今回は、エヴァンゲリオンシリーズにおける、セカンドインパクトについて考察します。
セカンドインパクトは、ファーストインパクトに次ぐ地球規模の大災害です。
新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版)と新劇場版とでは、その内容が全く異なりますので、それぞれについて説明します。
新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版)
2000年9月13日に発生しました。
表向きは、南極大陸マーカム山に大質量隕石が落下し、その津波と溶けだした氷による海面上昇によって、南半球諸国合わせて20億以上の人々が死亡し、有史以来、人類の被った最大の天災と説明されていました(テレビアニメ版第7話)。
しかし、真実は、南極で発見した最初の使徒アダムについて、死海から陸揚げしたロンギヌスの槍を使って卵にまで還元しようとした際に生じた大爆発が原因でした(旧劇場版DEATH(TRUE)2冒頭)。
葛城ミサト「15年前のセカンドインパクトは人間に仕組まれたものだったわ。けどそれは、他の使徒が覚醒する前にアダムを卵にまで還元することによって被害を最小限に食い止めるためだったのよ」
旧劇場版Air
セカンドインパクトによって地球の地軸が傾き、日本は四季がなくなり常夏となりました。
新劇場版
新劇場版におけるセカンドインパクトは、新世紀版とはその内容が全く異なります。
2000年に発生:時間軸は旧作と同じ
新劇場版では、個々の事象について、具体的な年月日の記述がほとんどありませんが、時間軸は基本的に新世紀版と同様に考えてよいと思います。
碇ユイが初号機コアにダイレクトエントリーしたのが、新旧ともに西暦2004年で統一されているからです。
新世紀版(テレビアニメ版第15話、コミック第5巻)では、ユイの墓標には「1977-2004」と刻まれていましたが、新劇場版:破でも「2004」の文字が見えていました。
人為的に起こされた
破の、碇ゲンドウと冬月コウゾウが宇宙からセカンドインパクト爆心地を眺めるシーンにおいて、ゲンドウは、「だがしかし、この惨状を願った者達もいる」と言っていました。
また、シンエヴァのAAAヴンダー甲板上において、ゲンドウは、ミサトに対し、「セカンドインパクトと引き換えに自らの仮説を実証した君の父上、葛城博士の提唱した人類補完計画だよ」と言っていました。
つまり、セカンドインパクトは、人為的にコントロールされた状況下で起こされたものであると言えます。
裏で仕切っていたのは、当然ゼーレということになりますが、そうすると、葛城博士もゼーレの関係者であったと考えられます。
海の浄化:赤い海の原因
シンエヴァのAAAヴンダー甲板上において、ゲンドウは、人類補完計画について、「そうだ。セカンドインパクトによる海の浄化。サードによる大地の浄化。そしてフォースによる魂の浄化」と説明していました。
つまり、セカンドインパクトは、人類補完計画を進めるための第一歩として、海を浄化するための儀式でした。
浄化とは、赤くコア化させて生物が住めない環境にすることです。
赤い海については、破の、セカンドインパクト前の青い海を復元し生態系を保存する研究施設「国際環境機関法人 日本海洋生態系保存研究機構」における、碇シンジと加持リョウジの次の会話で説明されました。
シンジ「僕が生まれる前はこの海が青かったなんて、想像できません」
加持「こうしてヒトが生きていける環境だけでも、よくも復元出来たものさ」
シンジ「でもこの潮風って、なんだか生臭い変な臭いがしますね」
加持「海の生物が腐った匂いだ。生きていた証なのさ。あの何もない赤い水とは違う。本当の海の姿なんだよ。本来、この世界は広くて色んな生命に満ち満ちている。そのことを、君らに知っておいて欲しかったんだ」
エヴァンゲリオン新劇場版:破
爆心地:旧南極カルヴァリーベース
セカンドインパクトの爆心地は、旧南極カルヴァリーベースです。
シンエヴァのフォース(アナザー)インパクトの際の葛城ミサト「呪われたセカンドインパクトの爆心地、カルヴァリーベースか。地獄の門が再び開いている。まさか」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
旧南極とは
爆心地が「旧」南極と呼ばれている理由は、新世紀版同様、セカンドインパクトによって地球の地軸が変わり、南極の位置が変わったからであると思われます。
ヤマト作戦前のミサト「これより本艦は、フォースインパクトの不可逆的な阻止のため、旧南極爆心地跡に在留中のネルフ本部を強襲。 儀式のトリガーとなるエヴァ第13号機の無力化を目的としたヤマト作戦を決行。 これまでの全てのカオスにケリをつけます」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
カルヴァリーとは
「カルヴァリー」(Calvary)とは、イエス・キリストが磔(はりつけ)にされた「ゴルゴダの丘」の別名とされています(ゴルゴダもカルヴァリーも共に頭蓋骨、髑髏(どくろ)を意味しています。)。
