黒レイ(黒波)綾波タイプナンバー6の正体とは

 今回は、エヴァンゲリオン新劇場版における、黒いプラグスーツを着たアヤナミレイ(仮称)、通称「黒波」「黒レイ」「別レイ」の正体について考察します。

麦わら帽子

アヤナミレイ(仮称)の概要

 黒レイの正式名称は、「アヤナミレイ(仮称)」です。

 白いプラグスーツを着た綾波レイ(白レイ)とは、碇ユイのクローンである点では共通するものの、全く別の存在です。

 黒レイは、ゼーレに所属する、アダムスの器エヴァマーク9の「暫定パイロット」でした。

 また、綾波レイ(白レイ)と異なり、碇ユイの情報が転送されておらず、ゼーレのプログラムで動いているため(ネルフの管理外)、ゲンドウも興味を持っていませんでした。

 Qの、冬月コウゾウと碇シンジが将棋をするシーンの画コンテにおいて、冬月のセリフは次のようになっていました。

 冬月「君を運んできた複製体はマーク9の暫定パイロットとして用意されたアヤナミ型試作体第6号だ。ユイ君の情報は転送されていない。ゆえに碇も興味ないようだ。あの複製体はゼーレのプログラムで動いている。我々の関知しないところだ

エヴァンゲリオン新劇場版:Q 画コンテ863以下

綾波タイプ初期ロットナンバー6

 シンエヴァの、新ネルフ本部が旧南極セカンドインパクト爆心地に向かうシーンにおいて、冬月は、「第三の少年がヴィレに戻った。綾波タイプナンバー6は無調整ゆえ個体を保てなかったようだ」と言いました。

 また、Qのラストでは、アスカに、「綾波タイプの初期ロットか」と言われていました。

 これらのセリフから、黒レイは、「綾波タイプ」の「初期ロット」の「ナンバー6」であることがわかります。

「綾波タイプ」とは

 これは、綾波ユイ(ゲンドウと婚姻後は碇ユイ)のクローンであることを示しています。

「初期ロット」とは

 ロットとは、(主に大量生産する)製品の生産単位のことを言います。

 つまり、綾波タイプの生産開始初期に複数の個体がいたことを示しています。

 「初期」と呼ぶ以上、「後期」もあると思われますが、劇中で黒レイの後に登場した綾波タイプは、シンエヴァの(2代目)アドヴァンスド綾波シリーズのみです。

 したがって、(2代目)アドヴァンスト綾波シリーズは、「後期ロット」だったのかもしれません。

「ナンバー6」とは

 これは、綾波タイプ初期ロットの内6番目の個体であることを意味しているものと思われます。

 そうすると、黒レイの前に1~5番目が存在するはずです。

 この点、私は、初期ロット1~5番目(綾波タイプナンバー1~5)は、(初代)アドヴァンスト綾波シリーズだったと考えます。

 シンエヴァで描かれた旧南極セカンドインパクト爆心地には、4本の十字架と1本の傾いた十字架がありました。

 ここから、セカンドインパクトの当時の現場には、アダムスが5体いたと推測されます。

 セカンドインパクトの考察はこちら

 セカンドインパクトによって、4本の十字架に対応するアダムス4体は、その魂が抜け後に「アダムスの器」となり、傾いた1本の十字架に対応するアダムス1体は、「アダムスの生き残り」として後のエヴァ第13号機になったと考えます。この点は別途考察しています。

 アダムスの器の考察はこちら

 アダムスは、「純粋な魂」を持ったパイロット(アダムスの魂に相当)が搭乗することで、真の力が発揮されます。

 シンエヴァの、新ネルフ本部が旧南極爆心地に向かうシーンにおいて、冬月は、4人のアドヴァンスト綾波シリーズについて、次のように言いました。

 冬月「フォースインパクトの要とされる黒き月の復活。そしてアダムスの器の贄となる雌雄もなく純粋な魂だけで造られたけがれなき生命体アドヴァンスド綾波シリーズの再生

シン・エヴァンゲリオン劇場版

 「再生」と言っていることからして、アドヴァンスト綾波シリーズが過去にも存在していたことが分かります。

 したがって、セカンドインパクトを起こした際にも、5体のアダムスにはそれぞれ(初代)アドヴァンスト綾波シリーズが搭乗していたと思われます。

 なお、「再生」と言う以上、4人のアドヴァンスト綾波シリーズは消滅したことになりますが、「アダムスの生き残り」とともに、そのパイロットだったアドヴァンスト綾波シリーズの内1名は生き残ったことになります。

 私は、これが綾波レイ(白レイ・白波)であると考えています。

 白レイの考察はこちら

綾波シリーズの内訳:全10人

 以上をまとめると、綾波タイプは、次のように整理できます。

綾波タイプ初期ロット

  •  No1~4:(初代)アドヴァンスト綾波シリーズ4人
  •  No5:綾波レイ(白レイ)
  •  No6:アナヤミレイ(仮称)(黒レイ)

綾波タイプ後期(?)ロット

 シンエヴァで登場した(2代目)アドヴァンスト綾波シリーズ4人

マーク9の暫定パイロット

 黒レイは、アダムスの器のであるエヴァマーク9の「暫定パイロット」と呼ばれていました。

 Qのセントラルドグマにおける戦闘シーンで、マリに「ゼーレの暫定パイロットさん。聞こえてるでしょ。アダムスの器になる前にそっから出た方がいいよ」と言われていました。

