新劇第12使徒の正体とマーク6との関係とは

 今回は、エヴァンゲリオン新劇場版:Qで登場した第12使徒の正体とエヴァマーク6(Mark.06)との関係について考察します。

第12の使徒

第12使徒はマーク6の中にいた

 第12の使徒は、Qのセントラルドグマにおいて、碇シンジと渚カヲルの乗った第13号機が、リリスの骸とマーク6にそれぞれ突き刺さった2本の槍を引き抜いた後、リリスの骸より分離したマーク6の中から現れました。

 リリスから分離した後、うねうねと動き、バイザーが赤く光り出したマーク6に対し、式波アスカが「まずいっ!第12の使徒がまだ生き残ってる」と言ったことから、マーク6の中にいたのが第12使徒だったことは間違いありません。

 アスカが「サードインパクトの続きが始まる前に、こいつを片付ける!」と言って、改2号機で攻撃しようとした瞬間、黒レイ(黒波)が「これが命令」と言って、マーク9の大鎌でマーク6の首を切り落とすと、その断面からコードの束のような第12使徒が出てきました。

 なお、同シーンの画コンテ1258では、第12使徒が出た後のマーク6について、「中はガランドウ(ウエットスーツみたく)」とされていました。第12使徒が出た後のマーク6は、抜け殻のようになったのだと思われます。

第12使徒は全身コアの浸食タイプ

 Qの(ニア)フォースインパクトの第12使徒が第13号機を包み込むシーンにおいて、第12使徒に対するアスカの改2号機による攻撃が全く効かなかったことについて、真希波マリは次のように言いました。

 マリ「姫。ムダ弾はやめときなよ。あれ全部コアだから。私らじゃ手の打ちようがにゃいよん。それに最後の使徒を倒したところで鬼が出るか蛇が出るか気になるじゃ」

エヴァンゲリオン新劇場版:Q

 ここから、第12使徒は全身がコアであることがわかります。

 全身コアとは、マーク9などと同じで、液体のように自由自在に形を変え、破壊困難(あるいは不可能)なタイプを言います。

 また、改2号機の攻撃に対し、第12使徒はATフィールドを発生させませんでした。

 ここから、第12使徒は、「浸食タイプ」の使徒であると思われます。

 「浸食タイプ」とは、心の壁であるATフィールドを持たず、他者を浸食して乗っ取ろうとするタイプの使徒です(他人の心の中に土足で入りこむイメージ)。劇中で「浸食タイプ」と明言されたのは、アスカに浸食した第9使徒です。

 対して、ATフィールドを展開して他者を拒絶するのが「拒絶タイプ」です(心の中に入り込もうとする他人を拒むタイプ)。劇中で「拒絶タイプ」であることが明言されたのは、破で登場した「最強の拒絶タイプ」である第10使徒です。

 ATフィールドの考察はこちら

第12使徒はいつからいたのか

 第12使徒は、いつからセントラルドグマ内にいたのでしょうか。

 Qの、第13号機がセントラルドグマに降下するシーンにおいて、カヲルは、「もうすぐリリスの結界だ。メインシャフトを塞いでいてこの14年間誰の侵入も許していない」と言っていました。

 そうすると、第12使徒がセントラルドグマに侵入できたのは、14年前に「リリスの結界」が張られた時点よりもさらに前ということになります。

 ところで、Q冒頭のUS作戦後、アスカは、初号機の中から救出されて状況を飲み込めないシンジに対し、「あれから14年経ってるってことよ」と言いました。

 「あれ」とは、シンジが初号機と同化したニアサードインパクトのことです。

 そして、ニアサードインパクト以前に「リリスの結界」が張られた描写はありませんでした。

 したがって、「リリスの結界」は、ニアサードインパクトから間もなくして(長くても1年以内に)張られたことになります(ニアサードインパクトも「リリスの結界」が張られたのも同じ「14年前」だから)。

 リリスの結界の考察はこちら

 では、このわずかな期間に何があったのでしょうか。

 サードインパクトです。

 第12使徒は、サードインパクトの際にセントラルドグマに侵入したものと思われます。

 サードインパクトの考察はこちら

第12使徒はマーク6と融合して侵入した

 第12使徒は、どのような手段でセントラルドグマに侵入したのでしょうか。

 序の、ダイヤモンドのような第6使徒戦で、葛城ミサトは、シンジをセントラルドグマに連れて行く際、次のように言っていました。

 ミサト「私達がネルフ本部レベルEEE(トリプルイー)への使徒侵入を許すと、ここは自動的に自爆するようになっているの。たとえ使徒と刺し違えてでも、サードインパクトを未然に防ぐ。その覚悟を持ってここにいる全員が働いているわ」

