空白の14年間 ゲンドウ、冬月、ロバはゴルゴダベースへ

 今回は、エヴァンゲリオン新劇場版における、破とQの間の「空白の14年間」に、碇ゲンドウと冬月コウゾウがどこに行き何をしていたのかについて考察します。

ロバ

空白の14年間とは

 破では、ニアサードインパクトまでが描かれましたが、破の次の作品であるQでは、ニアサードインパクトから14年後の世界が舞台となりました。

 つまり、ニアサードインパクトからQまでの14年間については、一部の回想シーンを除き、劇中での描写がほとんどありませんでした。

 この劇中描写のない14年間は、「空白の14年間」と呼ばれています。

  • :第4~第6使徒戦
  • :第3、第7~第10使徒戦、ニアサードインパクト
  • 空白の14年間:サードインパクト他
  • Q:US作戦、第12使徒戦、(ニア)フォースインパクト
  • シンエヴァ:フォース(アナザー)インパクト、アディショナルインパクト、ネオンジェネシス

破でのQ予告の内容

 破の、Q予告において、「廃棄される要塞都市」「KEEP OUT TOKYO-Ⅲ NEAR THIRD IMPACT GROUND ZERO」(立入禁止:第3新東京市ニアサードインパクト爆心地)「幽閉されるネルフ関係者」「KEEP OUT NEAR THIRD IMPACT EYEWITNESS DEBRIEFING IN PROGRESS NO ENTRY WITHOUT AUTHORITY」(立入禁止:ニアサードインパクト目撃関係者からの事情聴取)とのナレーションと表示がなされた後、「果たして、生きることを望む人々の物語はどこへ続くのか」とのナレーションとともに、ゲンドウと冬月が小さなロバを連れ、険しい山道を進むシーンの描写がありました。

 このQ予告は、実際に公開されたQの内容とは大きくかけ離れたものになっていましたが、本来、Qは、破ラストのニアサードインパクト直後の物語になる予定だったことが分かります。

 ニアサードインパクト後、第三新東京市は廃棄され、ネルフ関係者は、ニアサードインパクトを起こしたことにつき、糾弾されていたようです。

 また、シンエヴァのフィナーレ舞台挨拶で、庵野監督は、ゲンドウと冬月が失脚し、渚カヲルがネルフの司令、加持リョウジが副司令となる設定があったことを語られたようです。

 つまり、ネルフ関係者が幽閉され、新たにカヲルが司令の職に就いた中、ゲンドウと冬月は、ネルフから失脚し、どこかへ行っていたようなのです。

画コンテの表示

 同シーンの画コンテ(予告20)には、ゲンドウと「ひげづらの冬月」について、「チベットみたいな所を放浪中」と書かれていました。

 「チベットみたいな所」であり、「チベット」(中国南西部)ではないようです。

 「チベットみたいな所」とは、険しい山岳地帯という意味だと思われます。

 また、画コンテには、小さなロバ(子ロバ)は書かれていませんでした。子ロバは、実際の映画から追加されたということが分かります。

子ロバの追加の意味:ゼカリヤ書

 なぜ、映画ではわざわざ子ロバが追加されたのでしょうか。

 単に険しい山岳地帯を強調するための追加だったのかもしれませんが、ここには意味があると考えています。

 旧約聖書文書の1つである「ゼカリヤ書」には、次のような記載があるようです。

 「娘シオンよ、大いに踊れ。娘エルサレムよ、歓喜の声をあげよ。見よ、あなたの王が来る。彼は神に従い、勝利を与えられた者。高ぶることなく、ロバに乗ってくる。荷を負うロバの子、子ロバに乗って

 この記載について、新約聖書の福音書では、イエスがエルサレム入城の際に子ロバに乗っていたと説明しているようです。

 ここから、Q予告の描写は、ゲンドウ(リリンの王)と冬月がエルサレムに向かっていたことを示していたものである考えられます。

 なお、Q予告の描写では、ゲンドウ達の足元がコア化していなかったことから、サードインパクトの前の出来事だったと思われます。

 サードインパクトの考察はこちら

 コア化の考察はこちら

エルサレムはゴルゴダベース

 では、エルサレムには何があったのでしょうか。

 考えられるのは、ダミープラグ(システム)を開発していた「ゴルゴダベース」です。

 ゴルゴダベースがどこにあるのかについて、劇中では指摘がありませんでした。

 しかし、ゴルゴダベースの元ネタと思われる「ゴルゴダの丘」は、イスラエルのエルサレムにあり、新約聖書においてイエス・キリストが十字架に磔(はりつけ)にされた場所であるとされています(アダムの墓があったとする説もあるようです。)。

