新旧サードインパクト、ニアサーとは 原因、目的、条件、内容

 今回は、エヴァンゲリオンシリーズにおける、サードインパクト(ニアサードインパクトを含む。)について考察します。

 サードインパクトは、ファーストインパクト、セカンドインパクトに次ぐ地球規模の大災害です。

 ファーストインパクトの考察はこちら

 セカンドインパクトの考察はこちら

 フォース(アナザー)インパクトの考察はこちら

 アディショナルインパクトの考察はこちら

 新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版)と新劇場版とでは、その内容が全く異なりますので、それぞれについて説明します。

サードインパクト

新世紀版(旧劇場版、コミック版)

 新世紀版(旧劇場版)のサードインパクトは、人類補完計画における最終段階の儀式であり、物語のエンディングにもなっていました(フォースインパクト、アディショナルインパクトへと続く新劇場版とは異なります。)。

 儀式の内容は、旧劇場版(Air/まごころを君に)において描かれましたが、ゼーレと碇ゲンドウの思惑が異なることも相まって、非常に難解で分かりづらいものになっていました。以下、コミック版のセリフも交え、サードインパクトの目的、方術、内容、結果について解説します。

ゼーレの目的

 ゼーレがサードインパクトを起こす目的は、人類(リリン)は地球の正当な継承者(アダム系の生物である使徒)でなく、リリスより生まれた偽りの継承者であり、不完全な群体(寿命があるなど1人では生きていけない存在)であるため、サードインパクトによって全ての人類をLCL化(個を喪失)させ、単一の完全な生命体(神の子)へ生まれ変わらせることでした。

 ゼーレ「偽りの継承者、黒き月より生まれし我らが人類。この地に無節操にはびこり、お互いを理解できぬまま憎しみ合い、傷つけ合うことしかできぬ愚かな生き物。偽りの継承者であるがため未来に行き詰った我々に残された希望はただ1つ。神の子として正当な継承者に生まれ変わることなのだ」

コミック版第11巻 アダムの末裔

 葛城ミサト「出来損ないの群体として既に行き詰った人類を完全な単体としての生物へと人工進化させる補完計画。まさに理想の世界ね。そのために、まだ委員会は使うつもりなんだわ。アダムやネルフではなくあのエヴァ(初号機)を。加持君の予想どおりにね」

旧劇場版Air

 ミサト「あなた達パイロットはエヴァで全ての使徒を倒し人類を守った。でも、ゼーレとあなたのお父さんは未だサードインパクト望んでいるわ。最後の使徒であるヒトを滅ぼし、新たな生命体へと進化させる。それが人類補完計画。もっとも、ゼーレとお父さんの望む方向は最終的に違っているようだけどね。エヴァは補完計画の鍵を握ってる」

コミック版第12巻 邂逅

ゲンドウの目的

 ゼーレの目的ではゼーレ自身も補完の対象になっていたのに対し、ゲンドウの目的は、神の子として生まれ変わるのでなく、自らが神になることでした。その準備のため、ゲンドウはアダムの肉体を自身に移植していました(詳細は後述)。

 ゼーレ01「ネルフ。そもそも我らゼーレの実行機関として結成され、我らのシナリオを実践するために用意されたもの。それが今は一個人(ゲンドウ)の占有機関と成り果てている」

 ゼーレ05「神と等しき力を手に入れようとしている男(ゲンドウ)がいる」

 ゼーレ02「パンドラの箱を我々より先に開け、そこにある希望が現れる前に閉じ込めようとしている男(ゲンドウ)がいる」

コミック版第11巻 アダムの末裔

 ゼーレ「碇ゲンドウ。我らに背き、滅びを拒み、自らの補完を目論む者。彼には、死をもって償ってもらおう」

コミック版第11巻 欠けた心

ゼーレの方術、儀式の起こし方

 ゼーレは、サードインパクトを起こすための方法、方術を2種類用意していました。

方術1 アダムとリリスの融合

 まず、ゼーレは、渚カヲル(最後の使徒タブリス)をフィフスチルドレンとしてネルフ本部へ送り込み、リリスのいるターミナルドグマへ向かわせました(テレビアニメ版第24話)。

