今回は、エヴァンゲリオン新劇場版における、真希波(まきなみ)・マリ・イラストリスの年齢問題と正体、イスカリオテのマリアの意味等について考察します。
マリは、1つ1つのセリフや行動に意味深なものが多く、登場人物の中でもとりわけ謎の多いキャラクターです。
エヴァの物語を破壊する存在
マリは、新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版)には登場せず、新劇場版から登場したキャラクターです。
マリのコンセプトは、「新世紀版のエヴァ世界を破壊する存在」であり、なるべく庵野監督の管理外でキャラクターデザインがされたと言われています。
破の、宇宙から落下攻撃を仕掛けてきた第8使徒戦後、マリは、中学校の屋上にいた碇シンジに対し、空中からパラシュートでダイブして来ました。
マリとの会話を終えると、それまで25曲目と26曲目をループしていたシンジのSDAT(音楽プレイヤー)が27曲目に切り替わりました。
これは、マリの登場によってエヴァ世界に変化が生じたことを表した演出だったのだと思われます。
もとはゼーレ所属パイロット
マリが初めて登場したのは、破の冒頭です。マルドゥック計画が実施されていた北極ベタニアベースにおいて、エヴァ仮設5号機に搭乗し、第3使徒と戦闘しました。
全記録全集によれば、北極ベタニアベースは、「秘密結社ゼーレ直轄 第3の使徒厳重保管用基地 ベタニアベース」とされていました。
つまり、マリは、もともとゼーレに所属していたパイロットであると考えられます。
中学校屋上での通話相手はゼーレ関係者
破において、マリは、中学校の屋上にいたシンジにパラシュートでダイブした後、電話で誰かと話していました。この会話は英語でなされていましたが、日本語訳では次のようになっていました。
1「ハイこちらマリ」
2「そう風に流されちゃった」
3「今どっかの学校みたい」
4「ええ?極秘入国しろって言ったじゃない」
5「問題はそっちから話つけてよ」
6「じゃピックアップよろしく」
エヴァンゲリオン新劇場版:破 シンジの中学校屋上
これだけだと、誰と会話しているのか分かりません。しかし、英語訳では、上記セリフの5が次のようになっていました。
「Why don’t you have the Euro branch work this out?」
これを日本語に直すと、「ユーロ支部に解決してもらえない?」になるかと思います。
そうすると、会話していたのは、ネルフのユーロ支部に対し指示を出せるような立場の人間、すなわちゼーレ関係者であると思われます。
プラグスーツもゼーレ仕様
マリが「最強の拒絶タイプ」第10使徒戦で来ていたプラグスーツは、肋骨部分が強調(2本)されたデザインのものでした。
これは、「ゼーレの少年」であるカヲルが、マーク6に搭乗した際に着用していたプラグスーツとよく似ています。
つまり、マリが破で着用していたプラグスーツは、ゼーレ仕様のものだったと思われます。
2号機の裏コードを知っていた
マリは、第10使徒戦において、2号機の裏コード「ザ・ビースト」を発動させました。
この時点において、赤木リツコは、裏コードについて知っていたようですが、日向マコトや伊吹マヤは知らなかったようです(式波アスカは不明ですが、知らなかった可能性が高い。)。
マリが、一部の人間しか知り得ない裏コードまで知っていたのも、ゼーレに所属していたからだと思われます。
2号機バックアップパイロット
破における第7使徒戦後、葛城ミサトは、アスカについて、「第2の少女。エヴァ2号機担当パイロットよ」と言っていました。
序で、リツコが、白レイ(白波)について、「綾波レイ14歳。マルドゥックの報告書によって選ばれた最初の適格者。第1の少女。すなわちエヴァンゲリオン試作零号機専属操縦者」と言っていたことと異なります。
パイロットが「専属」でなく「担当」とされているのは、バックアップの操縦者がいることを意味しているものと思われます。
この点について、破の、2号機が凍結されるシーンにおいて、リツコは、「エヴァは実戦兵器よ。全てにバックアップを用意しているわ。操縦者も含めてね」と言っていました。
