エヴァインフィニティの正体とは なぜ初号機の姿なのか

 今回は、エヴァンゲリオン新劇場版における、エヴァンゲリオンインフィニティの正体について考察します。

エヴァインフィニティ

エヴァインフィニティの概要

 エヴァインフィニティ(エヴァンゲリオンインフィニティ)とは、インパクトの後、コア化した世界に出現した赤い「首無しエヴァ」のことです。

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 エヴァインフィニティは、インパクト発生によるコア化(浄化)によって、ATフィールドを失い、LCL化して肉体が消えた生命達の魂の器となる存在です。

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知恵の実を失った(首無しエヴァ)

 エヴァインフィニティには頭部がありません(首無し)。

 これは、知恵(の実)を失ったことを意味していると思われます。

生命の実を有する

 インフィニティ(infinity)とは、「無限」を意味します。

 上記のとおり、エヴァインフィニティは、知恵の実を有していませんが、代わりに使徒と同じように生命の実を持ち、食事や生殖活動を行わなくとも永遠に存在し続ける(infinity)ことができます。

人類補完計画による最終目標

 人類補完計画による最終目標は、人類が使徒によって滅ぼされる運命を否定し、知恵を失う代わりに永遠に存在し続けるエヴァインフィニティ(神の子)と同化することでした。

 人類補完計画の考察はこちら

 葛城ミサト「全ての魂をコアに変えエヴァインフィニティと同化させる。フォースインパクトの始まりか」

 碇ゲンドウ「知恵の実を食した人類に神が与えていた運命は2つ。生命の実を与えられた使徒に滅ぼされるか、使徒を殲滅しその地位を奪い知恵を失い永遠に存在し続ける神の子と化すか、我々はどちらかを選ぶしかない。ネルフの人類補完計画は後者を選んだゼーレのアダムスを利用した神への儚いレジスタンスだが、果たすだけの価値のあるものだ」

シン・エヴァンゲリオン劇場 AAAヴンダー甲板上

インパクトによって出現する

 シンエヴァにおいて、セカンドインパクト爆心地跡である旧南極のL結界境界面にAAAヴンダーが突入した際(ヤマト作戦)、第2層には無数のエヴァインフィニティがいました。

 セカンドインパクトの考察はこちら

 北上ミドリ「エヴァインフィニティの大群です」

シン・エヴァンゲリオン劇場版

 シンエヴァ特典映像3.0(-46h)の北上の回想シーンでは、サードインパクトによるコア化と同時に、大地から次々とエヴァインフィニティが出現しました。

 Qの、サードインパクト爆心地跡であるネルフ本部のセントラルドグマには、大量の「インフィニティのなり損ない」が発生していました(後述)。

 サードインパクトの考察はこちら

 シンエヴァの、フォース(アナザー)インパクトが起きた際も、地獄の門から無数のエヴァインフィニティが出現しました。

 フォース(アナザー)インパクトの考察はこちら

 以上によれば、エヴァインフィニティは、インパクトが起きる度に大量発生していることが分かります。

黒き月から発生する

 Qの、(ニア)フォースインパクトでは、黒き月が地面からせり上がり、周囲に無数のエヴァインフィニティが舞っていました。

 同シーンの画コンテによれば、黒き月がエヴァインフィニティを発生させていることが分かります。

 1327「黒き月。表面が脈動して大量のインフィニティを放出する」

 1328「羽虫のごとく吹き出されたインフィニティ達が舞う」

 1329「自転しながら上昇していく黒き月。無数のインフィニティを吐き出している」

エヴァンゲリオン新劇場版:Q 画コンテ

 また、シンエヴァのフォース(アナザー)インパクトでは、黒き月から新造した2本の槍が地獄の門の中に入ると、無数のエヴァインフィニティが発生しました。

 つまり、エヴァインフィニティは、黒き月に由来していることが分かります。

インフィニティ自体もコア化浸食する

 上記のとおり、エヴァインフィニティは、黒き月やコア化した大地から出現しましたが、シンエヴァ特典映像3.0(-46h)の北上の回想シーンでは、エヴァインフィニティの周囲もコア化される描写がありました。

 また、同シーンでエヴァインフィニティと対戦した改2号機は、エヴァインフィニティとの接触部にコア化浸食が発生していました。

 つまり、エヴァインフィニティ自身にもコア化浸食作用があるようです。

北上ミドリの髪の色がピンクに変色

 なお、シンエヴァ特典映像3.0(-46h)の北上の回想シーンにおいて、北上はエヴァインフィニティの「汚れ」を頭部に浴びたことにより、黒髪がピンク色に変色しました。

