今回は、エヴァンゲリオン新劇場版における、NHGネルフ戦艦(NHGシリーズ)とAAAヴンダーについて考察します。
NHGネルフ戦艦とは
ネルフが建造した4隻の戦艦
NHGネルフ戦艦は、ネルフが建造した4隻の空中飛行戦艦です。
Qから登場したAAAヴンダーもNHG艦の内の1隻です。
ヴンダーは、ヴィレがネルフからNHG艦の1番艦であるヴーセを奪取し、改造したものです(詳細は後述します。)。
動力源
主機:アダムスの器、初号機
主機とは、船の推進力を出すための機関をいいます。
NHGネルフ戦艦は、アダムスの器又はエヴァ初号機を主機とすることで、天使の輪(エンジェルハイロウ)を出現させ、飛行などすることができます。
このことは、コード4Cネーメジィスシリーズ戦における次の会話から読み取れます。
赤木リツコ「ここはいつも通りに撤退を。為す術がないのよ、葛城艦長!」
葛城ミサト「だからこそ、現状を変えて後顧の憂いを断つ。副長、飛ぶわよ」
赤木リツコ「飛ぶ?まさか主機を使う気?」
葛城ミサト「全艦、発進準備。主機点火準備!」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
また、Qの、ヴンダーがマーク9に取りつかれたシーンにおいて、リツコは、「アダムスの器はヴンダー本来の主。初号機から本艦の制御を奪い返すつもりだわ」と言っていました。
つまり、NHG艦の本来の主機はアダムスの器(マーク9~12)でしたが、ヴンダーの主機は初号機で代用していたことが分かります。
この点について、NHG艦の主機になれる条件は、生命の実と知恵の実の両方を持っていることであると考察しています。
補機:N2機関
補機とは、主機を稼働するのに必要な付属機器の総称をいいます。
ヴンダーが補機としてN2(エヌツー)機関を採用していましたので、他のNHG艦も同様だと思われます。
多摩ヒデキ「補機N2機関大破!」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 ヴンダーがマーク9に取りつかれたシーン
N2の意味は、序の第4使徒戦で国連軍が使用した「N2地雷」のものと共通と思われます。N2とは、核を超えるエネルギーを発する架空の技術とされています。
名前が似ていますが、S2機関(生命の実)とは全く別物です。
半永久稼働可能な自律型無人機
NHGネルフ戦艦は、本来は自律型の無人仕様になっていたようです。
ヤマト作戦前のヴンダー内のリツコ「このブロックが本艦本来の運用目的だったわね。あらゆる生命の種の保存。その守護のための、半永久稼働可能な無人式全自動型の方舟が、AAAヴンダー本来の姿」
エアーレーズング内の真希波マリ「しっかしこの船の中、L結界密度が高すぎません?」冬月コウゾウ「ああ。元来有人仕様ではないからな。無理は承知だ」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
NHGシリーズの建造目的
ネルフが建造した以上、その建造目的は、人類補完計画遂行のためであることは言うまでもありませんが、具体的には、どのような役割を持っていたのでしょうか。
儀式に必要な光の翼:人工的なリリスの再現
シンエヴァのフォース(アナザー)インパクトの際、AAAヴンダーを含むNHGネルフ戦艦4隻が、各3枚、計12枚の光の翼を発しました。
ここから、NHG艦は、フォース(アナザー)インパクトの儀式に必要な光の翼を発するために建造されたことが伺われます。
12枚の翼は、神に反逆し地上に堕ちた堕天使ルシファー(ルシフェル)をモチーフにしたリリスの象徴です。
冬月は、このことを「人工的なリリスの再現」と表現していました。
冬月「人工的なリリスの再現。そして黒き月の槍への強制流用。舞台は整えた。後の大詰めをどう演じる?碇」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
ガフの守り人
NHGネルフ戦艦は、「ガフの守り人」とも表現されていました。
「ガフ」とは、インパクトの際に出現し、マイナス宇宙へと通じる「ガフの扉」(地獄の門)のことを指すものと思われます。
そうすると、「ガフの守り人」とは、「ガフの扉の守護者」を意味するものと考えます。
人類補完計画のためにはインパクト(儀式)を起こす必要がありますが、ヴィレなどその邪魔をする存在に対抗し、「ガフの扉」を守ることを目的に建造されたと思われます。
ミサト「光の翼?セカンドインパクトと同じ方術でフォースを起こすつもりなの?」
リツコ「いえ。ガフの守り人として建造された船をトリガーには出来ないはず。それに黒き月を取り巻く事象が計画とは違う。これはゼーレのシナリオにない、私達の知らない儀式よ」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 フォース(アナザー)インパクトのシーン
言霊の力で黒き月から槍を生成
シンエヴァのフォース(アナザー)インパクトでは、NHGネルフ戦艦の言霊の力によって、黒き月から新たな槍が新造されました。
ゲンドウは、アディショナルインパクトのために2本の聖なる槍を温存するべく、このような作戦を立てていました。