そして、マリは、破の「最強の拒絶タイプ」第10使徒戦において、2号機を操縦することができていました。
つまり、マリは、2号機のバックアップパイロットであったと思われます。
新劇場版ではエヴァに魂が無い設定
ところで、新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版)においては、エヴァ各機のコアにはそれぞれ魂が入っており、パイロットがその魂とシンクロしないと動かないという設定になっていました。
新世紀版の弐号機であれば、アスカの母親である惣流・キョウコ・ツェッペリンの魂が入っていたため、惣流アスカが弐号機とシンクロして操縦することができていました。
この設定は、新劇場版の少なくとも2号機以降の機体では無くなっていると思われます。Qで、冬月コウゾウが、初号機の制御を碇ユイの魂によって行っていることを「極初期型制御システム」と表現していたからです。
冬月「エヴァの極初期型制御システムだ。ここでユイ君が発案したコアへのダイレクトエントリーを自らが被験者となり試みた。君も見ていたよ」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q 冬月とシンジが将棋を打つシーン
第10使徒戦での半使徒化
マリは、「最強の拒絶タイプ」第10使徒戦において、裏コード ザ・ビーストを発動し、シンクロ率が限界値を突破しましたが、この時点で「エヴァの呪縛」にかかり、半使徒化したものと思われます。
リツコ「おそらくプラグ深度はマイナス値。汚染区域突入もいとわないとはね」
伊吹マヤ「ダメです。危険すぎます」
エヴァンゲリオン新劇場版:破 第10使徒戦
シンエヴァ特典映像3.0(-120min.)、つまりQ冒頭US作戦の120分前の時点において、マリは既にDSSチョーカーを装着し、人類のことを「リリン達」と呼んでいました。
マリ「もし会えたらどうするのん?14年ぶりだし、目覚めのキッスでもしちゃう?」
アスカ「ぶん殴る!」
マリ「そりゃあ胸熱な展開だにゃ。青春だね」
アスカ「こんな呪われた身体で青春だなんて、笑わせるわ」
マリ「姫。私達はさ、リリン達よりずっと長い春を生きてるんじゃないかにゃ」
シンエヴァ特典映像3.0(-120min.)
半使徒化したことにより、マリは、L結界密度の高いエリアでも活動することができていました(シンエヴァのエアーレーズング内では、冬月のみがLCL化し、マリは無事だった。)。
なお、マリが劇中で描写のない第11使徒であるとの見解も見受けられますが、私は、第11使徒はシンジ+疑似シン化した初号機だと考えています。
ヴィレの8号機パイロット
上記のとおり、もともとゼーレの所属パイットであったマリは、Q以降、敵対組織であるヴィレの一員になっていました。
ヴィレでは、マリはエヴァ8号機を操縦していました。
シンエヴァ特典映像3.0(-46h)の北上ミドリの回想シーンは、サードインパクト後の世界でしたが、ここでマリは、アスカから「新入り」と呼ばれていました。
つまり、マリは、サードインパクト前後にヴィレへ加入したと思われます。
コネメガネの意味とは
ヴィレにおいて、マリは、アスカから「コネメガネ」と呼ばれていました。
破の冒頭、ゼーレ直轄の北極ベタニアベースにおいて、マリは加持リョウジと面識があるようでしたので、「コネメガネ」とは、加持とのコネクションでヴィレに加入したということを表現していたものと思われます。
ネルフのワンコ君の意味とは
劇中において、マリは、シンジのことを度々「ワンコ君」と呼んでいました。
「ネルフのワンコ君」とは、「ネルフの犬」「ネルフに飼われた犬」ということだと思われ、要するに、「自分の信念を持たないでネルフから指示されたことをしているだけ」というニュアンスだったと考えます。
シンジがヴィレに合流した後は、「ヴィレのワンコ君」とも呼んでいましたが、同じ意味だと思われます。
シンエヴァの後半では「シンジ君」に呼び名が変わりましたが、これは、自らの信念で動き始めたシンジのことを認めたからだと考えます。
