今回は、AT(エーティ)フィールドの意味とコアとの関係、LCLの意味等について考察します。
ATフィールドの意味とは
ATフィールドとは、Absolute Terror Field(アブソルートテラーフィールド:絶対恐怖領域)の略語です(旧劇場版パンフレット)。
展開すると、外部の攻撃から身を守るバリアのような役割を果たします。
心の壁 恐怖・拒絶のバリア
ATフィールドは、「心の壁」であり、人類(リリン)も皆それぞれ持っているようですが、その力は非常に弱く、可視化することもできません。
他方、エヴァや使徒であれば、そのエネルギーは強大なものになり、他者からの攻撃を防ぐ強力なバリアになります(通常兵器はほぼ無効化される。)。
渚カヲル「何人にも侵されざる聖なる領域。心の光。リリンも分かっているんだろ?ATフィールドは誰もが持っている心の壁だということを」
テレビアニメ版 第24話
「心の壁」とは、他者を恐れ、拒絶する心のバリアを意味するものと思われます。
シンエヴァで、新2号機が第13号機に停止信号プラグを差し込もうとしたシーンでは、新2号機が第13号機に怯え、自らのATフィールドが発生し、プラグ差し込みの妨げになってしまいました。
式波アスカ「ATフィールド?第13号機はATフィールドを持たないはずなのに、なんで?これって、このエヴァ自身のATフィールド?新2が13号機に怯えているっていうの?」
シン・エヴァンゲリオン劇場版
また、シンエヴァの碇ゲンドウの補完シーンでは、シンジが近づくとATフィールドが発生し、ゲンドウは、「ATフィールド?人を捨てたこの私に?まさか、シンジを恐れているのか?この私が」と言っていました。
自他の境界線
ATフィールドは、自分と他者とを分ける境界線でもあります。
ATフィールドを失うと、その肉体は液状化(リリンであればLCL化、使徒であれば形象崩壊)し、個体の形を維持できなくなってしまいます。
シンジ「父さんは何を望むの」
ゲンドウ「お前が選ばなかったATフィールドの存在しない全てが等しく単一な人類の魂だけの世界。他人との差異がなく貧富も差別も争いも虐待も苦痛も悲しみもない浄化された魂だけの世界。そしてユイと再び会える安らぎの世界だ」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 アディショナルインパクト
ゲンドウ「アダムはすでに私と共にある。ユイと再び会うにはこれしかない。アダムとリリスの禁じられた融合だけだ。時間がない。ATフィールドがお前の形を保てなくなる。始めるぞ、レイ。ATフィールドを、心の壁を解き放て。欠けた心の補完。不要な体を捨てすべての魂を今1つに。そして、ユイのもとへ行こう」
旧劇場版 まごころを、君に サードインパクト
LCLの意味とは 何の略語か
LCLとは、Link Connect Liquid(リンク接続液)の略です。
序の画コンテ238において、「LCL・リンク・コネクト・リクウィッドの略」と明記されています。
エヴァとパイロットを神経接続するために、エントリープラグ内に満たされる液体のことです。
LCLは、リリスの体液から生産されたもので、「生命のスープ」と説明されています(旧劇場版パンフレット)。
人類補完計画は、全ての人類をLCLに統合、単一化しようとするものでした。
形象崩壊とは
新劇場版における使徒は、コアが破壊されてATフィールドを失うと、液状化してしまいます。
この現象は「形象崩壊」と呼ばれます。
新世紀版では、使徒殲滅時「目標は完全に沈黙しました」と報告され、必ずしも使徒は液状化しなかったのに対し、新劇場版では、「目標は完全に形象崩壊しました」という表現に変わっています。
赤木リツコ「ATフィールドを失った使徒の崩壊。予想以上の状況ね」
伊吹マヤ「まさに血の池地獄。なんだかセカンドインパクトみたいで、嫌な感じですね」
エヴァンゲリオン新劇場版:序 第4使徒戦後
触れ合うことで浸食、中和する