つまり、黒き月から槍を新造することも、NHG艦の建造目的の1つだったと思われます。
ミサト「本艦がヴーセとして乗っ取られていたとき、艦体は黒き月をマテリアルとして見知らぬ槍を生成していた。ならばこの艦を使って新たな槍を私達で作り出せるはず。ヴンダーに人の意思が宿れば更なる奇跡もあり得るわ。リツコの知恵とヴィレとヴンダーの言霊を私は信じる」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
リリスとの契約:種を保存する方舟
もともとNHGネルフ戦艦の1つだったヴンダーは、人類補完計画の巻き添えで絶滅してしまう人類(リリン)以外の生命の種を保存する方舟(はこぶね)として造られていました(他のNHG艦も同様かは不明)。
しかし、ネルフ(ゲンドウ)には、種の保存、方舟を作るような動機は見当たりませんでした。
にもかかわらず、ネルフが方舟を建造した理由は、方舟を造ることが「リリスとの契約」の内容になっていたためであると思われます。
新劇場版におけるリリスは、人類(リリン)を含む地球上の全ての生命の始祖にもなっていましたので、自らの子孫の種を残すことを契約の一内容にしていたと考えることができます。
ミサト「この星の生命の始まりでもあり終息の要ともなる第2の使徒リリスよ。サードインパクトのトリガーとも言われているわ」
エヴァンゲリオン新劇場版:序 第6使徒戦
もし、ゲンドウが種の保存に興味を持っていたのであれば、わざわざ加持リョウジがヴンダーを強奪する必要もなかったはずです(ゲンドウが種の保存を考えていたのであれば、加持の利害と一致するため)。
ゲンドウは、「リリスとの契約」を守るために一応方舟を建造しましたが、種の保存には積極的でなかったため、加持がヴンダーを強奪し、方舟としての本来の役目を果たせようとしたと思われます。
リツコ「このブロックが本艦本来の運用目的だったわね。あらゆる生命の種の保存。その守護のための、半永久稼働可能な無人式全自動型の方舟が、AAAヴンダー本来の姿」
ミサト「加持にとって、人類という種の存続は大した問題ではなかった。補完計画の巻き添えで消えてしまう多様な生命体を、自然のままこの世界に残すことが最重要だったのよ」
リツコ「そのためには、可能な限りの生命の種を地球圏外に避難させる。その計画実現を目指し、建造中だったこの艦をネルフから強奪。人の力では補完計画の阻止は不可能とも考えていたものね」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 ヤマト作戦前のヴンダー内
アダムスから建造された
シンエヴァでNHGネルフ戦艦3隻を沈めた後のマリは、「もうリリンが君らを使うこともない。ゆっくり眠りなアダムス達」と言っていました。
このセリフから、NHG艦がアダムス由来の戦艦であることが伺われますが、私は、NHG艦はアダムスのコアを除いたボディ部分から造られたものであると考察しています。
モチーフはネハシムセラフィム
NHGネルフ戦艦の当初のデザイン案では、鯨の骨格がイメージされていたようです(庵野秀明展より)。
しかし、実際のデザインは、鯨よりもずっとスリムで、顔も蛇や亀などの爬虫類のように見えます。
この点に関し、NHG艦の元になったアダムスは、熾天使(してんし・セラフィム)をモチーフにしていると考察しています。
これに関連し、NHG艦は全て羽根の生えた蛇のような見た目をしていたところ、これらは「民数記」に出てくるネハシム・セラフィム(空を飛ぶ燃える蛇達)がモチーフになっている思われます。
神殺しの力とは
NHGネルフ戦艦は、「神殺しの力」を有しています。
ミサト「神殺しの力。見極めるだけよ」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q ヴンダー起動時
リツコ「同じ神殺しの力。やっかいね」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 エアーレーズング会敵時
上記のとおり、私は、NHG艦はアダムスから造られたと考えていますので、アダムスから見て「神殺し」となる対象は、より上位の「神」である「制作者」(エヴァ世界の創造主)を指していると考察しています。
なお、「神殺し」とは、物理的に殲滅するということではなく(それは不可能)、神の理(ことわり)に従わないことを意味していると考えます。
ホースマンとは
シンエヴァの、第13号機がマイナス宇宙に行く前のシーンにおいて、ゲンドウは、「これで全てのホースマンは揃った。では、預けていたエヴァ初号機を返してもらう」と言っていました。
ホースマン(Horseman)とは、子羊(イエス・キリスト)が解く7つの封印の内、始めの4つの封印が解かれた際に現れるという4人の騎士のことで、未来の苦難の予言と考えられているようです。
アダムスの器4体を、世界の破滅の際に現れる4騎士になぞらえた表現であると思われます(NHGネルフ戦艦が馬)。
上記のゲンドウのセリフは、4隻のNHG艦とその本来の主機たる4体のアダムスの器が揃ったため、初号機はヴンダーの主機としては必要なくなったので、アディショナルインパクトに使わせてもらうという意味であったと考えます。
NHGの意味とは?何の略語?
