今回は、エヴァンゲリオン新劇場版:Qにおいて、渚カヲルが第13使徒に堕とされた意味と、どのようにして落とされたのかについて考察します。
カヲルが第13使徒に堕とされた場面は、エヴァンゲリオン新劇場版:Qの中でも、とりわけ分かりにくく難解なシーンでした。
問題のシーン
まずは、問題のシーンを見ていきます。
シンジを第13号機に搭乗するよう説得する
カヲルは、第13号機が完成したところで、「時が満ちた。いよいよだね、碇シンジ君」と言うと、シンジを第13号機に搭乗するように説得します。
激しく拒絶するシンジの首からDSSチョーカーを外すと、カヲルは、自らの首に装着します。
カヲル「分かっている。リリンの呪いとエヴァの覚醒リスクは、僕が引き受けるよ」
シンジ「あ…渚君…」
カヲル「気にしなくていいよ。もともとは僕を恐れたリリンが作ったものだからね。いずれはこうするつもりだったんだ」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
そして、カヲルは、シンジに対し、セントラルドグマにある2本の槍を使い、世界を修復しようと持ち掛けます。
カヲル「碇シンジ君。君の希望はドグマの爆心地に残る2本の槍だけだ。それが補完計画発動のキーとなっている。僕らでその槍を手にすればいい。そうすれば、ネルフもフォースインパクトを起こせなくなるし、第13号機とセットで使えば、世界の修復も可能だ」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
カヲルは、第13号機で2本の槍(ロンギヌスの槍とカシウスの槍)を使い、フォースインパクトではなく、「世界の修復」を行おうとしたわけです。
具体的には、シンエヴァで碇ゲンドウが起こしたアディショナルインパクトと同じ現象(世界の書き換え)を起こそうとしていたのだと思われます(詳細は後述)。
第13号機でセントラルドグマへ向かう
カヲルとシンジは、ダブルエントリーシステムを採用する第13号機に搭乗し、サードインパクト爆心地跡であるセントラルドグマへと向かいました。
途中、「インフィニティのなり損ない達」が壁に張り付いたエリアを抜け、メインシャフトを塞いでいた「リリスの結界」を破り、セントラルドグマ最深部へと到達しました。
リリスの骸、マーク6、槍を確認する
サードインパクトの爆心地跡であるセントラルドグマ最深部には、頭部のないリリスの骸(むくろ)、それと融合しているマーク6、リリスの骸とマーク6にそれぞれ刺さった2本の槍がありました。
カヲル「着いたよ。セントラルドグマの最深部。サードインパクトの爆心地だ」
シンジ「これがリリス?」
カヲル「だったものだ。その骸だよ」
シンジ「ミサトさん…。命がけで守ってたのに…。ん?あれはエヴァ?」
カヲル「そう。エヴァマーク6。自律型に改造され、リリンに利用された機体の成れの果てさ」
シンジ「あそこに刺さってるのが、目標物?」
カヲル「そう。ロンギヌスとカシウス。2本の槍を持ち帰るには、魂が2つ必要なんだ。そのためのダブルエントリーシステムさ」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
カヲルは、2本の槍を扱うには2つの魂が必要であるため、第13号機はパイロット(魂)が2人搭乗するダブルエントリーシステムが採用されたのだと説明します。
カヲルが異変を感じる
カヲルは、セントラルドグマにあった2本の槍が、2本とも一直線の形状になっていることに気が付き、異変を感じます。
カヲル「ちょっと待って。変だ」
シンジ「どうしたの?カヲル君」
カヲル「おかしい、2本とも形状が変化して、そろっている」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
聖槍は、持ち手の意思によって形状が変化します。持ち手が絶望していればロンギヌスに、希望を持っていればカシウスへとに変わります。
しかし、セントラルドグマにあった2本の槍は、そのどちらでもない一直線の形状になっていたのです(この形状の意味は後述)。
ヴィレの妨害が入る、ゲンドウの企みに気付く
ここで、フォースインパクトを起こさせまいと、ヴィレの改2号機(式波アスカ)がセントラルドグマへ突入し、第13号機と交戦します(ヴィレは、カヲルの意思を知らず、フォースインパクトを起こすつもりだと思っている。)。