 アダムの魂を持つカヲルとリリスを融合させることで、サードインパクトを発生させようとしました。

 カヲル「でも僕がこれ(リリス)に接触すれば、サードインパクトが起こるらしいよ。接触した生命を含め、全ての種が一瞬で滅びる。もちろん君達リリンもね」「サードインパクトが起こったとしても、人はただ滅びるんじゃない。新しい形で生まれ変わるんだ。1つに結合して単体の生命としてね。そうすれば君(碇シンジ)の望んでいるとおりの世界が訪れる」

コミック版第11巻 辿りついた境界線

 しかし、シンジが搭乗する初号機によってカヲルが倒され、この作戦は阻止されました。

方術2 覚醒初号機とエヴァ量産機による儀式

 カヲルによる作戦(方術1)を阻止されたゼーレは、次に、覚醒した初号機と9体のエヴァシリーズ(エヴァ量産機)を使ってサードインパクトの儀式を起こすことにしました。

 ゼーレ「約束の時が来た。ロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完はできぬ。唯一、リリスの分身たるエヴァ初号機による遂行を願うぞ」

 ゲンドウ「ゼーレのシナリオとは違いますが…」

旧劇場版Air

 エヴァシリーズによって蹂躙された弐号機(惣流アスカが搭乗)を見たシンジと初号機は覚醒し、初号機の光の翼が十字架様に変形しました。

 覚醒した初号機に呼応して()、第15使徒アラエル戦後から衛星軌道上に留まっていたロンギヌスの槍が、初号機の元に飛来し、その動きを止めました。

  コミック版第13巻「儀式の始まり」では、シンジと初号機のシンクロ率が250%を超えたところで、衛星軌道上のロンギヌスの槍が反応しました。

 動きを止められた初号機は、エヴァシリーズに上空へ拘引され、エヴァシリーズのロンギヌスの槍(コピー)によって両手を貫かれました(聖痕)。

 エヴァシリーズが、初号機を中心に、世界創生の象徴「セフィロトの樹」の様な配置に並ぶと、サードインパクトの儀式が始まりました。

 この儀式は、人間の贖罪のために十字架に磔(はりつけ)にされたイエス・キリストのイメージなのだと考えます。コミック版第11巻「最後の敵」では、儀式にはエヴァが13体必要だったとされていましたが、これは、本来の儀式が初号機+エヴァ12体(イエス・キリスト+12使徒に対応)で起こそうとしていたことを意味すると思われます。ゼーレが「いささか数が足りぬがやむを得まい」と言ったのもこのことだと考えます(実際には初号機+エヴァシリーズ9体だった。)。

 冬月「ゼーレめ。初号機を依り代とするつもりか」

 ゼーレ「エヴァ初号機に聖痕が刻まれた」「今こそ中心の樹の復活を」「我らがしもべエヴァシリーズは、皆このときのために」

旧劇場版まごころを君に

ゲンドウの方術

 ゲンドウは、ゼーレがアダムとリリスの融合(上記方術1)を断念した後も、アダムの肉体を移植したゲンドウ自身がリリスと融合することで、サードインパクトを起こそうとしました。

 上記のとおり、ゲンドウの目的はゲンドウ自身が神になることでしたので、自分がアダムとして、リリスと融合する方術を選択したのだと思われます。

サードインパクトの発生条件まとめ

 以上のとおり、サードインパクトの起こし方は、「アダムとリリスの融合」と「覚醒初号機とエヴァシリーズによる儀式」の2種類がありました。

 いずれの方術も、生命の実(アダム)と知恵の実(リリス)の2つを持つ、神と同等の存在を創り出すという点で共通しています。

 初号機は、ユイのコアへのダイレクトエントリーによって知恵の実を、第14使徒ゼルエルを捕食したことで生命の実(S2機関)を保有していましたので、パイロットのシンジが覚醒したことにより、やはり神と同等の存在になったといえます。

 なお、完全なインパクトにするためには、ロンギヌスの槍が必要です。ロンギヌスの槍がインパクトの完成要素となっていました。これは新劇場版と共通しています。

 サードインパクトが非常に難解で分かりにくかったのは、ゼーレとゲンドウの目的が異なることに加えて、ゼーレでさえも裏死海文書の内容を完全に理解していたわけでなく、正確な方術や手順を知らなかったためです。これが劇中の描写を理解し難くしている原因だと思います。