ところで、マリは、破の、中学校の屋上にいたシンジに空中からパラシュートでダイブした際、まだ名乗ってもいなかったシンジのことを「ネルフのワンコ君」と呼びました。
これは、LCLの香りがすることから即座にシンジであると認識した、つまり、あらかじめシンジの存在を知っていたことを意味しています。
後述するとおり、あらかじめユイからシンジを頼むと言われていたのだと思われます。
マリ「君、いい匂い。LCLの香りがする」
シンジ「え?」
マリ「君、面白いね。じゃ、このことは他言無用で、ネルフのワンコ君」
エヴァンゲリオン新劇場版:破 シンジの中学校屋上
マリの年齢の謎
マリの最大の謎は、その年齢です。
シンエヴァの、ゲンドウの補完シーンにおける学生時代の回想に、マリが登場しました。
マリは、音楽を聴いていたゲンドウの目隠しをはずすと、冬月とユイを紹介していました。つまり、マリは、ゲンドウやユイと同年代で、同じ冬月教授の教え子だったと思われます。
このことは、マリが、ゲンドウを「ゲンドウ君」、冬月を「冬月先生」と呼ぶことからも伺われます。
EXTRA STAGE 夏色のエデン
コミック版第14巻に収録されていた「夏色のエデン」では、上記のゲンドウの回想シーンと似たような設定になっていました。
新劇場版の設定と全く同じかどうかは分かりませんが、参考までに紹介します。
1998年、マリは、16歳であるにもかかわらず、京都の大学に飛び級で入学しました。そこで、冬月教授の形而上(けいじじょう)生物学第1研究室に入りました。
非常に優秀なマリでしたが、研究室の先輩には、マリよりもさらに優秀なユイがいました。
マリは、ユイの眼鏡を盗みますが、これがユイに発覚してしまいます。しかし、ユイは、怒るどころか、マリにその眼鏡をプレゼントします。
マリは、ユイに対し好意を抱いていることを打ち明け、「ゲンドウ君との幸せを願ってますよ」と言ってイギリスへ留学することにしました。
全縁タイプはユイのメガネか
上記「夏色のエデン」において、ユイがマリにプレゼントしたメガネは、全縁タイプのものでした。
破でマリが着用していたメガネも全縁タイプでしたが、これはユイからプレゼントされたメガネなのかもしれません。
破の「最強の拒絶タイプ」第10使徒戦で全縁メガネが壊れたためか、Q以降は半縁(下半分)タイプのメガネになっていましが、シンエヴァラストでマイナス宇宙へシンジを迎えに来た際のマリのメガネは、全縁タイプのものに戻っていました。
シンエヴァラストに全縁タイプのメガネに戻ったのは、シンジと中学校の屋上で対面したときの制服姿に戻ったためであり、それ以上に特別な意味合いはないと思われます。
破で登場したマリ
以上のとおり、本来のマリは、ゲンドウやユイと同年代のはずです(破の時点で40代)。
しかし、破で登場したマリの見た目は、シンジと同年代か、やや上くらいでした。
エヴァの呪縛は無関係
エヴァに搭乗し、シンクロ率が上昇しすぎると、パイロットが半使徒化し(ヒトでなくなり)、食事や睡眠が不要になり、肉体が年をとらなくなるという「エヴァの呪縛」にかかります。
マリの見た目の年齢が実際の年齢と合わないのは、この「エヴァの呪縛」が関係しているのではないかとも思われます。
しかし、マリは、次のセリフのとおり、破の冒頭第3使徒戦で初めてエヴァに乗りましたので、仮にこの時点で「エヴァの呪縛」にかかったとしても、それ以前から既に年齢が合っていなかったことになります(ゲンドウやユイと同年代だとすれば第3使徒戦時は40代のはず)。
マリ「エヴァとのシンクロって聞いてたよりキツイじゃん」
エヴァンゲリオン新劇場版:破 第3使徒戦後
マリの正体とは(年齢問題の説明)
では、マリの年齢問題をどのように理解すればよいのでしょうか。
1 使徒説
シンエヴァのゲンドウの補完シーンの回想に出てくるマリと、破で登場したマリを同一人物と捉え、その正体は使徒であるため、肉体的に年をとらないのだと考える見解です。
この説は、ゲンドウやユイとともに冬月教授の研究室にいた頃から、ずっと見た目の年齢が変わっていないと説明します。
使徒説の問題点
