今回は、エヴァンゲリオン新劇場版における、第11使徒の正体について考察します。
第11使徒だけ不明確
次のとおり、劇中において、その正体が明かでない使徒は、第11使徒だけです。
- 第1使徒:渚カヲル
- 第2使徒:リリス
- 第3使徒:永久凍土から発見
- 第4使徒:人型
- 第5使徒:ツチノコ?型
- 第6使徒:ダイヤモンド型
- 第7使徒:時計?型
- 第8使徒:宇宙から落下攻撃
- 第9使徒:エヴァ3号機に浸食
- 第10使徒:最強の拒絶タイプ
- 第11使徒:劇中描写なし
- 第12使徒:マーク6の中にいた。
- 第13使徒:渚カヲル
死海文書外典「掟の書」とリリスとの契約
死海文書外典において、地球への使徒襲来が予言されていました。
死海文書外典における使徒襲来に関する記載のことを「掟の書」(おきてのしょ)と言います。
また、「リリスとの契約」により、リリン(人類)は、予言通りに襲来する使徒をまずは10体殲滅する必要がありました(使徒を10体殲滅することは「リリスとの契約」の一部)。
以上のことは、序における次のセリフから読み取ることができます。
第4使徒戦後のゼーレ:01「第4の使徒襲来とその殲滅。そして3番目の子供の接収及びエヴァ初号機の初起動。概ね既定どおりだな」06「使徒殲滅はリリスとの契約のごく一部にすぎん」01「人類補完計画。その遂行こそが我々の究極の願いだ」
第6使徒戦における碇ゲンドウと冬月コウゾウ:ゲンドウ「いかなる手段を用いても我々はあと8体の使徒を倒さねばならん」冬月「全てはそれからか」※
ラストの月面におけるカヲルとゼーレモノリス01:カヲル「わかっているよ。あちらの少年が目覚め概括の段階に入ったんだろ」01「そうだ。死海文書外典は掟の書へと行を移した。契約の時は近い」
エヴァンゲリオン新劇場版:序
※ 上記ゲンドウと冬月の会話は、既に第4、第5の使徒を殲滅した後の第6使徒戦におけるものなので、「あと8体」ということは全部で10体ということになります。
なお、シンエヴァの、AAAヴンダー甲板上でゲンドウが話すシーンにおいて、死海文書外典の映像が映され、その最後にはリリスとリリスを囲む10体の何かが描写されていましたが、あれはアダムスではなく、殲滅対象となった10体の使徒であると考えます。
第11使徒は殲滅されなかった
第11使徒は、最後まで殲滅されませんでした。
しかし、Qラストの(ニア)フォースインパクトにおいて、カヲルが第13使徒に堕とされ殲滅されたことから、次のとおり、「リリスとの契約」に従い、ちょうど10体の使徒が殲滅されたことになります。
- 1 第3使徒:仮設5号機が殲滅
- 2 第4使徒:初号機が殲滅
- 3 第5使徒:初号機が殲滅
- 4 第6使徒:零号機と初号機が殲滅
- 5 第7使徒:2号機が殲滅
- 6 第8使徒:零号機、初号機、2号機が殲滅
- 7 第9使徒:初号機が殲滅 ※
- 8 第10使徒:擬似シン化した初号機が殲滅
- 9 第12使徒:第13号機が殲滅
- 10 第13使徒:DSSチョーカーで殲滅
※ 式波アスカに浸食した第9使徒は殲滅できなかったのでは?と考えることもできますが、初号機が第9使徒に浸食された3号機のエントリープラグを嚙み砕いた際、使徒殲滅を示す虹が出現しましたので、一応あの時点で殲滅扱いになったと考えてよいと思われます。
第11使徒となる必須条件
新劇場版の使徒は、出現した順にナンバリングがなされているようです。
そうすると、第11使徒は、第10使徒出現と第12使徒出現の間に現れたことになります。
「最強の拒絶タイプである」第10使徒は、破のラスト、ニアサードインパクト直前に登場しました。
一方、第12使徒は、劇中ではいつ出現したのか明示されていませんが、サードインパクトの際にセントラルドグマに侵入したと考察しています。