セカンドインパクトの際、5体のアダムスがイエス・キリストのように磔にされたことから(後述)、「カルヴァリー」のネーミングが使用されたのだと思われます。
なお、「ゴルゴダの丘」には、アダムの墓があったとする説もあるようです。
ここから、カルヴァリーベースにはアダムがいたのではないかと考える余地もありますが、新劇場版にアダムはいないと考察しています。
儀式を起こすための基地
カルヴァリー「ベース」(base)ということは、もともとは基地だったことが分かります。
特に研究設備なども見当たらなかったことから、カルヴァリーベースは、セカンドインパクトの儀式を行うためのゼーレの基地だったと思われます。
地上絵の意味は熾天使セラフィム
カルヴァリーベースには、6枚の翼の地上絵のようなものが見えていました。
6枚の翼は、天使階級の最上位である熾天使(してんし・セラフィム)の象徴です。
私は、アダムスは熾天使をモチーフにしていると考察していますので、アダムスによって儀式を起こすための基地であったカルヴァリーベースが、熾天使の地上絵で飾られていたことには合点がいきます。
地獄の門とは
上記のミサトのセリフによれば、カルヴァリーベース中心の穴は、「地獄の門」と言うようです。
これは、「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」との絶望を示す銘文で知られる、詩人ダンテの叙事詩「神曲」に登場する「地獄の門」がモチーフになっていると思われます。
「地獄の門」に黒き月から新造した槍が挿入されると、大量のエヴァインフィニティが生じ、フォース(アナザー)インパクトが生じました。
その後、使徒化したアスカのエントリープラグをかみ砕いて擬似シン化した第13号機が、「地獄の門」の中に入っていきました。
これを見た赤木リツコは、「ガフの扉の向こうは、ヴンダーには手出しできないマイナス宇宙。残念ながら、ヴィレには補完計画を止める術はない。万事休すね」と言っていました。
リツコのセリフは、「地獄の門」を「ガフの扉」と同一視していますので、両者は同一と考えてよいと思います。
ゴルゴダベースとの関係
上記のとおり、「カルヴァリー」は、「ゴルゴダ」と同じ意味(頭蓋骨)を示す言葉です。
そうすると、「カルヴァリーベース」は、破で登場したダミープラグ(システム)を開発した「ゴルゴダベース」と関係があるようにも思えますが、直接的な関係は見出せません。
名前が似ていてややこしいですが、「地獄の門」の先のマイナス宇宙にある「ゴルゴダオブジェクト」との関係で、「ゴルゴダ」と同義の「カルヴァリー」というネーミングになったのだと思われます。
アダムス5体が投入された
爆心地の5本の十字架
シンエヴァの、ヤマト作戦による旧南極への突入シーンでは、セカンドインパクト爆心地跡に4本の十字架と1本の傾いた十字架が立っていました。
ここから、セカンドインパクトには、5体のアダムスが投入されたと考えられます。
ウルトラマンエースのオマージュ
破の、加持のセカンドインパクト回想シーンに出てくる4体の光の巨人(アダムス)は、カラータイマーの位置などから、左からゾフィー、マン、ジャック、セブンを表しているようです。
また、上記の旧南極への突入シーンにおいて、爆心地にあった5本の十字架内、1つの斜めに傾いた十字架に、ウルトラマンA(エース)のマークが見えました。
ウルトラマンAでは、マイナス宇宙にあるゴルゴダ星において、ヤプールによってマン、ゾフィー、セブン、ジャックの4人が磔にされたシーンがありますが、アダムスとセカンドインパクトの爆心地は、そのオマージュであると言われています。
インパクトの原因、方術、内容
セカンドインパクトの儀式は、どのような方術で起こされ、どのような内容だったのでしょうか。
インパクトを起こすには、儀式の主体となる存在(トリガー)と、贄(にえ)が必要です。
トリガー:光の翼を発した4体のアダムス
シンエヴァのフォース(アナザー)インパクトは、NHGネルフ戦艦4隻が、各3枚、計12枚の光の翼を発して起こされました。
これを見て、ミサトとリツコは、次のような会話をしていました。
ミサト「光の翼?セカンドインパクトと同じ方術でフォースを起こすつもりなの?」
リツコ「いえ。ガフの守り人として建造された船をトリガーには出来ないはず。それに黒き月を取り巻く事象が計画とは違う。これはゼーレのシナリオにない、私達の知らない儀式よ」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
以上の状況とセリフから、セカンドインパクトの方術を読み解くことができます。
セカンドインパクトは4体のアダムスが光の翼を発したことが分かり、リツコのセリフを逆に読むと、セカンドインパクトでは、光の翼を発した者がトリガーになったと読むことができます。
そうすると、セカンドインパクトに投入された5体のアダムスの内、4体が計12枚の光の翼を発し、トリガーになったと考えることができます。