ここでカヲルは、ゲンドウが何かを企んでいることに気が付きます。
シンジ「カヲル君も手伝ってよ」
カヲル「カシウスとロンギヌス、対の槍が必要なんだ。なのにここには同じ槍が2本あるだけ…」
シンジ「カヲル君!」
カヲル「そうか!そういうことか…リリン!」(ゲンドウのカット)
エヴァンゲリオン新劇場版:Q セントラルドグマ
カヲルが反対するもシンジが槍を抜く
カヲルは、上記のとおり「そうか!そういうことか」とは言ったものの、次のセリフでは「嫌な予感がする」と言うに留まっており、ゲンドウが何かを企み、2本の槍を抜くと何らかの問題が生じることには気が付いたものの、具体的に何が起きるのかまでは把握できていませんでした。
カヲル「やめようシンジ君。嫌な予感がする」
シンジ「ダメだよカヲル君!何のためにここまで来たんだよ」
カヲル「もういいんだ…あれは僕らの槍じゃない」
シンジ「僕らの槍じゃないって…はっ…槍が必要だって、君が言ったんだ。だから僕は、エヴァに乗ったんだよ!」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
ここで、カヲルの操作系が外されます(第13号機がカヲルの操作を受け付けなくなる)。にもかかわらず、第13号機は、そのまま動き続け、4本腕を展開します。
そして、シンジは、カヲルの反対を押し切り、2本の槍を抜いてしまいます。
2本の槍は、いずれもロンギヌスの槍の形状へと変わりました(画コンテ1240には2本の槍がロンギヌスに変化すると記載されており、初めからロンギヌスの形状だったわけではありません。)。
槍が抜かれ、リリスの骸が爆ぜると、ゲンドウが、「始めよう、冬月」と言います。全てゲンドウの策略どおりの展開になっていたことが伺われます。
マーク6から第12使徒の現れる
リリスの骸が爆ぜると、マーク6が分離します。
分離したところで、マーク9(黒レイ)が、マーク6の首を切り落とすと、中から第12使徒が現れ、第13号機を包み込みます。
すると、第13号機の肩から翼が生えてきます(画コンテ1278の表現)。第13号機の擬似シン化が始まった描写といえます。
また、カヲルのDSSチョーカーが反応し、カヲルの使徒化も始まります(画コンテ1326では「半使徒化」と表現)。第1使徒だったカヲルが、第13使徒になってしまいます。
カヲル「まさか第1使徒の僕が、13番目の使徒に堕とされるとは…」
シンジ「何を言っているの?カヲル君」
カヲル「始まりと終わりは同じというわけか。さすがリリンの王、シンジ君の父上だ」
真希波マリ「DSSチョーカーにパターン青?ないはずの13番目?ゲンドウ君の狙いはこれか」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
ゲンドウの契約改定
ここで、冬月コウゾウがゼーレのモノリスの電源を順々に落とす中、ゲンドウは、「死海文書の契約改定の時」だと言います。
「死海文書の契約」とは、「リリスとの契約」と同義であると考えます。
ゼーレは、電源を切られることによって死亡しますが、これを受け入れます。
ゲンドウ「死海文書の契約改定の時が来ました。これでお別れです。あなた方も魂の形を変えたとはいえ、知恵の実を与えられた生命体だ。悠久の時を生きることはできても、我々と同じく、訪れる死からは逃れられない。死を背負った群れの進化を進めるために、あなた方は我々に文明を与えてくれた。人類を代表し感謝します。死をもって、あなた方の魂をあるべきところに返しましょう。宿願たる人類補完計画と、諦観された神殺しは、私が行います。ご安心を」
ゼーレ01「我らの願いは既にかなった。よい。全てこれでよい。人類の補完、安らかな魂の浄化を願う」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
なお、このときのゲンドウは、宙に浮いていました。つまり、既にネブカドネザルの鍵を使用して人外化していたことが分かります。
第13号機が第12使徒を吸収し擬似シン化
第13号機は、胎児のような姿になった第12使徒を噛み砕き吸収する(贄にする)と、「擬似シン化第3+形態(推定)」の姿になりました。
アスカ「こいつ、擬似シン化形態を超えている」
マリ「覚醒したみたいね。アダムスの生き残りが」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
