新劇第9使徒 アスカ左眼浸食はゼーレのシナリオ

 今回は、エヴァンゲリオン新劇場版における、第9使徒による式波・アスカ・ラングレーの左眼浸食が、ゼーレによって仕組まれた罠だったことについて考察します。

第9使徒

第9使徒は浸食タイプ

 破で登場した第9の使徒は、冬月コウゾウが「やはり浸食タイプか。やっかいだな」と言っていたように、浸食型の使徒でした。

 「浸食タイプ」とは、心の壁であるATフィールドを持たず、他者を浸食して乗っ取ろうとするタイプの使徒です(他人の心の中に土足で入りこむイメージ)。

 対して、ATフィールドを展開して他者を拒絶するのが「拒絶タイプ」です(心の中に入り込もうとする他人を拒むイメージ)。

 ATフィールドの考察はこちら

 劇中で「拒絶タイプ」であることが明言されたのは、破で登場した「最強の拒絶タイプ」である第10使徒です。

3号機に浸食・融合

 第9使徒は、北米ネルフで開発されたエヴァ3号機のエントリープラグに浸食し、3号機と融合して初号機と戦闘しました。

 3号機が浸食されたのは、3号機がアメリカから日本に空輸される途中、輸送機が積乱雲に入ったときだと思われます(積乱雲の中に第9使徒がいた。)。

4号機の爆発は事故ではない

 3号機が日本に送り込まれたきっかけは、先に4号機が大爆発を起こし、北米ネルフ第2支部ごと消滅した事件があったためでした。

 相田ケンスケが、「いきなり起動実験込みで米国から押し付けられたって噂だ」と言ったように、アメリカから危険物として日本に送り込まれたわけです。

 4号機の爆発事故は、破の同シーン後における次のセリフから、ネルフ(碇ゲンドウ、冬月を含む。)にとっては予想外の出来事であり、ゼーレ独自の思惑だったことが分かります。

 冬月「次世代開発データ収得が目的の実験機だ。何が起こってもおかしくない。しかし…」

エヴァンゲリオン新劇場版:破

 冬月「エヴァ4号機。擬似S2器官を仮設搭載した試作実験機だ。何が起こってもおかしくはない」

 冬月「米国大統領から公式な直訴とはな。裏でゼーレが動いているとはいえ、無視もできんか」

エヴァンゲリオン新劇場版:破 画コンテ816、826

 また、その後のゼーレとゲンドウの会話からも、4号機の事故がゼーレのシナリオであったことが伺われます。

 ゼーレ「先にエヴァンゲリオン5号機が失われ」「今4号機も失われた」

 ゲンドウ「両機の喪失は計画遂行に支障をきたしますが」

 ゼーレ「修正の範囲内だ問題はなかろう」「エヴァ3号機は米国政府が是非にと君へ差し出した。君の国の政府も協力的だ」「最新鋭機だ。主戦力に足るだろう」

エヴァンゲリオン新劇場版:破

 つまり、ゼーレは、あえて4号機の爆発事故を生じさせ、アメリカが3号機を手放し、日本に押し付けるよう仕向けたわけです(おそらく、裏でアメリカ、日本の両政府に圧力もかけた。)。

バチカン条約と2号機の凍結

 バチカン条約とは、国家間のパワーバランスへの配慮から、1国のエヴァ保有数を3機までとする条約のことです(核兵器を1国に集中すべきでないとする議論と同様の趣旨)。

 日本のネルフ本部には、既に零号機、初号機、2号機の計3機がありましたので、3号機を引き受けるにあたり、バチカン条約に従って2号機が凍結されることになりました。

 この2号機の凍結もゼーレの思惑でした。

 本来であれば、修復中だった零号機を凍結した方が戦力的には合理性があるはずですが、2号機のパスを持っているユーロネルフの意思によって、2号機が凍結されることになったのです。

 ゼーレがユーロネルフにも圧力をかけたためだと思われます。

 以上のことは、破の同シーンにおける次のセリフから分かります。

 アスカ「なんであたしの2号機が封印されちゃうのよ」

 赤木リツコ「バチカン条約知ってるでしょ?3号機との引き換え条件よ

 アスカ「修理中の零号機にすればいいじゃない」

 伊吹マヤ「2号機のパスは今でもユーロが保有しているの。私達にはどうにも出来ないのよ

エヴァンゲリオン新劇場版:破

ゼーレの目的はアスカと第9使徒の融合

 ここまでをまとめると、ゼーレは、4号機の爆発事故を生じさせ、それを口実に3号機を日本へ送り込み、さらにアスカがパイロットを務める2号機を凍結させることで、松代での3号機の起動実験テストパイロットが必然的にアスカになるよう仕向けたことが分かります。