 ゼーレが裏死海文書の内容を完全に解読できていなかったことは、以下のセリフから読み取れます。

 ゼーレ「タブリス(カヲル)。ヘヴンズドアを開いたまでは良かったが、最後の最後で我らを裏切ったか」「彼を責めるのは間違っている。最初からこれが筋書だったと考えればな」「左様。彼が最後の使徒だったことは事実」「だが生命の継承者であることはどこにも記されてはおらん。我々の死海文書の中にはな」「もはやアダムや使徒の力は借りぬ。補完は我々自身の手で行えということだ」「神も人も全ての生命がやがてひとつとなるために」「滅びの宿命は再生の喜びでもある。今度こそその時が来た」

コミック版第11巻 欠けた心

 上記のセリフは、カヲルが裏切ることをゼーレが把握していなかったことを表しています。

 ゼーレ「ついに我らの願いが始まる」「ロンギヌスの槍もオリジナルがその手に還った」「いささか数が足りぬがやむを得まい」「エヴァシリーズを本来の姿に。我ら人類に福音をもたらす真の姿に。等しき死と祈りをもって人々を真の姿に」

旧劇場版まごころを君に

 ゼーレ「ロンギヌスの槍が月より還った。ついに我らの願いが始まる。だが初号機パイロット、碇の息子を乗せたままだ」「神が自ら時を選んだのだ。既に儀式は始まっている。もはや引き返すことはできぬ。我々の意志でも。ましてや碇の意志でも」「方舟の行き先はもう決まっている。裏死海文書、古より定められていた通りに」「いささか数が足りぬがやむを得まい。エヴァシリーズを本来の姿に。我ら人類に福音をもたらす真の姿に。等しき死と祈りをもって人々を真の姿に」

コミック13巻 86儀式の始まり

 上記のセリフは、ロンギヌスの槍が衛星軌道上から初号機のもとへ飛来したときのセリフです。これよりも前のシーンにおいて、ゼーレは「ロンギヌスの槍を失った今、リリスによる補完はできぬ」と言っていましたので、ロンギヌスの槍が戻ってくることがゼーレにとっても予想外の出来事だったことが分かります(何が起きるか正確に把握していなかった。)。

サードインパクトの内容、結果

 エヴァシリーズが、初号機を中心に、世界創生の象徴「セフィロトの樹」の様な配置に並ぶと、サードインパクトの儀式が始まりました。

 エヴァシリーズがS2機関を解放すると、大爆発が生じ、地中の黒き月(人類の起源たるリリスの卵)が露出しました。

 このときゲンドウ(アダムの肉体を移植)は、リリスと融合して自らが神になろうと試みますが、シンジに呼応したレイによって、逆にアダムの肉体を吸収されてしまいました。

 レイにはリリスの魂が宿っていたところ、アダムの肉体を吸収したレイがリリスの肉体へ還り、アダムとリリスの融合が生じました。

 新世紀版のレイの考察はこちら

 そして、リリス+アダムは、巨大なレイ(+カヲル)の姿になって初号機の前に現れました。

 エヴァシリーズが巨大なレイ(+カヲル)と融合すると、恐ろしい姿となり、それを見たシンジの自我は崩壊しました。

 ゼーレ「エヴァンゲリオン初号機パイロットの欠けた自我をもって人々の補完を」

旧劇場版まごころを君に

 青葉シゲル「心理グラフ、シグナルダウン」

 日向マコト「デストルドーが形而化されていきます」

 冬月「これ以上はパイロットの自我が持たんか」

旧劇場版まごころを君に

 このときシンジは補完の中心におり、シンジの自我によってサードインパクトの結末が左右される状況にありました(なお、ゼーレは、シンジの自我によって補完の結末が変わるのを恐れ、できれば初号機搭乗前にシンジを始末しておきたかったのです。)。

 レイ(と融合したエヴァシリーズ)の恐ろしい姿は、この時のシンジの心と願い(デストルドー:死への欲動、破滅)を表すものでした。

 ユイ「今のレイは、あなた自身の心。あなたの願いそのものなのよ」

 レイ「何を願うの?」

旧劇場版まごころを君に

 その後、ロンギヌスの槍と初号機が融合し、神と等しき生命の樹の姿になりました。そして、サードインパクトからヒトを救うか、滅ぼすか(デストルドー)、補完の中心にいるシンジの自我に委ねられることになりました。

