初号機がヴンダー主機になれた理由:生命と知恵の実

 今回は、エヴァンゲリオン新劇場版において、なぜエヴァ初号機がAAA(スリーエー)ヴンダーの主機(船の推進力を出すための機関)になり得たのかについて考察します。

生命の樹

エヴァであればよいか(US作戦より)

 エヴァでありさえすればヴンダーの主機になれるというわけではありません。

 Qの冒頭シーンでは、宇宙空間で改2号機と8号機により初号機を奪還するUS作戦が実行されました。

 奪還の目的は、初号機をヴンダーの主機にすることでした。

 仮に、改2号機や8号機が主機になれるのだとすれば、わざわざこんな大がかりな作戦は行わないはずです。

 また、US作戦の際、葛城ミサトは、初号機の封印柩に取りついた改2号機の式波アスカに対し、「ツーダッシュ(改2号機)!作戦遂行を最優先。機体(改2号機)を捨てても目標物(初号機)を離さないで」と言っていました。最悪改2号機を失ってでも初号機を奪還する必要があったということです。

 つまり、ヴンダーの主機には、改2号機や8号機ではなり得ず、初号機でなければなれなかったのだと思います。

S2機関搭載機ならよいか(マーク4より)

 初号機と改2号機・8号機の違いとして、S2機関(生命の実)搭載の有無があげられますが(初号機は破で第9使徒を捕食してS2機関を取り込んだ。)、単にS2機関を搭載した機体であればヴンダーの主機になれるわけでもなさそうです。

 なぜなら、US作戦時には、既にネルフは「擬似S2機関」()搭載型のエヴァマーク4シリーズを多数運用させており、S2機関さえあればヴンダーが動くということであれば、やはりわざわざ大がかりな初号機奪還作戦には至らなかったはずだからです(マーク4シリーズを奪う方がはるかにハードルが低い)。

 マーク4シリーズの考察はこちら

  「擬似S2機関」というワードは、破の北米ネルフ第2支部でエヴァ4号機が爆発消滅した際の画コンテで登場します。

 冬月コウゾウ「擬似S2機関を仮設搭載した試作実験機だ。何が起こってもおかしくはない」

エヴァンゲリオン新劇場版:破 画コンテ817

知恵の実を持っていればよいか

 また、知恵の実を持っているだけではヴンダーの主機になれないことも明らかです。

 知恵の実だけあればよいということであれば、多数存在するリリン(人類)の誰もが主機になれることになってしまうからです。

AAAヴンダー本来の主機はアダムスの器

 Qの、ヴンダーがマーク9に取りつかれたシーンにおいて、赤木リツコは、「アダムスの器はヴンダー本来の主。初号機から本艦の制御を奪い返すつもりだわ」と言っていました。

 つまり、ヴンダーの本来の主機は、アダムスの器だということになります。

 アダムスの器の考察はこちら

 しかし、劇中では初号機が主機になってもヴンダーは動きました。

小括:主機になれるのは初号機又はアダムスの器

 ここまでをまとめると、ヴンダーの主機は、エヴァであれば何でもよいわけではなく、S2機関(生命の実)又は知恵の実のいずれかを持っていればよいわけでもなく、初号機又はアダムスの器でなければならないということになります。

 そうすると、初号機がアダムス系のエヴァなのではないかという推測が働きますが、私は、初号機はあくまでもリリスのコピー(クローン)だと考えています。

 初号機がリリスのコピーであることの考察はこちら

初号機とアダムスの器の共通点

 では、初号機とアダムスの器だけに存在する共通点はなんでしょうか。

 私は、生命の実(S2機関)及び知恵の実の両方を持っている点にあると考えます。

擬似シン化した初号機(=リリス)

 初号機は、碇ユイのダイレクトエントリーによって、知恵の実を有するに至りました。

 また、破において、浸食タイプの第9使徒に浸食されたエントリープラグを噛み砕いて捕食し、第9使徒の生命の実(S2機関)を取り込みました(次の第10使徒戦では、活動限界後に再起動できていたことから、既に生命の実を得ていたといえます。)。

 破のラストでは、碇シンジが覚醒し、擬似シン化しましたが、このとき、赤木リツコは、次のように言いました。

 リツコ「人の枠にとどめておいたエヴァが本来の姿を取り戻していく。人のかけた呪縛を解いて、人を超えた神に近い存在へと変わっていく」

エヴァンゲリオン新劇場版:破

  上記のとおり、私は、初号機はリリスのコピーだと考察していますので、ここでいう「本来の姿」「神」とはリリスを指していると考えます。

 「神」の多義的意味の考察はこちら

 つまり、もともとリリスのコピーにすぎなかった初号機が、生命の実と知恵の実の両方を得て、魂の代わりとなるパイロットのシンジが覚醒したことで、擬似シン化が生じ、リリス(神)のオリジナルと同等の存在になったと思われます。

 擬似シン化の考察はこちら

 つまり、新劇場版におけるリリスのオリジナルは、生命の実と知恵の実の両方を持った存在であると考えます(新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版)では知恵の実だけを持つ存在でした。)。

アダムスの器も2つの実を持った存在

 一方、アダムスの器は、アンビリカルケーブルなどの外部動力源を必要としておらず、もともと生命の実(S2機関)を得た存在であることは明らかです。

 アダムスの器が知恵の実を得ているかどうかは明らかでありませんが、シンエヴァでのフォース(アナザー)インパクトの際、ヴンダー以外のNHG艦(ネルフ戦艦)が「言霊」(ことだま)の力で黒き月から槍を生成していたことから、知恵の実も持っていると考えられます。

 フォース(アナザー)インパクトの考察はこちら

 言霊とは、言葉が持つ霊力のことをいうそうです。

 言葉を扱えるということは、知恵を持っていることの象徴であると考えます。

 つまり、アダムスの器も、リリス同様、生命の実と知恵の実の両方を持っていると考えます。

 新世紀版(旧劇場版、テレビアニメ版)では、アダム=生命の実、リリス=知恵の実という設定でしたので、どうしてもこのイメージに引きずられてしまうのですが、そもそもの旧約聖書では、アダムもイブ(エヴァ)とともに知恵の実を食して楽園を追放されています。

主機になれる条件:生命と知恵の実の両方を所持

 以上をまとめると、初号機もアダムスの器も生命の実(S2機関)と知恵の実の両方を持っている神と同等の存在であり、これがAAAヴンダーの主機となるための条件になると考えます(他のNHG艦も同様)。

 NHGネルフ戦艦の考察はこちら

 なお、シンエヴァの、ヴンダーが2番艦NHGエアレーズングと交戦するシーンにおいて、高雄コウジが、「だが主機はこっちの方が上だ」と言っていました。

 このセリフの意味については、別途考察します。

 「だが主機はこっちの方が上だ」の考察はこちら

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