ATフィールドは、外部の攻撃から身を守るバリアのような役割を持っていますが、ATフィールド同士がぶつかり合うと、浸食、中和して無効化されます。
そのため、強力なATフィールドを持つ使徒には、同等以上のATフィールドを発生させるエヴァでしか対抗することができません。
マヤ「初号機もATフィールドを展開。位相空間を中和していきます」
リツコ「いえ、浸食しているんだわ」
エヴァンゲリオン新劇場版:序 第4使徒戦
アスカ「新2のATフィールドを私のATフィールドで中和する」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 第13号機に停止信号プラグを差し込もうとするシーン
ATフィールドの発生源はコア
上記のとおり、使徒は、コアが破壊されるとATフィールドが失われ、形象崩壊します。
ここから、ATフィールドの発生源はコアであると思われます。
コアの意味とは
コア(core)とは、主要部、核心部、中核、芯などの意味があります。
赤い球体であり、体の中心部にあることが多く、心臓のようにも見えます。
序の、シンジのインダクションモード練習の際、リツコは、「使徒には必ずコアと呼ばれる部位があります。その破壊が使徒を物理的に殲滅できる唯一の手段なの」と言っていました。
エヴァのコアはパイロットが必要
エヴァにもコアがありますが、使徒と異なり、エヴァはエントリープラグによってパイロットがコアに接続されていないと起動しません。
そして、ATフィールドを発生させるには、エヴァとパイロットが高度にシンクロする必要があります。
第4使徒戦で初号機が腕を掴まれたシーン:リツコ「エヴァの防御システムは?」マヤ「シグナル作動しません」日向マコト「フィールド無展開」リツコ「ダメか」
第6使徒戦で初号機がビームを受けたシーン:リツコ「今パイロットを失うと、エヴァのATフィールドは完全に消失してしまう」
エヴァンゲリオン新劇場版:序
パイロットがいないとATフィールドが発生しないことから、パイロットは、エヴァの魂の代わりになっていると考えられます。
コア=魂=心
上記のとおり、ATフィールドは「心の壁」であり、発生させるには魂が必要です。
つまり、コアとは、魂であり、心でもあると思われます。
以上のことは、テレビアニメ版第17話のダミーシステムに関する次の会話からも読み取ることができます。
リツコ「試作されたダミープラグです。レイのパーソナルが移植されています。ただ人の心、魂のデジタル化はできません。あくまでフェイク。疑似的なものです。パイロットの思考のマネをするただの機械です」
ゲンドウ「信号パターンをエヴァに送り込む。エヴァがそこにパイロットがいると思い込みシンクロさえすればいい。初号機と弐号機にはデータを入れておけ」
テレビアニメ版 第17話
ATフィールドを持たない存在
使徒やエヴァには、ATフィールドがそもそも発生しないものもいます。
浸食タイプの使徒
まず、破で登場し、エヴァ3号機に浸食した第9使徒です。冬月コウゾウから「やはり浸食タイプか、やっかいだな」と言われていました。
第9使徒に首を絞められた初号機にはATフィールドが発生していたのに対し、初号機から首を絞め返された第9使徒にはATフィールドが発生しませんでした。
次に、Qで登場し、マーク6と融合していた第12使徒です。
第12使徒が第13号機を包み込むシーンにおいて、アスカの改2号機による攻撃をうけた際、第12使徒にはATフィールドが発生せず、攻撃が全く効きませんでした。
真希波マリは、「姫。ムダ弾はやめときなよ。あれ全部コアだから。私らじゃ手の打ちようがにゃいよん」と言っていました。
第9使徒と第12号機の共通点は、いずれも浸食型の使徒であることだと思われます。
つまり、浸食タイプの使徒には、ATフィールドが発生しないのだと考えます(その他の使徒はATフィールドを発生させる拒絶タイプ)。
アダムスオリジナルのコア採用機
エヴァの内、マーク9~12(アダムスの器)と第13号機には、ATフィールドがありません。