 冬月「使徒の持つ生命の実と、ヒトの持つ知恵の実。その両方を手に入れたエヴァ初号機は、神に等しき存在となった。そして今や、命の胎芽たる生命の樹へと還元している。この先に、サードインパクトの無からヒトを救う方舟となるか、ヒトを滅ぼす悪魔となるのか、未来は碇の息子に委ねられたな

旧劇場版まごころを君に

 そして、黒き月が上昇し、巨大なレイ(リリス)が現れ、12枚の翼を広げると、リリスによるアンチATフィールドによって、全人類の個々のATフィールドが消失し、人々の肉体がLCL化されていきました。

 巨大なレイ(リリス)の両手の平にはガフの扉が出現し、LCL化した人類の魂が還っていきました。

 日向「アンチATフィールド。臨界点を突破」

 青葉「ダメです。このままでは、個体生命の形が維持できません」

 冬月「ガフの部屋が開く。世界の始まりと終局の扉が、ついに開いてしまうか」

旧劇場版まごころを君に

 ATフィールドやLCLの考察はこちら

シンジの選択=サードインパクトの結末

 サードインパクトの最中、シンジは、一旦は「他者のいる世界」、ATフィールドによって自分と他人との間に境界がある世界、他人から傷つけられる世界を拒みました。つまり、ゼーレが目指した結末と同様に、人類が溶け合い単一の生命になることを望みました。

 しかし、最後にシンジは、もう一度みんなに会いたいと願い、「他者のいる世界」を望みました。

 このシンジの選択によってサードインパクトの結末が決まり、リリスの首がとれ、再び「他者のいる世界」が創り出されました。

何が起きているのか分かりにくい理由

 繰り返しになりますが、サードインパクトが難解で分かりにくかったのは、ゼーレとゲンドウの目的が異なることに加え、ゼーレでさえも裏死海文書の内容を全て理解していたわけでなく、正確な方術や手順を知らなかったためです。

 また、上記のとおり、サードインパクトの起こし方には「アダムとリリスの融合」と「覚醒初号機とエヴァシリーズによる儀式」の2種類がありましたが(少なくともゼーレはそのように考えていた。)、結局のところ、この2種類の現象が同時に発生した描写になっていたため、非常に分かりにくかったのだと思われます。

新劇場版

 新劇場版のサードインパクトは、物語における重要なイベントであったことは間違いありませんが、人類補完計画における最終段階の儀式ではありませんでした(その後、フォースインパクト、アディショナルインパクトへと続く。)。

 シンエヴァのAAAヴンダー甲板上において、ゲンドウは、人類補完計画について、「そうだ。セカンドインパクトによる海の浄化。サードによる大地の浄化。そしてフォースによる魂の浄化」と説明していました。

 つまり、サードインパクトは、人類補完計画を進めるための第2段階として、大地を浄化するための儀式でした。

 人類補完計画の考察はこちら

 なお、浄化とは、赤くコア化させて生物が住めない環境にすることです。

 コア化の考察はこちら

ニアサードインパクトとは

 サードインパクトは、儀式の途中でカヲルの搭乗するマーク6によって中断され、その後再開しました。中断前の儀式は、ニアサードインパクトと呼ばれています。

 ニア(near)とは、「ほとんど」「近い」などの意味ですので、完全なサードインパクトではないが、ほぼサードインパクトという意味になります。

 カヲルによって途中で中断され、完全ではなかったために、「ニア」サードインパクトなのだと思われます。

 ニアサードインパクトは、破のラストで描かれました。

 「最強の拒絶タイプ」である第10使徒に零号機ごと吸収された綾波レイ(白レイ)を救出するため、シンジが覚醒し、それに呼応した初号機は擬似シン化しました。

  擬似シン化の考察はこちら

 擬似シン化した初号機が第10使徒を取り込むと、(ニア)サードインパクトが始まりました。

 ガフの扉が開き、光の翼が出現すると、大爆発(コア化)が生じました。

大地の浄化

 上記のとおり、サードインパクトの目的は、大地を浄化(コア化)することでしたが、これは、ニアサードインパクトによってほぼ達成されていたと思われます。

 シンエヴァのフォースインパクトの際、鈴原トウジが、「ニアサーも生き延びてきたワシらや。自分らの運と、ミサトさんのヴィレを信じるで」と言っていたからです。

 なお、大地の浄化の他、後述するとおり、エヴァインフィニティを発生させることもサードインパクトの目的でした。

トリガーと贄

 新劇場版のインパクトは、「トリガー」(儀式の主体)と「贄」(にえ)が必要になっていますが、ニアサードインパクトは、擬似シン化した初号機+シンジがトリガーに、第10使徒が贄になったと考察しています。