エヴァンゲリオン新劇場版:序

 つまり、第12使徒が単純にセントラルドグマへ降りて行ったとすれば、ネルフ本部は自爆していたはずです。

 第12使徒は、ネルフ本部が自爆することを避けつつ、セントラルドグマまで到達したのです。

 では、どのような方法でセントラルドグマに到達したのでしょうか。

 破に参考となるシーンがあります。「最強の拒絶タイプ」第10使徒が零号機を捕食、融合した際、次のようなやりとりがありました。

 赤木リツコ「まさか!使徒がエヴァを捕食するなんて。あり得ないわ!」

 伊吹マヤ「変です。目標の識別信号が零号機に切り替わります。」

 ミサト「やられた。これで奴がドグマに侵入しても自爆しない。リリスに苦もなく辿り着けるわ」

 マリ「零号機と融合してる。パイロットごと吸収してしまったんだ」

エヴァンゲリオン新劇場版:破

 第10使徒が零号機と融合すれば、セントラルドグマの自爆機能が働かず、苦も無くリリスにたどり着けるというのです。

 これと同じようなことがサードインパクトの際にも行われたものと思われます。

 つまり、第12使徒は、マーク6と融合した状態でセントラルドグマへ降りて行ったのだと考えられます。

 破のQ予告(つまり、ニアサードインパクトの後)では、マーク6がセントラルドグマに投下される描写がありました。

 Qでネルフ本部が健在である(自爆していない)ことからすると、このとき既にマーク6と第12使徒は融合していたはずです。

 時系列を整理すると次のとおりです(4が基準時)。

  •  1 ニアサードインパクト(14年前。破のラスト)
  •  2 第12使徒とマーク6が融合(14年前)
  •  3 第12使徒とマーク6がセントラルドグマに侵入、サードインパクト発生、リリスの結界が張られる。(14年前)
  •  4 第13号機がリリスの結界を破る(Qの(ニア)フォースインパクトの前)

マーク6(月面の巨人)は第12使徒ではない

 以上に対し、マーク6(月面タブハベースにいた白い巨人)自体がはじめから第12使徒だったと考える余地もあります。しかし、違うと思います。

 マーク6自体が第12使徒だったのであれば、やはりセントラルドグマに入った瞬間にネルフ本部は自爆してしまうはずだからです(もっとも、14年後に第12使徒がマーク6から分離した際にはセントラルドグマの自爆装置は機能していなかったようです。)。

 また、「真のエヴァンゲリオン」と呼ばれていたマーク6が使徒だったというのもしっくりきません。

 この点につき、私は、マーク6(月面タブハベースにいた白い巨人)はアダムスの1体であると考察しています。アダムスは使徒ではありません。

 マーク6がアダムスの1体であることの考察はこちら

 アダムスが使徒でないことの考察はこちら

 マーク6=第12使徒ではなく、上記のとおり、マーク6と第12使徒が融合した上で、セントラルドグマのレベルEEE(トリプルイー)に侵入したのだと考えます。 

第12使徒とマーク6の融合はゼーレのシナリオ

 では、誰が何のために、第12使徒とマーク6を融合させ、セントラルドグマに降下させたのでしょうか。

 破のアスカが第9使徒に浸食されたシーン後の画コンテでは、ゼーレが次のように言うことになっていました。

 ゼーレ「エヴァ3号機は予定通り第9使徒の依り代としての役目を終えた」「予測通りエヴァと使徒の融合は可能であったな」「そしてエヴァを触媒とし我ら人類との融合の可能性も見出せた」「希望は実現しつつある。失った人柱の犠牲にも報いねばならん」「過酷すぎるな」「そのための子供たちだ。人には全うすべきそれぞれの役がある」「群体としての人類。種全体が生き残るための個々の役割か」「我らは個体では生きていけない」「その業と原罪を超えるための人類補完計画なのだ」

エヴァンゲリオン新劇場版:破 画コンテ1251以下

 「依り代」(よりしろ)とは、神霊が依り憑く(よりつく)対象物のことです。

 上記セリフによれば、ゼーレは、始めからと第9使徒を3号機と融合(浸食)させ、さらに3号機を通じて第9使徒とアスカをも融合させようとしていたのです。

 第9使徒の考察はこちら

 ゼーレの目的は、言うまでもなく人類補完計画です。

 人類補完計画の考察はこちら

 人類補完計画のためにはインパクトを発生させることが不可欠であり、インパクト(儀式)を発生させるためには使徒の贄(にえ)が必要です。

 エヴァは(一応)コントロールできていますし、リリスはロンギヌスの槍で封印できていました。

 制御できていなかったのは、使徒だけです。

 ゼーレは、贄となる使徒をエヴァと融合させることでコントロールし、ゼーレのタイミングでサードインパクトを起こそうと思っていたのではないでしょうか。

サードと(ニア)フォースの贄となった

 上記のゼーレのもくろみどおり、第12使徒は、サードインパクトの贄(にえ)となりました。

 このことは、Qのセントラルドグマにおいて、アスカが、「まずい!第12の使徒がまだ生き残ってる」「サードインパクトの続きが始まる前にこいつを片付ける!」と言っていたことから分かります。

 さらに、Qの劇中において、第12使徒は、第13号機に取り込まれ、(ニア)フォースインパクトの贄にもなりました。

 つまり、第12使徒は、サードインパクトと(ニア)フォースインパクトの2つの儀式において贄になったことになります。

 フォース(アナザー)インパクトの考察はこちら

第12使徒が綾波レイの顔になった理由

 Qの(ニア)フォースインパクトにおいて、第12使徒は、第13号機を取り込もうとした際、多数の笑い声とともにアヤナミ顔になりました。

 これに対し、黒レイ(黒波)は、「これは私?私は何?」と言っていました。

 そして、この時のマーク9のエントリープラグ内には、しれっとゼーレのマークが出現しました。

 マーク9の制御が、黒レイ(黒波)からゼーレの直接コントロールに切り替わったのだと思います。

 第12使徒がアヤナミ顔になったのも、第12使徒をゼーレが制御していることを意味していたものと思われます。

 つまり、上記の画コンテにおけるゼーレのセリフによると、第9使徒を制御するためにアスカと融合させましたが、これと同じように、第12使徒を制御するために綾波タイプと融合させていたものと考えられます。

 このことは、シンエヴァのフォース(アナザー)インパクトの際の次のセリフからも読み取れます。

 ミサト「そのためにアスカを使い捨てるか」

 ゲンドウ「綾波と式波型パイロットはもとよりこのために用意されていたものだ」

シン・エヴァンゲリオン劇場版
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