前提として、アダムスの器はアダムスのオリジナルのコアから、第13号機はアダムスのオリジナルそのものである「アダムスの生き残り」から建造されたと考察しています。
マーク9~12(アダムスの器)と第13号機の共通点は、アダムスのオリジナルのコアが関係していることであるといえます。
つまり、アダムスのオリジナルのコアからは、ATフィールドが発生しないのだと思われます。
マーク6もアダムスのオリジナル(月面タブハベースの白い巨人)を素体にしていると考察していますので、劇中での描写はありませんでしたが、マーク6にもATフィールドは発生しないと推察されます。
ATフィールドが無い理由
では、浸食型の使徒と、アダムスのオリジナルのコアを採用したエヴァには、なぜATフィールドが発生しないのでしょうか。
上記のとおり、ATフィールドは、「心の壁」であり、他者を恐れ、拒絶するバリアです。
浸食タイプの使徒は、他者を拒絶するのではなく、他者を浸食、融合し、乗っ取ろうとします。
つまり、他者を拒絶しようとする「心の壁」がそもそも無いのだと思われます。
一方、アダムスのオリジナルのコア採用機は、もともと「神」であるがゆえに「心の壁」を持たないのだと考えます。
シンエヴァの、ヴンダー甲板上でリツコに銃で撃たれたゲンドウ(ATフィールド不発生)は、「神に障壁はない。来るものを全て受け入れるだけだ」と言っていました。
このセリフは、ゲンドウ自身に関するものですが、「神」と呼ばれる者にはATフィールドがないことを意味していると思われます。
アダムスは「神」と呼ばれる存在であるため、ATフィールドがないのだと思います。
なお、リリスも「神」と呼ばれる存在ですが、リリスのコピーである初号機にはATフィールドがあります。
この点については、同じ「神」と呼ばれるアダムスとリリスは、本来は共に心の壁であるATフィールドを持たない存在だったものの、地上に堕とされたリリス(堕天使ルシファーがモチーフ)は、他の「神」を恐れ拒絶し、ATフィールドを発生させるようになったのだと考察しています。
他のアダムス系エヴァにはATフィールドがある
上記のとおり、アダムスのオリジナルのコア採用機にはATフィールドがありませんが、アダムスのコピーを素体にした機体には、ATフィールドが発生します。
零号機、2号機~仮設5号機、8号機は、いずれもアダムスのコピーを素体にしていると考察しています。
これらのエヴァは、いずれもATフィールドを発生させることができます。
その理由は、アダムスのコピーを素体にしているものの、アダムスのものではないコアが使用されているためであると考えます。
着脱交換式コアユニット
新劇場版におけるエヴァは、コア(コアユニット)が着脱、交換可能になっています。
序の、シンジが初号機への搭乗を拒否したシーンにおいて、リツコは、「初号機のコアユニットをL-00タイプに切り替えて再起動」と言っていました。
また、序のパンフレットには、「L-01型相互交換式コアユニット」というワードが記載されていました(L-00が綾波レイ、L-01がシンジのものと思われます。)。
破の、2号機が凍結されるシーンでは、実際にコアユニットが外されている描写がありました。
つまり、アダムスのコピーを素体にして建造されたエヴァでも、コアまでアダムス由来であるとは限らないということです。
コアはリリス由来(胸の傷、手術痕)
零号機、2号機、8号機など、アダムスのコピーを素体にして建造されたエヴァでも、そのコアユニットは、リリスのコア由来のものだったと考えます。
上記のとおり、アダムスのオリジナルのコアであれば、ATフィールドは発生できないはずだからです。
また、上記のとおり、レイとシンジのコアユニットの名称が、いずれも「L-○○」となっていましたが、「L」はリリス(Lilith)を意味していると考えられます。
セントラルドグマで磔(はりつけ)にされていたリリスには、胸に手術痕(縫合の跡)がありました。これは、リリスのコアの一部を取り出した手術の跡だったのではないでしょうか。