 全インパクトのトリガーと贄の考察はこちら

ゼーレのシナリオにはなかった

 ニアサードインパクトは、本来のゼーレのシナリオにはない、ゲンドウ独自の思惑によって起こされたものでした。

 第4使徒殲滅後のゼーレモノリス06「使徒殲滅はリリスとの契約のごく一部にすぎん」

 第6使徒戦におけるゲンドウ「いかなる手段を用いても我々はあと8体の使徒を倒さねばならん

エヴァンゲリオン新劇場版:序

 第6使徒戦までに、第4使徒と第5使徒を殲滅していたため、使徒を全部で10体殲滅することがリリスとの契約内容になっていたといえます。

 加持リョウジ「数が揃わぬ内に初号機をトリガーとするとは。碇司令、ゼーレが黙っちゃいませんよ

 冬月「やはりあの2人で初号機の覚醒は成ったな」

 ゲンドウ「ああ。我々の計画にたどり着くまで、あと少しだ」

エヴァンゲリオン新劇場版:破

 加持が「数が揃わぬ内に」と言ったのは、「使徒はまだ8体しか倒していないのに」という意味だと考えられます。

 ゼーレ「我らの望む真のエヴァンゲリオン。その誕生とリリスの復活をもって契約のときとなる。それまでに必要な儀式は執り行わねばならん。人類補完計画のために」

エヴァンゲリオン新劇場版:破

 ゲンドウ「真のエヴァンゲリオン。その完成までの露払いが初号機を含む現機体の務めというわけだ」

 冬月「それがあのマーク6なのか。偽りの神ではなくついに本物の神を創ろうというわけか」

 ゲンドウ「ああ。初号機の覚醒を急がねばならん

エヴァンゲリオン新劇場版:破

 以上のセリフから、ゼーレは、リリスとの契約に従い、サードインパクトまでに10体の使徒を殲滅し、初号機でなくマーク6によってサードインパクトを起こす予定でしたが、ゲンドウがゼーレを出し抜いて、まだ8体の使徒しか倒していないにもかかわらず、先に初号機を覚醒させてニアサードインパクトを発生させたことが分かります。

 なお、ゲンドウが初号機を擬似シン化させたかったのは、アディショナルインパクトによって「神殺し」を行うためだっと思われます。

 ネオンジェネシス、ゲンドウの神殺しの考察はこちら

カヲルのマーク6が儀式を止めた

 ゼーレの命令により、月面タブハベースから飛来したマーク6(カヲルが搭乗)の投擲したカシウスの槍が初号機のコアを貫くと、擬似シン化が止まり、ニアサードインパクトは中断されました。

 上記のとおり、聖槍は、儀式の完成要素であると同時に、儀式を中断する効果もあることが分かります。

 聖槍の考察はこちら

サードインパクトとは

 サードインパクトとは、上記ニアサードインパクトと、その後の儀式を合わせた一連の出来事を指しています。つまり、ニアサードインパクトは途中で中断されましたが、また始めから別の儀式(別のサードインパクト)がやり直されたわけではないということです。

 このことは、Qの、カヲルが、シンジに対し、サードインパクトの惨状を見せた際の次のセリフから読み取れます。

 カヲル「君が初号機と同化している間に起こった、サードインパクトの結果だよ」

 シンジ「これじゃ…街のみんなは」

 カヲル「この星での大量絶滅は珍しい事じゃない。むしろ進化を促す面もある。生命とは本来、世界に合わせて自らを変えていく存在だからね。しかし、リリンは自らでなく世界のほうを変えていく。だから自らを人工的に進化させるための儀式を起こした。古の生命体を贄(にえ)とし、生命の実を与えた新たな生命体を作り出すためにね。全てが太古よりプログラムされていた絶滅行動だ。ネルフでは、人類補完計画と呼んでいたよ。」

 シンジ「ネルフが、これを…。父さんは何をやっているんだ」

 カヲル「碇シンジ君。一度覚醒しガフの扉を開いたエヴァ初号機は、サードインパクトのトリガーとなってしまった。リリンの言うニアサードインパクト。全てのきっかけは君なんだよ