 「暫定パイロット」とはどのような意味なのでしょうか。

 「暫定」とは、黒レイの後にアダムスの器のパイロットとなった(2代目)アドヴァンスト綾波シリーズ完成までの繋ぎという意味であったと考えるのが自然です。

 では、なぜ黒レイは正規パイロットになれなかったのでしょうか。

 シンエヴァで登場した(2代目)アドヴァンスト綾波シリーズ4人は、上記のとおり「雌雄もなく純粋な魂だけで造られたけがれなき生命体」と言われています。

 アダムスの真の力(天使の輪・エンジェルハイロウの出現)を発揮するには、その魂となるパイロットが「純粋な魂」であることが必要というわけです。

 劇中で描写された(2代目)アドヴァンスト綾波シリーズは、まるで廃人のように描かれていましたが、感情や性別すらない純粋無垢な存在なのだと思われます。

 それに対し、黒レイは、純粋ではあるものの、女性的であり、第3村の鈴原ツバメを可愛いと感じるなど、人間味を残していました。

 この「人間らしさ」は「けがれ」であり、アダムスの器のパイロットとしては、不完全なもので、失敗作だったのではないでしょうか。

 つまり、アダムスの器の真の力を発揮できないため「暫定パイロット」だったのだと思われます。

リリンの模造品に槍は扱えない?

 ところで、Qにおける、渚カヲルの次のセリフによれば、黒レイは、「リリンの模造品」であり、槍を扱うことができないようにも読めますが、この点については別途考察しています。

 リリンの模造品と聖槍の考察はこちら

 カヲル「そう。ロンギヌスとカシウス。2本の槍を持ち帰るには魂が2つ必要なんだ。そのためのダブルエントリーシステムさ」

 シンジ「それなら、あっちのパイロット(黒レイ)でもいいんじゃないの?」

 カヲル「いや、リリンの模造品では無理だ。魂の場所が違うからね」

エヴァンゲリオン新劇場版:Q セントラルドグマ

最期にプラグスーツの色が白くなった意味

 黒レイは、第3村において、シンジの前でLCL化して最期を迎えました。

 冬月が「綾波タイプナンバー6は無調整ゆえ個体を保てなかったようだ」と言ったように、綾波シリーズは「調整」しないとLCL化(ATフィールドを失い液状化)してしまうようです。

 ATフィールドの考察はこちら

 「調整」とは、ネルフにおいてプラントに浸かったり、投薬を受けることをいいますが、第3村にはその設備がなく、「調整」ができませんでした。

 ところで、黒レイが最期を迎えた際、プラグスーツの色が黒から白に変化しました。

 この描写は何を意味していたのでしょうか。

 黒レイは、クローンとして造られましたが、冒頭で述べたとおり、ゲンドウから興味を持たれず、名前すらもらえませんでした。

 正式名も「アヤナミレイ(仮称)」で、第3村では「そっくりさん」と呼ばれていました。

 シンジに至っても、黒レイが綾波レイ(白レイ)でないと分かってからは、別人として扱いました。

 黒レイ自身も、自分が何者なのか分からないでいました。

 命令があれば動く、機械、プログラムのような存在だったのです。

 しかし、最期にシンジに「綾波は綾波だ。他に思いつかない」と言ってもらえたことで、シンジにシンジが好きだった「綾波レイ」(=白レイ)であると認識され、自分自身も「綾波レイ」でいいのだと自覚できたのではないでしょうか。

 プラグスーツが黒から白に変わったのは、この他者と自分の認識の変化を表す心理的な描写だったのだと考えます。

 シンエヴァのアディショナルインパクトの際、シンジにはエヴァンゲリオンイマジナリーが「黒いリリス」に見え、ゲンドウには違って見えていたように、見る人の認識によって対象の見え方は変わるという意味なのでしょう。

 なお、この点に関する冬月の「自分と同じ喪失を経験させるのも息子のためか。碇」というセリフから、ゲンドウが、演出のために、あらかじめ物理的にプラグスーツの色が変わるよう設定していたとの考察が見受けられますが、さすがのゲンドウも黒レイがシンジの前で最期を迎えることまで見越していたとは思えませんし、世界を滅ぼそうとしている人がそんな無駄な機能付きプラグスーツを開発するほど暇ではないと思います。

小さな十字架の光と虹が発現した理由:半使徒化

 黒レイがLCL化した後、小さな十字架の光と虹が現れました。

 これは、使徒を殲滅した際に生じるものと同じです。

 ここから、黒レイが半使徒化していたことが分かります。

 遅くとも、Qで第13号機が第12使徒を取り込んで覚醒(擬似シン化第3プラス形態)したときに使徒化したものと思われます。

 第13号機が新ネルフ本部上空に飛び上がった際、さりげなくマーク9にも天使の輪(エンジェルハイロウ)が現れ、第13号機とともに飛行できていました。

 つまり、このときマーク9も覚醒していたと思われ、そのパイロットだった黒レイも覚醒状態になっていたと考えられます。

 その後、シンジ、アスカとともに、コア化した赤い大地を難なく歩けていたことからも、黒レイが半使徒化していたことは間違いないと思われます。

 エヴァの呪縛と半使徒化の考察はこちら

 コア化の考察はこちら

 以上が黒レイの最期に小さな十字架の光と虹が出現した理由であると考えます。

タイトルとURLをコピーしました