新劇ゼーレ会議メンバーの正体とは メソポタミア神話アヌンナキ

 今回は、エヴァンゲリオン新劇場版における、ゼーレの正体、設定、モチーフについて考察します。

ゼーレ(SEELE)の概要

 ゼーレとは、ドイツ語で「魂」を意味します。

 会議のメンバーは、新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版)では人の姿をした(モノリスでも登場)12人でしたが、新劇場版では7人に変わっており、モノリスの姿でのみ登場しました。

 ゼーレの目的は、人類補完計画を遂行することです。

 人類補完計画の考察はこちら

 その正体については、コミック第5巻で、加持リョウジが碇シンジに対し、説明していました。おそらくこの設定は、劇中の描写を見る限り、新劇場版においても大差ないと思われます。

 加持による説明の概要は、次のとおりでした。

  • ゲンドウ(ネルフ)のバックに付いている組織
  • 古より世界を裏で動かしている権力者の集団
  • ネルフの資金を出している
  • 死海文書を所有し教典としている

ゼーレのシンボルマーク

 ゼーレのシンボルマークは、逆三角形、7つの目、リンゴ、蛇によって構成されています。

 7つの目は、「ヨハネの黙示録」の「黙示録の仔羊」に由来すると言われています(次の画像)。

黙示録の仔羊

 上記画像 黙示録の仔羊 – Wikipedia

 リンゴと蛇は、「善悪の知識の木の実」(知恵の実)と、それをイブ(エヴァ)に食べるよう唆した蛇を意味しているものと思われます。

 ゼーレのシンボルマークは、人類(リリン)に知恵(科学)を与えた存在であることがイメージされているのではないでしょうか。

ゼーレは地球外生命体(宇宙人)

 おそらく、破の脚本段階までは、ゼーレの会議メンバーも人類(リリン)の一員という設定だったのではないかと思われます。

 破の、アスカが第9使徒の浸食を受けた後の画コンテ1252において、ゼーレは、「そしてエヴァを触媒とし我ら人類との融合の可能性も見出せた」と言うことになっていたからです。

 「我ら人類」と言っている以上、ゼーレも人類という設定だったと考えるのが自然です。

 しかし、その後(Q以降)、ゼーレは地球外生命体という設定に変わったものと思われます。その根拠は、以下のとおりです。

根拠1:人類に文明を与えた存在

 Qの、渚カヲルが第13使徒に堕とされた後のシーンにおいて、ゲンドウは、ゼーレに対し、次のとおり述べ、ゼーレが地球外生命体であるような表現が使われました。

 ゲンドウ「あなた方も魂の形を変えたとはいえ知恵の実を与えられた生命体だ。悠久の時を生きることはできても我々と同じく訪れる死からは逃れられない。死を背負った群れの進化を進めるためにあなた方は我々に文明を与えてくれた。人類を代表し感謝します。死をもってあなた方の魂をあるべきところに返しましょう。宿願たる人類補完計画と諦観された神殺しは私が行います。ご安心を」

エヴァンゲリオン新劇場版:Q

 ゼーレがゲンドウと同じく人類(リリン)なのであれば、「我々に文明を与えてくれた」「人類を代表し感謝します」などとは言わないと思います。

 なお、同シーンの画コンテ1282では、ゲンドウは、「これまで人類を永きに渡り導いていただきご苦労様でした」と言うことになっていました。

根拠2:人外未知の科学力を持つ

 シンエヴァ冒頭のパリでは、「ユーロネルフ第1号封印柱復元オペ」が行われました。これは、ユーロネルフ施設のコア化を回復させるため、封印柱を復旧し、「アンチLシステム」を起動するための作業(オペレーション)でした。

 コア化の考察はこちら

 当該作業中、伊吹マヤは、封印柱について、次のように言っていました。

 「エヴァ同様、人外未知の未解明システムですもの。人類の言語じゃ楽に制御できないわよ」

シン・エヴァンゲリオン劇場版

 「人外」とは、人類の外側のことです。

 また、本来は人類以外の言語によって制御されていたことがわかります。

 つまり、エヴァも封印柱も、使ってはいるもののその仕組みは分かっていないということです。

 元ネルフの幹部科学者であった赤木リツコが一緒にいても分からなかったということは、エヴァや封印柱のテクノロジーは、ゼーレのものとしか考えられません。

 ゼーレが人外未知の技術を持っていたことが、ゼーレが地球外生命体であることの根拠の1つとなります。

 なお、第3村のコア化を防いでいた「相補性L結界浄化無効阻止装置」も、封印柱と同様の技術であると思われます。

根拠3:悠久の時を生きる長寿命

 上記のとおり、Qでゲンドウは、ゼーレに対し、「あなた方も魂の形を変えたとはいえ知恵の実を与えられた生命体だ。悠久の時を生きることはできても我々と同じく訪れる死からは逃れられない」と言っていました。