そうすると、第11使徒が出現したのはニアサードインパクト直前からサードインパクトまでの間になります。
この間に出現した可能性のある存在が、第11使徒の候補になります。
初号機+碇シンジ説:自説
私は、ニアサードインパクトの際に覚醒、擬似シン化した初号機と、それと同化したシンジが第11使徒になったと考えます。
「擬似シン化」とは初号機のリリス化
序の第6使徒戦において、セントラルドグマへ行った葛城ミサトは、シンジに対し、「この星の生命の始まりでもあり終息の要ともなる第2の使徒リリスよ。サードインパクトのトリガーとも言われているわ」と言っていました。
つまり、本来、サードインパクトのトリガーにはリリスがなる予定でした。
しかし、破のラストに初号機がニアサードインパクトを起こした際、加持リョウジが「数が揃わぬ内に初号機をトリガーにするとは。碇司令、ゼーレが黙っちゃいませんよ」と言っていたように、ゼーレの計画とは異なり、リリスの代わりに初号機がトリガーにされたことが分かります。
なお、「数が揃わぬ内に」とは、まだ「リリスとの契約」通り使徒10体を殲滅していないのに、という意味だと思われます(この時点ではまだ8体しか殲滅していなかった。)。
また、赤木リツコは、初号機の擬似シン化について、次のように言っていました。
リツコ「人の枠にとどめておいたエヴァが本来の姿を取り戻していく。人のかけた呪縛を解いて、人を超えた神に近い存在へと変わっていく」
エヴァンゲリオン新劇場版:破
私は、初号機はリリスのコピー(クローン)であると考察していますが、そうだとすれば、ここでいう「本来の姿」「神」とはリリスのことを指します。
また、新劇場版のリリスは、生命の実(S2機関)と知恵の実の両方を所持する存在であるとも考察していますが、コピーである初号機は、もともと2つの実を持っていませんでした(コピーに2つの実は引き継がれない。)。
リリスが生命の実と知恵の実の両方を所持する存在であることの考察はこちら
しかし、コピーにすぎなかった初号機は、コアに碇ユイがダイレクトエントリーしたことによって知恵の実を、第9使徒を捕食したことによって生命の実を、それぞれ後天的に獲得しました。
そこに、魂(パイロット)であるシンジが覚醒したことで、初号機は、擬似シン化し、リリスに近い存在になった(リリス化した)といえます。
擬似シン化=第11使徒化
上記のとおり、初号機の擬似シン化はリリス化を意味するものと考えます。
第2使徒リリスと同等の存在になったということは、初号機が新たな使徒(第11使徒)になったと考えることができます。
初号機とシンジは一体
以上によると、初号機が第11使徒になったと考えることもできますが、初号機のみでなく、その魂(パイロット)であるシンジも一体として第11使徒になったと思われます。
このことは、ヴィレが、シンジにDSSチョーカーを装着させるなど、初号機と同様に、シンジがインパクトのトリガーになることを警戒していたことから伺えます。
この点に関し、Qで、リツコは、シンジに対し、DSSチョーカーについて次のような説明をしていました。
リツコ「とはいえ先に突如12秒間も覚醒状態と化した事実は看過できない」
リツコ「エヴァ搭乗時、自己の感情に飲み込まれ覚醒リスクを抑えられない事態に達した場合、あなたの一命をもってせき止めるということです」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q
また、シンジがマーク9に連れて行かれた際、リツコは、「彼を初号機に優先して奪取するということは、トリガーとしての可能性がまだあるということよ」と言っていました。
さらに、カヲルは、シンジに対し、サードインパクト後の惨状を見せた際、「碇シンジ君。一度覚醒しガフの扉を開いたエヴァ初号機はサードインパクトのトリガーとなってしまった。リリンの言うニアサードインパクト。全てのきっかけは君なんだよ」と言っていました。やはり、初号機と同様に、シンジもニアサードインパクトのきっかけになったことを意味しています。