 そうすると、ゴルゴダベースは、エルサレムにあったと考えることができます(ただし、イスラエルのガリラヤ湖北西岸にあるタブハに対応するタブハベースが月面にあったように、ゴルゴダベースも実際のイスラエルの場所にあったとは限りません。)

 上記のとおり、ゲンドウと冬月と子ロバの描写がエルサレム入城を示唆するのであれば、そこからゴルゴダベースへと繋がるわけです。

ダミーシステム(プラグ)研究開発施設

 破で、ネルフ本部にエヴァ3号機が送られきた際、ゴルゴダベースからはダミープラグが送られてきました。

 ダミープラグは、第9使徒に浸食された3号機を殲滅する際、初号機にて使用されました。

 このダミープラグについて、加持は、「ゴルゴダベースからの厳封直送品だからな。得体は知れないままだ」と言っていました。

 ゴルゴダベースは、加持でさえも正体がわからない謎の施設だったといえます。

 ゴルゴダベースは、ダミーシステム、すなわち、エヴァの無人化、自律化の研究を行っていた秘密基地だったと思われます。

目的はマーク4シリーズの実用化

 では、ゲンドウと冬月は、何のためにゴルゴダベースへ行ったのでしょうか。

マーク4シリーズはネルフの指揮下

 Q冒頭のUS作戦時と、その後のAAAヴンダーの補給・主機関連作業中において、ヴィレに対し、次のマーク4シリーズが攻撃を仕掛けてきました。

 コード4A:アンチATフィールドを装備

 コード4B:初号機の封印柩に潜伏

 コード4C:ネーメズィスシリーズ

 ヴィレのクルーは、これらと会敵した際、その名称を把握していました。

 また、赤木リツコも、「ここはいつも通り撤退を。為す術がないのよ。葛城艦長」と言っていました。

 つまり、ヴィレは、Q冒頭の時点でマーク4シリーズに初めて遭遇したわけではなく、過去にも戦闘していたことが伺われます。

 シンエヴァ冒頭のパリにおいても、ヴィレに対し、次のマーク4シリーズが多数で攻撃を仕掛けてきました。

 44A(フォーツーエー):航空特化タイプ

 44B(フォーツービー):電力供給特化タイプ

 4444C(フォーフォーシー):陽電子砲装備陸戦用

 このとき、リツコは、「冬月副指令に試されてるわね。私達」と言っていました。

 以上からわかることは、マーク4シリーズは、ネルフの指揮のもと、「空白の14年」からシンエヴァに至るまで、ヴィレに攻撃を仕掛け続けていたことが分かります。

ゴルゴダベースでマーク4を実用化

 マーク4は、どれもパイロットが乗っていない無人機でした。

 上記のとおり、ゴルゴダベースは、ダミーシステムを開発していた施設ですので、エヴァの無人化、自律化を研究していたと思われます。

 そうだとすれば、無人・自律型のマーク4シリーズについても開発していたと考えることができます。

 ニアサードインパクト後、ネルフを一時離れ失脚していたゲンドウと冬月は、ゴルゴダベースへ行き、マーク4シリーズを実用化させたのではないでしょうか。

 マーク4シリーズの考察はこちら

ゲンドウと冬月の目的

 では、ゲンドウと冬月は、マーク4シリーズを実用化させて、何がしたかったのでしょうか。

 上記のとおり、ゲンドウと冬月がゴルゴダベースへ行ったのはサードインパクト前です(Q予告の描写においてゲンドウ達の足元がコア化していないため)。

 そうすると、ゲンドウと冬月は、間もなくサードインパクトによって人類のほとんどが死滅(コア化)することを予想していたはずです。

 ゲンドウと冬月は、サードインパクト後も、フォースインパクトを起こす必要があったわけですが、そのための人手も戦力も無いわけです。

 フォース(アナザー)インパクトの考察はこちら

 そのような状況下において、ヴィレのように自分たちを妨害してくる存在に対抗する力が必要だったはずです。

 それが、無人・自律型のマーク4だったのではないかと考えられます。

 つまり、ゲンドウと冬月は、サードインパクト後の人類がほとんどいない世界において、人類補完計画を遂行するための戦力(マーク4シリーズ)を確保するために、ゴルゴダベースに行く必要があったのだと思います。

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