 「悠久の時」とは、果てしなく長い時という意味です。

 どのくらいなのかは明言されていませんが、少なくとも、人類よりはるかに長い寿命を持っていると思われる表現です。

 人類よりも寿命が長いということが、ゼーレが人類でないことの根拠の1つとなります。

設定・元ネタ・モチーフ

 新劇場版におけるゼーレの設定は、以下に述べるとおり、様々なモチーフが組み合わされていると思われます。

メソポタミア神話のアヌンナキ

 モチーフの1つとして、メソポタミア神話の「アヌンナキ」(Anunnaki)が考えられます。

 メソポタミアとは、ギリシア語で「川の間」を意味し、ティグリス川とユーフラテス川に挟まれた地域(現在のイラク、シリア北東、トルコ南東)を指します。

 アヌンナキとは、古代メソポタミアの神話に登場する神々のことを言います。

 以下は、ヒストリーチャンネル「古代の宇宙人」シーズン5エピソード12「アヌンナキの痕跡」から得た情報です。興味があればご覧下さい。

 メソポタミア文明とは、古い順にシュメール、アッカド、古代バビロニア、アッシリアの文明とされています。

 シュメールは、紀元前3000年から4000年頃に繫栄した、人類初の文明と言われています。

 シュメールには、農業、化学、薬学、法律、裁判官、学校が作られるなど、高度な文明が突如として築かれたとされています。

 当時の情報として、粘土板に楔形(くさびがた)文字を刻んだ文書が多数残されています。

 文書には、アヌンナキ(天から降り立った人々の意味)という神の集団のことについても記されているようです。

 それらによれば、アヌンナキは、何百年、何千年もの長い年月を生き、この世界のことを広く深く知る強大な存在であったようです。

 古代宇宙飛行士説(古代に宇宙人が地球に飛来し文明を授けたとする学説)からは、アヌンナキが地球外生命体であったと考えるようです。

 そして、アヌンナキは、高度な遺伝子工学を持っており、DNA操作によって従順な労働者として人間を作りだしたとする説もあるようです。

 また、楔形文字の記された粘土板を解読したとされる研究者ゼカリヤ・シッチンの著書「謎の第12惑星」には、神と呼ばれた者アヌンナキについて、実際は地球を訪れた宇宙人であり、45万年より前にメソポタミアに降り立ったと書かれているようです。

 アヌンナキは、故郷である惑星ニビルの大気に穴が開いたため、その穴を防ぐための金を採掘する目的で地球に来たものの、採掘の重労働に嫌気がさし、自分達の代わりに労働させるため、人類を進化させて奴隷にしたというのです。

 さらに、アヌンナキは、人類を滅亡させた大洪水にも関わっていると言われています。

 シュメール神話では、騒がしくなった人間を滅ぼすために神(アヌンナキ)エンリルが洪水を引き起こしたが、その兄弟のエンキがこれに反対し、人間に方舟を作るよう伝えたとされています。

 以上のとおり、アヌンナキには、長寿命で優れた科学技術を持つ地球外生命体であること、人類を人工的に進化させたこと(インパクト)、人類を自分たちの代わりに働く労働者としたこと(ネルフ)、人類に文明を授けたこと、洪水から逃れる方舟(AAAヴンダー)を造るように指示したことなど、ゼーレとの共通点が多々見受けられます。

ふしぎの海のナディアのアトランティス人

 もう1つのモチーフとして、エヴァと同じ庵野監督の作品である「ふしぎの海のナディア」に登場する「アトランティス人」が考えられます。

 アトランティス人については、第31話において、衛星都市レッドノア内でロボットがナディアに説明しています。

 その説明によると、アトランティス人は、240万年前にM78星雲から来て地球に不時着した異星人であり、母星に帰ることができなくなったため、地球に文明を築きましたが、科学を使って醜い戦争を繰り返し、滅びてしまったようです。

 また、第19話においては、アトランティス人が何万年も前に南極大陸の地下大空洞内に建造した基地が描かれました。

 超科学を持った宇宙人が地球に来て文明を築いたり、地下大空洞内に基地を建造したという設定が、ゼーレを彷彿とさせます。

 さらに、ナディアが持っていたブルーウォーター(賢者の石:トリスメニストス)や、レッドノアの祭壇の周りには、封印柱などに見られる「使徒封印用呪詛文様」とよく似た模様が描かれていました。

 この点からも、ゼーレとアトランティス人との類似性が見出せます。

フリーメイソン

 その他、ゼーレは、実在する秘密結社「フリーメイソン」がモチーフになっているとも言われています。

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