擬似シン化した第13号機が上昇し、「インフィニティで作られた塔」(Q画コンテ1308の表現)を突き破って新ネルフ本部上空まで行くと、ガフの扉が開きます。
(ニア)フォースインパクトが始まる
その後、黒き月が地中からせり上がり、(ニア)フォースインパクトが始まります。
ここで、カヲルのDSSチョーカーは、爆発寸前の状態にまでなります。
シンジ「僕のせいなのか?僕が槍を抜いたから…これって」
カヲル「フォースインパクト。その始まりの儀式さ」
シンジ「カヲル君。首輪が!」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
カヲルがDSSチョーカーで死亡する
その後、DSSチョーカーが起爆し、カヲルは死亡してしまいます(厳密に言うとカヲルは真空崩壊以外では消えないので、肉体が滅びたという状態です。)。
上記のとおり、カヲルは第13使徒にされてしまいましたが、インパクト(儀式)の贄(にえ)としてではなく、トリガーとして利用されました。
カヲル「君のせいじゃない。僕が第13の使徒になってしまったからね。僕がトリガーだ」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
冬月「ひどい有様だな。ほとんどがゼーレのもくろみ通りだ」
ゲンドウ「だがゼーレの少年(カヲル)を排除し、第13号機も覚醒へと導いた。葛城大佐の動きも計算内だ。今はこれでいい」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q (ニア)フォース後
ゲンドウの策略と第13使徒に堕とした方法
以上によれば、(ニア)フォースインパクトを起こしつつ、カヲルを第13使徒に堕として殺害したのは、全てゲンドウの策略だったことが分かります。
では、ゲンドウ(ネルフ)は、どのような方法を用いてカヲルをハメたのでしょうか。
手順1 カヲルにDSSチョーカーを装着させ第13号機に乗せる
ゲンドウは、「ゼーレの少年」、つまり(一応は)ゼーレ側の立場にいるカヲルについて、拘束したり、具体的な指示をすることなく、泳がせていました。
ゲンドウ「エヴァンゲリオン第13号機。お前(シンジ)とそのパイロット(カヲル)の機体だ」
シンジ「さっきの、ピアノの?」
ゲンドウ「時が来たら、その少年とこのエヴァに乗れ。話は終わりだ」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q シンジとゲンドウの再会シーン
ゲンドウは、カヲルにはフォースインパクトを起こす気がないことを知っていたと思われます。
しかし、ゲンドウは、カヲルの人格を熟知し、カヲルが世界を修復させるためにシンジと共に第13号機に乗るであろうこと、シンジを説得するために自らDSSチョーカーを装着するであろうことを確信していたと思われます。
手順2 シンジに絶望を与える
ゲンドウと冬月(ネルフ)は、シンジが絶望することを望んでいたと考えます。これは、次のことから伺えます。
- シンジに対し、シンジのせいで犠牲になったかもしれない同級生「鈴原トウジ」の名札を付けたままのワイシャツを差し入れたこと。
- カヲルがシンジにサードインパクト後の惨状を見せたことを監視していたこと(下記セリフ)。
- 冬月が、シンジに対し、将棋をしながら、碇ユイが消えたことや綾波レイを救出できなかったことなどの真実を伝えたこと。
冬月「ゼーレの少年が第3の少年(シンジ)と接触。外界の様を見せたようだ。はたしてどう受け止めるのか…」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
では、ネルフは、なぜシンジに絶望を与えようとしていたのでしょうか。
カヲルは、2本の槍を、絶望の槍ロンギヌスと希望の槍カシウスとして使用し、アディショナルインパクトと同じ現象(世界の書き換え)を起こそうとしていたと思われます。
ゲンドウ「絶望と希望の槍が、互いにトリガーと贄となり、虚構と現実が溶け合い、全てが同一の情報と化す。これで自分の認識、すなわち、世界を書き換えるアディショナルインパクトが始まる。私の願いが叶う、唯一の方法だ」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 アディショナルインパクト
