてまで分かっていました。
ゼーレ、ゲンドウ、冬月しか知り得ない、かなり深い情報にまで辿り着いていたことが分かります。
葛城ミサト、赤木リツコとは同級生
加持は、ネブカドネザルの鍵を持ってネルフ本部に戻った際、ミサトとリツコに対し、「また3人でつるめるな。学生のときみたいに」と言っていました。
つまり、この3人は学生時代の友人(おそらく同期)だったことが分かります。
また、加持とミサトは、元恋人同士でもあり、別れた後もお互いに好意を持ち続けていました。
加持は、趣味のスイカ畑にシンジを連れて行き、「葛城を守ってくれ。それはオレに出来ない、君にしか出来ないことだ。頼む」と言い、ミサトのことを案じていました。
日本海洋生態系保存研究機構
破において、加持は、社会科見学と称し、シンジ、式波アスカ、綾波レイ、鈴原トウジ、相田ケンスケ、ペンペンを国際環境機関法人 日本海洋生態系保存研究機構に連れていきました。
セカンドインパクト前の海を復元し、生態系を保存することを研究する施設です。
同施設は、上空から見ると、旧約聖書でエデンの園の中央に植えられたとされる「生命の樹」(命の木、セフィロトの樹)のデザインになっていました。
ケンスケは、「失われた海洋生物の永久保存と、赤く染まった海を元の姿に戻すというまさに神のごとき大実験計画を担う禁断の聖地。その表層の一部だけでも見学出来るとは」と言っていました。
加持は、本来の世界のあるべき姿を見せることで、冒頭に述べた加持の目的を知ってもらうため、シンジ達を連れて行ったのだと思います。
アンチLシステム・相補性L結界浄化無効阻止装置の研究
日本海洋生態系保存研究機構では、赤くコア化した海を復元する研究がされていました。
これには、ゼーレの封印柱(アンチLシステム・相補性L結界浄化無効阻止装置)の技術が用いられていたと思われます。
加持は、当該技術を活用し、後の第3村をコア化から守ったのだと考えられます。
また、当該技術やデータは、AAAヴンダーにおいても応用されました。このことは、シンエヴァの、旧南極セカンドインパクト爆心地跡への突入シーンにおける、次のやりとりから分かります。
長良スミレ「L結界境界面を航行中。問題ありません」
北上ミドリ「ここが原罪でけがれた生命を拒むというL結界の上」
高雄コウジ「人類がその浄化されたエリアを祝福も受けずに進んでいる。加持のデータとアンチLシステムのおかげだ」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
ニアサー後はネルフの副指令に
破のラストでニアサードインパクトを起こしたことにより、ネルフ関係者は幽閉され、ゲンドウと冬月は失脚しました。
その後、ネルフの司令(ゲンドウのポスト)には渚カヲルが、副指令(冬月のポスト)には加持が就きました。
シンエヴァのフィナーレ舞台挨拶において、庵野監督は、ゲンドウと冬月が失脚し、カヲルがネルフの司令、加持が副司令となる設定があったことを語られたようです。
シンエヴァの、カヲルの補完シーンでは、加持がカヲルを「渚司令」と呼び、カヲルが加持を「リョウちゃん」と呼んでいました。
ネルフの重要な人事を握っているのはゼーレであることから、ゼーレがカヲルをネルフの司令に置き、カヲルが加持を相棒として副指令に置いたのではないかと思われます。
ヴィレ(WILLE)結成
ヴィレ(WILLE)とは、ドイツ語で「意志」を意味します。
加持が結成した、反ネルフ、ネルフ壊滅、人類補完計画の阻止を目的とした組織です。
主なメンバーは、加持、ミサト、リツコ、日向マコト、青葉シゲル、伊吹マヤ、鈴原サクラ、高雄コウジ、長良スミレ、北上ミドリ、多摩ヒデキ、アスカ、真希波マリです。
ヴィレのロゴは「W」を基調とし、筆で描いたようなデザインになっています。メカニックデザインの山下いくと氏によると、漢字の「心」を表現しているとのことです。
加持は、ネルフの副指令に就いた後、サードインパクトを止めるため、今度はネルフに反抗し、同志を募ってヴィレを結成決起しました。
決起の際、青緑のバンダナ(青い海と緑の大地を意味する。)を巻くことによって、ネルフとヴィレとを識別していました。
ネルフ司令のカヲルと対立したわけではなく、ネルフとしてサードインパクトを止めるか(カヲル)、ヴィレとして外からネルフを止めるか(加持)の違いで分裂したのだと思われます。
サードインパクトで加持が死亡した後は、ミサトがヴィレの艦長を引き継ぎました。
以上のことは、次のセリフから読み取れます。