エヴァンゲリオン新劇場版:Q

目的:大地の浄化とエヴァインフィニティの誕生

 上記カヲルのセリフを要約すると、生命は通常環境に合わせて進化するのに対し、人類(リリン)は環境の方を変えてしまうため、人工的に進化させる必要があるところ、その進化先は「生命の実を与えた新たな生命」であり、「生命の実を与えた新たな生命」を作り出すことが、儀式(サードインパクト)の目的だったということになります。

 劇中では、この「生命の実を与えた新たな生命」というセリフのところで、エヴァインフィニティのカットが入りました。つまり、「生命の実を与えた新たな生命」とは、エヴァインフィニティのことを指していると思われます。

 エヴァインフィニティの考察はこちら

 つまり、上記の「大地の浄化」の他、エヴァインフィニティを発生させること」もサードインパクトの目的だったことになります。

 なお、破の、ニアサードインパクトの際の赤木リツコのセリフにおける「新たな生命」も、覚醒した初号機ではなく、エヴァインフィニティのことを指していたものと思われます。

 リツコ「この世界の理(ことわり)を超えた新たな生命の誕生。代償として、古の生命は滅びる…

 ミサト「翼…。15年前と同じ」

 リツコ「そう。セカンドインパクトの続き。サードインパクトが始まる。世界が終わるのよ」

エヴァンゲリオン新劇場版:破

 ところで、ここでいう「古の生命」とは、何を指すののでしょうか。

 このセリフの英語訳は、「And the price to pay is the death of all previous life-forms.」となっており、「支払うべき代償は、これまでの全ての生命体の死」という意味になるかと思います。つまり「古の生命」とは、地球の全ての生命を指していることが分かります。

インパクトには段階がある

 ここまでを見ると、インパクトには、次のとおり、2段階あることが分かります。以下、便宜上、ニアサードインパクト後の儀式を「第2儀式」と呼ぶことにします。

 なお、途中で中断した儀式を再開するには、新たにトリガーと贄が必要になるようです。

サードインパクト説明図

第2儀式の方術、内容

 では、第2儀式は、どのように行われたのでしょうか。

マーク6がドグマへ降下

 まず、破のQ予告によれば、ニアサードインパクト後、初号機が凍結され、ネルフ関係者が幽閉されると、マーク6がセントラルドグマに投下されたことが分かります。

 「レイとシンジを取り込んだまま凍結されるエヴァ初号機」

 「廃棄される要塞都市。幽閉されるネルフ関係者」

 「ドグマへと投下されるエヴァ6号機」

エヴァンゲリオン新劇場版:破 Q予告

 上記のとおり、ニアサードインパクトは、ゲンドウがゼーレを出し抜いた形で起こされましたが、ゼーレがそれを軌道修正し、当初トリガーにする予定だったマーク6を使って第2儀式を起こしたのだと思われます。

 また、セントラルドグマに投下された時点において、マーク6は、第2儀式の贄とするため、既に第12使徒と融合していたと考察しています。

 第12使徒の考察はこちら

リリスの頭部(首)を切り落とす

 シンエヴァのヤマト作戦前のミサトの回想シーンでは、一瞬だけ第2儀式の様子が描写されました。

 マーク6が、切り落としたリリスの頭部を手に持ち、リリスと同化している様子が描かれていました。周囲には無数の頭蓋骨が降り注いでいましたが、Qの画コンテ1090によれば、この頭蓋骨は、「白骨化したインフィニティの頭部」とのことです。

 首を切り落としたのは、人類補完計画の目標であり、人類の進化先である「知恵を失い永遠に存在し続ける神の子」としてのエヴァインフィニティを作るための行為だったと思われます。

 碇ゲンドウ「知恵の実を食した人類に神が与えていた運命は2つ。生命の実を与えられた使徒に滅ぼされるか、使徒を殲滅しその地位を奪い知恵を失い永遠に存在し続ける神の子と化すか、我々はどちらかを選ぶしかない。ネルフの人類補完計画は後者を選んだゼーレのアダムスを利用した神への儚いレジスタンスだが、果たすだけの価値のあるものだ」