以上によれば、初号機が単独で使徒になったというよりは、その魂(パイロット)であったシンジも含めて第11使徒になったものと考えられます。
実際、Qラストにおいて、シンジがL結界密度の高いコア化した赤い大地を生身で歩けていたことや、シンエヴァの第3村において、アスカに「まだあんたはリリンもどき。食べなきゃ生きていられない。こちとらずっと水だけだ」と言われていたように、シンジも半使徒化していたといえます。
式波アスカ説
式波・アスカ・ラングレーが第11使徒であると考える説です。この説もかなり有力だと思っています。
アスカは、第9使徒に浸食されたことで第11使徒になったと考えるものです。
実際、アスカもQラストでコア化した大地を生身で歩けていましたし、シンエヴァの第3村において、シンジに対し、「まだあんたはリリンもどき。食べなきゃ生きていられない。こちとらずっと水だけだ」と言っていたように、アスカも半使徒化していたことは間違いないと思われます。
また、第9使徒に浸食された後、第10使徒殲滅後から第12使徒が出現したサードインパクトまでの間に第11使徒として目覚めたとすれば、時期的な条件も満たせます。
しかし、シンエヴァの、新2号機で第13号機に停止信号プラグを差し込むためにアスカが左眼の第9使徒の封印を解いたシーンにおいて、青葉シゲルが「パターン青。ネルフ本部内に第9使徒の反応あり」と言っていたことから、アスカは第9使徒的な扱いだったのではないかと思われます。
アスカが第11使徒なのあれば、第11使徒の信号になるはずだと思われるからです。
真希波マリ説
真希波・マリ・イラストリアスが第11使徒であると考える説です。この説もかなり有力であり、否定する決定打もありません。
シンエヴァの2番艦NHGエアーレーズング内のシーンにおいて、マリが、冬月に対し、「お久しぶりです冬月先生。しっかしこの船の中L結界密度が高すぎません?」と言った後、冬月がLCL化(ATフィールドを失い液状化)してしまったのに対し、マリは無事でした(もっとも、冬月の方が長時間艦内に滞在していました。)。
ここから、マリも人ではない存在になっていたと考えることができます。
人でない存在に変化したタイミングの候補は、破の第10使徒戦で2号機の裏コード「ザ・ビースト」(獣化第2形態)を使用したときです。
プラグ深度がマイナスに達し、マリの目の色が緑色に発光するなど、シンジの覚醒に似た状態になりました。
第10使徒が現れた後ですので、このときに人でない存在に変わったのだとすれば、マリが第11使徒になるための時期的条件は満たします。
しかし、裏コード「ザ・ビースト」を使用して使徒化したのであれば、2号機とのシンクロ率上昇、(一時的な)同化が使徒化の原因ということになりますが、2号機は初号機と異なり、使徒の象徴である生命の実(S2機関)を持っていなかったことから、2号機と同化しても第11使徒にはなれないのではないかという疑問が生じます。
したがって、このときのマリは、2号機と一体化して人でない存在になった(半使徒化した)とはいえるものの、第11使徒になったとまでは言い切れません。
なお、このことは、シンジが覚醒したときの目が赤色に発光したのに対し、マリの目は緑色だったことにも関係しているかもしれません(シンエヴァの、8号機でオーバーラッピングした際も緑色だった。)。
まとめ
以上のとおり、第11使徒は、擬似シン化した初号機とシンジであると考えます。
ただし、つまらない説にはなりますが、第11使徒が普通の使徒だったという説も十分あると思います。
破とQの間の「空白の14年」(劇中描かれなかった期間)に通常の使徒として現れたとするものです。
空白の14年間については、もはや確認する手段がないことが残念です。