 シンエヴァブルーレイブックレットには、北上の髪が「コア化してしまった」と記載されていました。

 つまり、北上の髪の毛がピンク色に変色したのは、エヴァインフィニティのコア化浸食作用によるものです。

インフィニティのなり損ないとは

 Qの、第13号機がセントラルドグマへ通じるメインシャフトを降りていくシーンにおいて、壁面には静止した無数のエヴァインフィニティが張り付いていましたが、渚カヲルは、これらを「インフィニティのなり損ない」と呼んでいました。

 同シーンの画コンテ(1049)には、「シャフト壁面。びっしりとインフィニティで埋め尽くされている」と書かれています。

 シンジ「壁が…」

 カヲル「ああ。全てインフィニティのなり損ない達だ。君は気にしなくていい」

エヴァンゲリオン新劇場版:Q メインシャフト降下シーン

 メインシャフトに張り付いたエヴァインフィニティには、頭部が付いているものもありました(首あり)。

 冒頭で述べたとおり、エヴァインフィニティの本来の姿は、頭部、つまり知恵(の実)を失った存在です。

 したがって、「インフィニティのなり損ない」とは、発生の途中で中断され、頭部が残るなど、完全体になりきれなかったものをいうと考えます。

 リリスとマーク6によるサードインパクトは、次のセリフからも分かるとおり、儀式の途中でヴィレの妨害によって中断されたと思われますので、この機会に発生しようとしていたエヴァインフィニティ達が、「なり損ない」になったと考えます。

 アスカ「まずいっ!第12の使徒がまだ生き残ってる」「サードインパクトの続きが始まる前に、こいつを片付ける!」

エヴァンゲリオン新劇場版:Q (ニア)フォースインパクト

セントラルドグマ内の頭蓋骨

 なお、Qのセントラルドグマ内に無数に散乱していたドクロは、エヴァインフィニティのものです。

 「なり損ない」は、儀式を経て、頭部を失い、エヴァインフィニティの完成体になるのだと思われます。

 1090「照明の中に見えるリリスの十字架。周囲には白骨化したインフィニティの頭部

エヴァンゲリオン新劇場版:Q 画コンテ

動かないインフィニティ

 Qの、カオルがシンジに対してニアサードインパクトを説明したシーンでは、動かないエヴァインフィニティが多数描写されました。

 同シーンの画コンテによると、この止まっているエヴァインフィニティは、「出現途中」のもののようです。

 804「奥に出現途中のエヴァインフィニティが見える」

 805「町を壊すでなく融合しているインフィニティら。天に向かっているポーズ」

エヴァンゲリオン新劇場版:Q 画コンテ

 動かない理由は、魂と同化しておらず、器だけの状態であるためと思われます。

動くインフィニティ=ハイカイ

 対して、動くエヴァインフィニティも存在します。

 シンエヴァの第3村において、動くエヴァインフィニティは、「ハイカイ」と呼ばれていました。「徘徊」の意味だと思われます。

 相田ケンスケ「最近見るようになったんだ。ハイカイと呼称している。ずっと埋まっていた首無しエヴァが、いきなり動き始めたんだ」

シン・エヴァンゲリオン劇場版 第3村

 上記セリフからすると、エヴァインフィニティは突然動き出したとのことです。

 Qの時点では動いていなかったエヴァインフィニティが、シンエヴァ第3村の時点で動き出したということになりますが、何が原因になったのでしょうか。

 冒頭で述べたとおり、エヴァインフィニティは、コア化によって肉体を失った魂の器となる存在ですので、魂が同化したエヴァインフィニティは動き出すのだと思われます。

 そうすると、Qラストの(ニア)フォースインパクト(魂の浄化の儀式)がきっかけになったとも考えられますが、シンエヴァ特典映像3.0(-46h)の北上の回想シーンでは、(ニア)フォースインパクト前のエヴァインフィニティも活動していましたので、直接的な関係はなさそうです。

 おそらく、エヴァインフィニティには出現してすぐに動きださない個体もあり、魂との同化がされた個体のみが動き出すのだと思われます(出現地点周辺に魂があると同化する。)。

エヴァインフィニティの正体と存在意義

 冒頭で述べたとおり、人類補完計画による最終目標は、人類が使徒によって滅ぼされる運命を否定し、知恵を失う代わりに永遠に存在し続けるエヴァインフィニティと同化することでした。