シン・エヴァンゲリオン劇場版 AAAヴンダー甲板上

 なお、エヴァマーク7は、エヴァインフィニティにこの頭蓋骨を再度結合させて建造されたものであると考察しています。

 エヴァマーク7の考察はこちら

ヴィレが乱入 アスカとマリで儀式を止めた

 Qでは、サードインパクトの爆心地跡のセントラルドグマが描かれましたが、そこでは、リリス及びリリスと融合したマーク6に、それぞれ槍が1本ずつ刺されていました。

 カヲル「着いたよ。セントラルドグマの最深部。サードインパクトの爆心地だ」

 シンジ「これがリリス?」

 カヲル「だったものだ。その骸だよ」

 シンジ「ミサトさん…。命がけで守ってたのに…。ん?あれはエヴァ?」

 カヲル「そう。エヴァマーク6。自律型に改造され、リリンに利用された機体の成れの果てさ」

エヴァンゲリオン新劇場版:Q セントラルドグマ

 この2本の槍は、ニアサードインパクト時に初号機に刺されたものと、もともとリリスの胸に刺さっていたものだと思われます。

 磔リリスの胸に槍を刺した理由の考察はこちら

 そして、この2本の槍は、ヴィレの改2号機(式波アスカ)と8号機(真希波マリ)が、サードインパクトを中断させるために投擲した考えます。

 なぜなら、サードインパクトの時点で、槍を刺せたのは次のとおり、改2号機(アスカ)と8号機(マリ)しかあり得ないからです。

  • 零号機:第10使徒に捕食されていた。
  • 初号機:シンジはサードインパクトのことを全く知らなかったため、サードインパクト時、初号機は既に封印柩に入れられ宇宙へ飛ばされていたと思われる。
  • 3号機:初号機によって殲滅されていた。
  • 4号機:北米ネルフ第2支部で爆発消滅していた。
  • 仮設5号機:第3使徒戦で自爆消滅していた。
  • マーク7:そもそも完成していたか不明。また、自律量産型でパイロット(魂)がいない。
  • マーク9:そもそも完成していたか不明。また、黒レイには槍を扱えない。

 また、Qの(ニア)フォースインパクトの際、アスカは、「まずいっ!第12の使徒がまだ生き残ってる」「サードインパクトの続きが始まる前に、こいつを片付ける!」と言っていましたので、アスカがサードインパクトの現場にいたことが示唆されています。

小括(まとめ)

 以上をまとめると、ニアサードインパクト後、次のような手順で第2儀式が行われたと考えられます。

  • 1 自律型に改造されたマーク6(既に第12使徒と融合)がセントラルドグマへ投下される。
  • 2 マーク6がリリスの頭部を切り落とし、リリスと融合する。
  • 3 リリス+マーク6(トリガー)が第12使徒を贄にする(第2儀式の発生)。
  • 4 首無しの(知恵を失った)エヴァインフィニティが大量発生する。
  • 5 ヴィレが乱入し、2本の槍を使って儀式を中断する。

リリスとマーク6が融合した理由

 ところで、第2儀式は、リリスとマーク6が融合して起こされましたが、これは何を意味するのでしょうか。

 この点、リリスのコピーである初号機と、アダムスの中でも特別な存在である第13号機は、それぞれ単体でインパクトを起こすことができるのに対し、マーク6は、通常のアダムスであることから、単体ではインパクトのトリガーにはなれない(4体必要)と考察しています。

 通常のアダムスが4体でインパクトを起こすことの考察はこちら

 マーク6の考察はこちら

 つまり、マーク6がリリスと同化する必要があったのは、通常のアダムスであるマーク6がトリガーになるためだったと考えます。

サードインパクトでの加持の役割

 シンエヴァのヤマト作戦前のミサトの回想シーンにおいて、加持は、サードインパクトの際、ミサトに血の付いたバンダナを渡すと、「葛城、達者でな」と言ってヘリに乗り込んでいきました。

 また、Qのセントラルドグマ(サードインパクト爆心地跡)には、加持が乗ったものと思われるヘリが墜落していました。

 上記のとおり、サードインパクトは、ヴィレの改2号機と8号機によって中断されたと考えますが、その際、加持がおとりになるなどして隙を作ったのだと思われます。

 加持リョウジの目的の考察はこちら

リリスの結界

 Qのセントラルドグマ(サードインパクト爆心地跡)には、「リリスの結界」が張られていました。

 「リリスの結界」は、サードインパクトの際に張られたと考察しています。

 リリスの結界の考察はこちら

タイトルとURLをコピーしました