ミサト「私達はヴィレ。ネルフ壊滅を目的とする組織です」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q シンジがマーク9に連れ去られるシーン
ヴンダーが第3村を出発するシーンの高雄「そうだな。加持がヴィレを託した人物だ。ワシはどこまでも艦長(ミサト)を信じる」
ヤマト作戦前の会話:高雄「ネルフから決起したときに死んだ仲間の分だ」長良「反乱時に味方の識別に使ったのがこのバンダナだったんですよね」高雄「ああ。赤くなった海と大地をこの色に取り戻す。その願いを色に込めた誓いのしるしだ」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
AAAヴンダー(NHGヴーセ)の強奪
シンエヴァの、ヤマト作戦前のミサトのサードインパクト回想シーンでは、加持を見送るミサトの背後に、ヴンダーのパラボラアンテナが見えていました。
つまり、ヴィレは、サードインパクトの前に、ネルフからヴンダー(1番艦NHGヴーセ)を強奪したと思われます。
強奪した目的は、次のセリフで明確に述べられており、冒頭に述べた加持の目的のとおりとなっています。
リツコ「このブロックが本艦本来の運用目的だったわね。あらゆる生命の主の保存。その守護のために半永久稼働可能な無人式全自動型の方舟がAAAヴンダーの本来の姿」
ミサト「加持にとって人類の種の存続は大した問題ではなかった。補完計画の巻き添えで消えてしまう多様な生命体を自然のままこの世界に残すことが最重要だったのよ」
リツコ「そのためには可能な限りの生命の種を地球圏外に避難させる。その計画実現を目指し建造中だったこの艦をネルフから強奪。人の力では補完計画の阻止は不可能とも考えていたものね」
ミサト「でも最後は自らの命を捨ててサードを止めた」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 ヤマト作戦前のヴンダー内での会話
クレーディト(KREDIT)結成
クレーディト(KREDIT)とは、ドイツ語で「信用」や「貸し」を意味します。
クレーディトは、ヴィレの下部組織で、サードインパクトを生き残った人々を支援する機関です。
鈴原トウジ「クレーディトっちゅうんは、ヴィレが作った支援組織のことや」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 第3村
第3村は、クレーディトの「相補性L結界浄化無効阻止装置」でサードインパクトのコア化を免れていました。
そうすると、クレーディトは、サードインパクト前から存在していたことになります。
上記のとおり、「相補性L結界浄化無効阻止装置」は、日本海洋生態系保存研究機構における研究成果であると思われます。
なお、クレーディトには、加持とミサトの息子である加持リョウジ(同姓同名)が所属しており、コア化した大地を復元する野外ラボで勤務していました(ケンスケがシンジに紹介した。)。
サードインパクトでの加持の役割(墜落ヘリ)
加持がヴィレやクレーディトを結成し、ヴンダーを強奪した後、間もなくしてサードインパクトが起きたと思われます。
ここで、加持は、自らの命を犠牲にして、サードインパクトを途中で止めました。
シンエヴァの、ヤマト作戦前のミサトのサードインパクト回想シーンでは、加持がヘリに乗っていくシーンが描写されました。
また、Qのセントラルドグマ(サードインパクト爆心地跡)には、リリスと、融合したマーク6にそれぞれ槍が刺さっており、そばには墜落したヘリがありました。
この墜落したヘリは、加持が乗っていたものであると思われます。加持は、サードインパクトを止めるため、何をしたのでしょうか。
槍を扱えるのは、魂に相当するパイロットが乗ったエヴァだけなので、加持には槍を刺せなかったはずです。
そして、サードインパクトを止めるために、リリス(とマーク6)に2本の槍を刺したのは、改2号機と8号機であると考察しています。
そうすると、加持は、ヘリでおとりになるなどして、改2号機と8号機が槍を刺すスキをつくる役目を担ったと考えられます。
なお、Qのセントラルドグマにおいて、カヲルが、「いや、リリンの模造品では無理だ。魂の場所が違うからね」と言い、クローンである黒レイ(黒波)が槍を扱えないことを示唆していたことから、クローンであるアスカとマリにも槍が扱えなかったのではという疑問が生じますが、この点については別途考察しています。