これに対し、ネルフは、フォースインパクトを起こそうとしていました。
しかし、2本の槍がロンギヌスとカシウスになってしまうと、上記のとおりアディショナルインパクトと同じ現象が生じてしまいますので、ネルフとしては、2本とも確実にロンギヌスの槍にする必要がありました。
上記のとおり、聖槍は、持ち手の意思によってその形状が変わります。
ネルフは、2本の槍の内、シンジの持つ槍が必ずロンギヌスになるよう、事前に絶望を与えていたと考えられます(もう1本のロンギヌスについては後述)。
手順3 密かにオリジナルアスカを搭乗させておく
上記のとおり、シンジの持つ槍をロンギヌスにできたとしても、もう1本の槍をカヲルがカシウスに出来てしまえば、やはりフォースインパクトを起こすことができません。
そこで、ネルフは、第13号機に、密かに、絶望する3人目のパイロット(魂)を搭乗させていたと考えます。
槍を扱うには1本につき1つの魂が必要ですが、上記のとおり、リリスの骸から2本の槍を抜く直前、カヲルの操作系が外されたにも関わらず、第13号機はそのまま動き続け、2本の槍を抜くことができました。
また、カヲルが(ニア)フォースインパクトを止めるために自ら2本の槍を第13号機に突き刺しましたが、マリがシンジのエントリープラグを強制射出するまで、第13号機の覚醒が止まりませんでした。
マリ「ガフの扉がまだ閉じない!ワンコ君がゼーレの保険か!」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
これらの現象は、3人のパイロット(魂)が搭乗していなければ説明できないと思います。
そして、この3人目のパイロットは、シンエヴァで登場したオリジナルアスカであると考えます。
カヲルの操作系を外したことで、残り2人のパイロットであるシンジとオリジナルアスカの絶望によって、2本とも絶望の槍ロンギヌスになってしまったということです。
手順4 第12使徒の存在を内緒にしておく
カヲルは、マーク6の中に第12使徒がいることを知らなかったようです。
カヲルは、上記のとおり、「嫌な予感がする」とだけ言い、マーク6から槍を抜いてしまうと、第12使徒が復活するという具体的な予測ができていませんでした。
ゲンドウは、フォースインパクトの贄(にえ)とするために、第12使徒を復活させる必要がありました。そのため、第13号機に槍を抜かせなければなりませんでした。
ゲンドウは、第13号機に槍を抜かせるため、カヲルにはマーク6の中に第12使徒がいる(しかも生き残っている)ことを知らせていなかったと思われます。
2本の槍の形状が揃っていたことの意味
ところで、カヲルは、上記のとおり、セントラルドグマにあった槍が2本とも一直線の形状になっていたことについて、疑問を感じていました。
カヲル「おかしい、2本とも形状が変化して、そろっている」
途中省略
カヲル「カシウスとロンギヌス、対の槍が必要なんだ。なのにここには同じ槍が2本あるだけ…」
途中省略
カヲル「もういいんだ…あれは僕らの槍じゃない」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
カヲルにとっては、何が意外だったのでしょうか。
(ニア)フォースインパクトを止めるために、カヲルが自ら第13号機のコアに刺した槍は、2本とも一直線の形状に変わりました。
つまり、少なくともロンギヌスの槍は、対象のコアを貫く際、一直線の形状に変わることが分かります(破のラストで初号機を貫いたカシウスの槍は、形状が変化しませんでした。)。
他方、コアに魂が入っていない場合は、ただの物を刺したと同じ状態であって、槍の形状が変わることもないのだと考えられます。
カヲルは、マーク6について、そう。エヴァマーク6。自律型に改造され、リリンに利用された機体の成れの果てさ」とだけ言っており、上記のとおり、中に第12使徒がいることを知らなかったようです。
つまり、カヲルは、リリスに刺した槍の形状が一直線になることはよいとしても、自律型のマーク6には魂(パイロット)がないため、刺しても槍の形状が一直線に変わるはずがないと思ったのではないでしょうか。
ところが、実際はマーク6の中に第12使徒(魂)がいたため、槍が2本とも一直線の形状に変わっていました。第12使徒がいることを知らなかったカヲルにとっては、怪しい状況だったというわけです。