 この点について、Qのカヲルは、次のように説明していました。

 カヲル「生命とは本来世界に合わせて自らを変えていく存在だからね。しかし、リリンは自らでなく世界の方を変えていく。だから自らを人工的に進化させるための儀式(サードインパクト)を起こした。古の生命体を贄とし生命の実を与えた新たな生命体を作り出すためにね。全てが太古よりプログラムされていた絶滅行動だ。ネルフでは人類補完計画と呼んでいたよ」

エヴァンゲリオン新劇場版:Q シンジに対するサードインパクトの説明

 つまり、生命とは本来世界に合わせて進化するものですが、人類(リリン)は自らは進化しないで世界の方を変えてしまう存在であるため、一旦自ら絶滅した上で、生命の実を与えた(永遠に生き続ける)新たな生命体(エヴァインフィニティ)へと人工的に進化させることが人類補完計画の目的だというのです。

 ただし、単に生命の実を持つのではなく、その代わりに知恵と個性を失うこと(コモディティ化)がエヴァインフィニティと同化することの本質だといえます。

 赤木リツコ「これが人類、いえ、この星の古の生命のコモディティ化

 葛城ミサト「全ての魂をコアに変えエヴァインフィニティと同化させる。フォースインパクトの始まりか」

 ゲンドウ「そうだ。セカンドインパクトによる海の浄化。サードによる大地の浄化。そしてフォースによる魂の浄化。エヴァインフィニティを形作るコアとは魂の物質化。人類という種の器を捨てその集合知をけがれなき楽園へといざなう最後の儀式だ」

 ゲンドウ「知恵の実を食した人類に神が与えていた運命は2つ。生命の実を与えられた使徒に滅ぼされるか、使徒を殲滅しその地位を奪い知恵を失い永遠に存在し続ける神の子と化すか、我々はどちらかを選ぶしかない。ネルフの人類補完計画は後者を選んだゼーレのアダムスを利用した神への儚いレジスタンスだが、果たすだけの価値のあるものだ」

シン・エヴァンゲリオン劇場版 AAAヴンダー甲板上

 カヲルは、これを「進化」と呼びましたが、知恵を失うことはむしろ「退化」ではないのかという疑問が生じます。

 しかし、聖書をモチーフにしているエヴァンゲリオンの世界観において、知恵の実を食べたことは神に背いた「原罪」であり、知恵を持つことは悪しきこととされているわけです。

 「知恵」をもって神に背くのではなく、「知恵」を失い、神の下僕として永遠に存在し続ける。そのための新しい魂の器が、エヴァインフィニティということだと考えます。

初号機の姿である理由

 ところで、エヴァインフィニティは、初号機の姿をしています。

 シンエヴァ特典映像3.0(-46h)の北上の回想シーンでは、サードインパクト後に大地から出現したエヴァインフィニティは、初号機の姿でした(出現後すぐに頭部が切り離された。)。

 また、Qのセントラルドグマへ通じるメインシャフトの壁面にいた無数の「インフィニティのなり損ない」について、シンジは、画コンテの初期段階では「初号機?」と言うことになっていました(1049)。

 なぜ、エヴァインフィニティは、初号機の姿をしているのでしょうか。

 上記のゲンドウのセリフによれば、エヴァインフィニティは、「知恵を失い永遠に存在し続ける神の子です。

 ここでいう「神」が何を指すのかが重要です。

 シンエヴァの、式波アスカとオリジナルアスカが対峙したシーンにおいて、オリジナルアスカは、第13号機を「神と同じ姿」と言いました。

 オリジナルアスカ「最後のエヴァは神と同じ姿。あなたも愛とともに私を受け入れるだけ。さあこちらへ」

シン・エヴァンゲリオン劇場版 第13号機対新2号機

 エヴァンゲリオンでは、「神」と呼ばれる対象が複数存在しますが、私は、第13号機が同じ姿であるとされる「神」とは、エヴァ世界における最上位の「神」であると考えています。

 「神」の多義的意味の考察はこちら

 そして、最上位の「神」は、旧劇場版のラストで「神」になった初号機と同義であるとも考えます。

 第13号機と初号機はほぼ同じ見た目をしているところ、エヴァ世界はループしていますので、前世界(旧劇場版)で「神」になった初号機との関係で、オリジナルアスカは第13号機を「神と同じ姿」と呼んだのではいかと思われます。

 エヴァ世界のループの考察はこちら

 要するに、新劇場版で最上位の「神」は、旧劇場版で「神」になった初号機(=新劇場版の制作者)のことであり、「神の子」であるエヴァインフィニティは、旧劇場版の初号機(神)と同じ姿をしているのではないかと考えられるわけです。

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