 では、何のためだったのでしょうか。

 破の画コンテでは、アスカが第9使徒に浸食されたシーンの後におけるゼーレのセリフが、次のようになっていました。

 ゼーレ「エヴァ3号機は予定通り第9使徒の依り代としての役目を終えた」「予測通りエヴァと使徒の融合は可能であったな」「そしてエヴァを触媒とし我ら人類との融合の可能性も見出せた」「希望は実現しつつある。失った人柱の犠牲にも報いねばならん」「過酷すぎるな」「そのための子供たちだ。人には全うすべきそれぞれの役がある」「群体としての人類。種全体が生き残るための個々の役割か」「我らは個体では生きていけない」「その業と原罪を超えるための人類補完計画なのだ」

エヴァンゲリオン新劇場版:破 画コンテ1251以下

 「依り代」(よりしろ)とは、神霊が依り憑く(よりつく)対象物のことです。

 上記セリフから、ゼーレは、始めから第9使徒を3号機と融合(浸食)させ、さらに3号機を通じて第9使徒とアスカをも融合させようとしていたのです。

 このことは、シンエヴァのフォース(アナザー)インパクトの際の次のセリフからも読み取れます。

 葛城ミサト「そのためにアスカを使い捨てるか」

 ゲンドウ「綾波と式波型パイロットはもとよりこのために用意されていたものだ」

シン・エヴァンゲリオン劇場版

 ゼーレの人類補完計画における最終目標は、フォースインパクトまで起こして人類の魂を浄化することでした。

 人類補完計画の考察はこちら

 フォース(アナザー)インパクトの考察はこちら

 インパクト(儀式)を起こすには贄(にえ)となる使徒が必要となりますので、アスカを第9使徒と融合させることで、ゼーレのタイミングでインパクトを起こすべく、使徒を保存しておきたかったのだと考えられます。

予定通りアスカは第9使徒と融合した

 第9使徒の浸食によって、3号機はもとより、そのテストパイロットを務めたアスカも浸食を受けました。

 リツコ「細胞組織の浸食跡は消えたものの、使徒による精神汚染の可能性も否定できない。このまま隔離するしかないわね」

 伊吹「まさか、処置ってことはないですよね?」

 リツコ「貴重なサンプル体よ。あり得ないわ」

エヴァンゲリオン新劇場版:破

 その結果、アスカの左眼には第9使徒が宿り、眼帯の下に使徒封印柱を埋め込んで使徒の力を抑え込まなければならなくなりました。

 封印柱がゼーレの技術であることの考察はこちら

 後にアスカは、シンエヴァのヤマト作戦において、第13号機に停止信号プラグを打ち込む際、ヒトを捨てて第9使徒の力を開放することになります(裏コード999スリーナイン)。

 裏コード999の考察はこちら

エヴァの呪縛 半使徒化

 アスカは、第9使徒によって3号機のコアに引き込まれ、エントリープラグ深度が限界値を超え、「エヴァの呪縛」にかかり、半使徒化しました。

 オペレーター「プラグ深度100をオーバー!精神汚染濃度も危険域に突入!」

 ミサト「なぜ急に?」

 オペレーター「パイロット、安全深度を越えます」

 リツコ「引き止めて!このままでは搭乗員がヒトでなくなってしまう!」

エヴァンゲリオン新劇場版:破

 これによって、アスカは、食事や睡眠が不要となり、肉体は年をとらず、コア化したエリアでも活動することができるようになりました。

 アスカの正体とエヴァの呪縛の考察はこちら

 コア化の考察はこちら

スケスケのテスト用プラグスーツの意味

 なお、アスカは、松代で3号機の起動実験を行う際、不自然にスケスケなテスト用プラグスーツを着せられていました。

 アスカは、「ところでさ。赤いのはいいんだけど。このテスト用プラグスーツって見えすぎじゃない?」と言っていました。

 アスカファンへのサービスという意味合いもあるのかもしれませんが、あれは第9使徒による浸食をし易くするためにあえてスケスケのプラグスーツが準備されていたのだと考えます。

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