これが、2本の槍が一直線だったことについて、カヲルが感じた疑問の中身であると考えます。
手順5 擬似シン化による第13使徒化
第13号機は、カヲルの不意を突いて現れた第12使徒を贄(にえ)として、覚醒、擬似シン化しました。
この点に関連し、私は、ニアサードインパクトの際、擬似シン化した初号機とそのパイロットであったシンジが一体となり、第11使徒になったと考察しています。
つまり、擬似シン化すると、その魂に相当するパイロットもが1体となって使徒化すると考えています。
これと同じことがカヲルにも起きたと考えます。
つまり、擬似シン化した第13号機と一体となり、そのパイロット(魂)であるカヲルも第13使徒になったということです。
なお、擬似シン化にはパイロットの覚醒が必要となります。上記のとおり、第13号機にはオリジナルアスカも密かに搭乗していたと考えますので、オリジナルアスカが覚醒の役割を果たしていたと思われます。
したがって、オリジナルアスカも同様に、一体となって第13使徒化したと思われます。
まとめると、第13使徒になったのは、擬似シン化した第13号機+カヲル+オリジナルアスカであると考えます(もっとも、リリスとの契約を改定し、殲滅の対象とした使徒はカヲルのみ。詳細は後述)。
手順6 ネブカドネザルの鍵を使い契約改定する
カヲルが第13使徒化した流れは上記のとおりと考えますが、そもそもカヲルは第1使徒でした。
第1使徒のカヲルを覚醒させても、第1使徒として覚醒するだけではないのかという疑問が生じます。
この点については、ネブカドネザルの鍵が関係していると考えます。
冬月がシンジと将棋をした後、ゲンドウが「最後の契約の時が来る。もうすぐ会えるな…ユイ」と言ったシーンにおいて、ゲンドウは、ネブカドネザルの鍵の入ったアタッシュケースを手に持っていました(画コンテ882では、ケースでなくネブカドネザルの鍵そのものを持っていることになっていました。)。
その後、上記のとおり、ゼーレとの最後の会話シーンにおいては、ゲンドウは宙に浮いており、この時点で既にネブカドネザルの鍵を使用して人外化していたことが分かります。
ネブカドネザルの鍵を使用したことにより、ゲンドウは、肉体的(ハード)にも内面的(ソフト)にも人外化し、第1使徒と同等の地位になったと考察しています。
これにより、ゲンドウは、もともとの契約当事者であったゼーレに変わり、第2使徒リリスとの契約を改定することができる立場になったということです。
このことは、ゲンドウが、ゼーレに対し、上記のとおり、「死海文書の契約改定の時が来ました。これでお別れです」と言ったことに現れています。
ゲンドウは、もともと「第3~第12使徒の計10体を殲滅する」としていた契約を、「第11使徒を殲滅するのではなく、代わりにカヲルを第13使徒として扱い殲滅する」と改定したものと考えます。
13番目の使徒に堕とした理由、必要性
ゼーレやネルフは、人類補完計画を遂行するため、「リリスとの契約」に従い、予言通りに襲来する使徒を10体殲滅する必要がありました(使徒を10体殲滅することは「リリスとの契約」の一部)。
以上のことは、序における次のセリフから読み取ることができます。
第4使徒戦後のゼーレ:01「第4の使徒襲来とその殲滅。そして3番目の子供の接収及びエヴァ初号機の初起動。概ね既定どおりだな」06「使徒殲滅はリリスとの契約のごく一部にすぎん」01「人類補完計画。その遂行こそが我々の究極の願いだ」
第6使徒戦におけるゲンドウと冬月:ゲンドウ「いかなる手段を用いても我々はあと8体の使徒を倒さねばならん」冬月「全てはそれからか」※
エヴァンゲリオン新劇場版:序
※ 上記ゲンドウと冬月の会話は、既に第4、第5の使徒を殲滅した後の第6使徒戦におけるものなので、「あと8体」ということは全部で10体(第3~第12使徒)ということになります。
上記のとおり、私は、第11使徒は擬似シン化した初号機+シンジであると考えていますが、ゲンドウは、アディショナルインパクトを起こす際に初号機を必要としていましたので、初号機を第11使徒として殲滅するわけにはいきませんでした。
第11使徒を殲滅しないまま人類補完計画を遂行するには、上記のとおり、新たな使徒(第13使徒)を出現させ、それを殲滅対象にするよう「リリスとの契約」を改定する必要があったということであると考えます。