このことは、序の破予告シーン及び破の加持リョウジのセカンドインパクト回想シーンにおいて、光の巨人(アダムス)4体のみが描写されていたこととも合致します。
残り1体が「アダムスの生き残り」
上記のとおり、セカンドインパクトには5体のアダムスが投入されましたが、トリガーになったのは4体のみです。
また、旧南極セカンドインパクト爆心地にあった5本の十字架の内、1本だけが傾いていました。
この傾いた十字架に対応する残りの1体が、「アダムスの生き残り」として、後の第13号機の素体になったと考えられます。
なお、「アダムスの生き残り」は、セカンドインパクト後、ネルフ本部付近へ運ばれ、序の冒頭で描写された白線の巨人跡を作ったと考察しています。
贄:アドヴァンスド綾波シリーズ
儀式には贄(にえ)も必要ですが、通常は使徒が贄になります。
セカンドインパクトの時点で既に存在していた可能性のある使徒は、第1使徒渚カヲル、第2使徒リリス、北極ベタニアベースで研究されていた第3使徒しかいません。
しかし、カヲルとリリスは、通常の使徒とは異なり、「神」としてトリガーとなるべき存在です。また、上記三者は、セカンドインパクト後も生存しており、贄にはなっていないと考えざるを得ません。
私は、セカンドインパクトの贄になったのは、(初代)アドヴァンスド綾波シリーズ4人であると考えます。
シンエヴァの、ネルフ本部が旧南極爆心地跡に向かうシーンにおいて、冬月は、4人のアドヴァンスト綾波シリーズについて、「フォースインパクトの要とされる黒き月の復活。そしてアダムスの器の贄となる雌雄もなく純粋な魂だけで造られたけがれなき生命体アドヴァンスド綾波シリーズの再生」と言いました。
アドヴァンスド綾波シリーズについて、アダムスの器の贄となる存在であると説明されています。また、「再生」と言っていることからして、アドヴァンスト綾波シリーズが過去にも存在していたことが分かります。
したがって、セカンドインパクトを起こした際にも、5体のアダムスにはそれぞれ(初代)アドヴァンスト綾波シリーズが搭乗していたと考えられます。
「再生」と言う以上、トリガーとなった4体のアダムスに搭乗していた4人のアドヴァンスド綾波シリーズは贄となって消滅したと思われますが、残り1体の「アダムスの生き残り」とともに、そのパイロットだったアドヴァンスド綾波シリーズの1名は生き残ったことになります。
私は、これが綾波レイ(白レイ・白波)であると考えています。
5本中、4本の槍を消費した
聖なる槍(ロンギヌス・カシウス)は、完全なインパクトを起こす際に必要となります。
インパクトのトリガーとなる存在が贄を得て覚醒するとインパクトが発動しますが、このときに槍があると完全なインパクトが発動します。
ニアサードインパクトについては、槍がない状態で発動したため、不完全な形となりました。
シンエヴァのゴルゴダオブジェクトにおいて、ゲンドウは、「ゴルゴダオブジェクトだ。人ではない何者かがアダムスと6本の槍とともに神の世界をここに残した」と言っていました。
つまり、アダムスと槍はセットになっていたと考えることができます。
マーク6の素体になったアダムスがいた月面タブハベースにおいても、アダムスの傍らには槍がありました(破)。
そうすると、セカンドインパクトに投入されたアダムス5体は、それぞれ1本ずつ槍を持っていたと思われます。
破の、加持リョウジのセカンドインパクト回想シーンでは、4体の光の巨人(アダムス)とともに、4本の槍も描写されました。
上記のとおり、セカンドインパクトは、人為的にコントロールされた状況下で起こされ、妨害する者もいなかったことから、途中で中止されることなく、完全なインパクトになりました。
そのため、トリガーとなった4体のアダムスが持っていた4本の槍は、その役目を終え、このとき燃焼、消滅したと思われます。
そうすると、残りの1体の「アダムスの生き残り」が持っていた1本の槍は、温存されたことになります。
温存された槍は、生き残った白レイが、零号機又は「アダムスの生き残り」によって、ネルフ本部地下のセントラルドグマ最深部で磔になっていたリリスの胸に刺した(ロンギヌスとして)と考えられます。
ガフの扉が開いた
破の、加持によるセカンドインパクト回想シーンにおいて、南極に黒い球体が出現する描写がありました。
あの黒い球体が「白き月」であるとの考察が見受けられますが、あれは「白き月」ではありません。
同シーンの画コンテ401改によると、黒い球体は「穴」であると書かれています。
したがって、黒い球体の出現は、ガフの扉が開いたことの描写であると思われます。
月に血のり(赤い線)を付けた
序ラストの、カヲルが月面で目覚めるシーンでは、月の表面に赤い線がありました。
破の画コンテ402I改によると、あれはセカンドインパクトの際、地球の南極点から噴き出した「血のり」が月面に付いたもののようです。
おそらく、セカンドインパクトのトリガーになった4体のアダムス達の血であると思われます。