NHG艦の「NHG」が何の略語でどのような意味なのかは公式には明かされていません。
しかし、以上で述べたNHGネルフ戦艦の目的や関連するキーワード(ネルフが建造、ホースマン、ガフの守り人)から、次のいずれかの略語なのではないかと考えます。
- NERV Horseman’s Guardship(ホースマンの警備艇の意味)
- NERV Horseman’s Gunship(ホースマンの砲艦の意味。ガンシップは風の谷のナウシカでも使用されたワードです。)
なお、英語でなくドイツ語の略語なのでは?とも思われますが、AAAヴンダーの「AAA」が英語の略語であるため(後述します。)、「NHG」も英語である可能性が高いといえます。
全NHGシリーズ
1番艦NHGヴーセ
ヴーセ(Buße)は、ドイツ語で「懺悔」(ざんげ)を意味します。
本来の主機は、マーク9です。
建造途中でヴィレがネルフから強奪し、AAAヴンダーに改造しました。
AAA(スリーエー)ヴンダー
ヴンダー(Wunder)は、ドイツ語で「奇跡」を意味します。
上記のとおり、もともとは1番艦NHGヴーセでした。
本来は人類補完計画の巻き添えを食う多種多様な生命の種を残すための方舟でしたが、ヴィレにより改造され、初号機を主機にしてネルフ殲滅用の戦艦として運用されました。
ミサト「結果、彼(加持)はここにいない。ならば私はこの艦を、ネルフ殲滅、人類補完計画阻止のために使わせてもらう」
リツコ「あなたの復讐のため?」
ミサト「いいえ。命を残す方舟ではなく、命を救う戦闘艦として」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 ヤマト作戦前
AAAの意味とは?何の略語?
AAA(スリーエー)は「Autonomous Assault Ark」(自律強襲型方舟)の略語です。
人工ATフィールドを発生可
劇中では、NHGシリーズの中で唯一ヴンダーだけがATフィールドを発生させていました(ただし、Q画コンテ475によると、人口的なATフィールドとのことです。)。
これは、主機が初号機であることに由来していると思われます。
アダムスの器にはATフィールドが存在しないため、アダムスの器を主機とする他のNHG艦にはATフィールドがなかったのだと考えられます。
種子保管ユニットを装備
ヴンダーは、シンエヴァのヤマト作戦で、旧南極セカンドインパクト爆心地跡に突入する前、宇宙空間にタンポポの綿毛のような装置、種子保管ユニットを多数射出しました。
種子保管ユニットは、ヴンダーで保存していた多様な生命の種が入った装置であったと思われます。
2番艦NHGエアーレーズング
エアーレーズング(Erlösung)は、ドイツ語で「贖罪」(しょくざい)を意味します。
主機はマーク10です。
冬月が搭乗し、ヴィレを足止めするため、ヴンダーに奇襲を仕掛けました。
リツコ「オップファータイプ搭載型2番艦エアーレーズング。やはり完成していたのね」
リツコ「同じ神殺しの力。やっかいね」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
3番艦NHGエルヴズュンデ
エルヴズュンデ(Erbsünde)は、ドイツ語で「原罪」を意味します。
主機はマーク11です。
ヴンダーの進行ルートで待ち構え、エアーレーズングと挟撃しました。
リツコ「3番艦エルヴズュンデ!まんまと挟撃されたわね」
ミサト「艤装が手薄な3番艦から排除する。舵そのまま、最大船速」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
4番艦NHGゲベート
ゲベート(Gebet)は、ドイツ語で「祈り」を意味します。
主機はマーク12です。
擬装コクーン(光学迷彩)から不意をついて現れ、ヴンダーを下方から貫き、その動きを止めました。
リツコ「4番艦ゲベート!罠にはまったわね。私達」
シン・エヴァンゲリオン劇場版