しかし、マリが肉体的に歳をとらないのだとしても、破で登場したマリの精神年齢は、少なくともゲンドウやユイと同じくらいの40代のはずなので、マリが精神的にも子供であるかのような次のセリフは、不自然だといえます。
マリ「やっと乗せてくれたから、いい」
加持「お前は問題児だからな。まっ頼むよ」
エヴァンゲリオン新劇場版:破 冒頭
加持「5号機の自爆プログラムはうまく作動してくれたか。折り込み済みとはいえ、大人の都合に子供を巻き込むのは気が引けるなぁ」
マリ「エヴァとのシンクロって聞いてたよりキツイじゃん」「まぁ生きてりゃいいや。自分の目的に大人を巻き込むのは気後れするなぁ。さよならエヴァ5号機。お役目ご苦労さん」
エヴァンゲリオン新劇場版:破 第3使徒戦後
また、マリが初めから使徒だっとすると、シンエヴァラストのマリの見た目の変化についても説明することができません。
シンエヴァラストの宇部新川駅では、「エヴァの呪縛」から解放され、本来の年齢どおりになったシンジとマリの姿が描写されましたが、同シーンのマリは、それまでの見た目よりも歳をとっていました。
つまり、マリも「エヴァの呪縛」にかかっており、それがネオンジェネシスによって解放され、本来の肉体年齢に戻ったことになりますが、初めから使徒であるがゆえに肉体年齢が変化しなかったのだとすれば、ネオンジェネシス後も同じ10代の見た目のままだったはずです。
よって、使徒説は無いと考えます。
2 クローン(別人)説
シンエヴァのゲンドウの補完シーンの回想に出てくるマリと、破で登場したマリを別人(クローン)と捉える見解です。
この説は、破で登場したマリは、オリジナルのマリから造られたクローンであり、別の人物であると説明します。劇中クローンであることが明らかとなった「綾波シリーズ」「式波シリーズ」に続き、「真希波シリーズ」が存在すると考えるのです。
確かに、クローン(別人)説であれば、上記の使徒説では説明できないマリの年齢問題を解決することができます。
クローン(別人)説の問題点
しかし、マリがクローンであり、かつ、オリジナルとは別人であるとすると、以下のセリフがひっかかります。
黒レイ「ダメ。それは命令じゃない」
マリ「堅物だにゃ。あんたのオリジナルはもっと愛想があったよ」
エヴァンゲリオン新劇場版:Q セントラルドグマ
「あんたのオリジナル」(黒レイのオリジナル)とは、ユイのことです。
このようなセリフは、ユイと実際に交流していなければ出てこないと思いますが、ユイと交流があったのはオリジナルのマリのはずです。
したがって、マリがクローンで、かつ、別人だとすれば、このセリフは不自然といえます。
冬月「君か」
マリ「お久しぶりです。冬月先生」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 エアーレーズング内
このセリフも不自然です。
冬月の教え子だったのは、オリジナルのマリですから、マリがクローンで、かつ、別人だとすれば、「お久しぶりです。冬月先生」とは言わないはずです。
よって、クローン(別人)説も無いと考えます。
3 クローン(同一人物)説:自説
マリがクローンであるとしつつ、シンエヴァのゲンドウの補完シーンの回想に出てくるマリと、破で登場したマリを同一人物と考える見解です。私は、これが正しいと考えています。
つまり、マリのクローンに、マリのオリジナルの「魂」が宿っていると考えます。
近い説として、マリのクローンにオリジナルの「記憶を移植した」と考えるものもありますが、そうすると結局は上記のクローン(別人)説の問題をクリアすることができません。
マリはクローンでありながら、オリジナルの記憶だけでなく、「魂」自体を移植し、オリジナルと全くの同一人物であると考えるのです。いわば、等身大のエヴァといったイメージです。
このように考えると、使徒説とクローン(別人)説では説明困難な問題をいずれもクリアすることができます。
マリの正体は、ゲンドウやユイと同年代のマリのオリジナルの記憶と魂を、自身の10代の肉体に移植させたものであると考えます。
「調整」は不要
なお、クローンには、レイのように、定期的にプラントに入ったり投薬を受ける「調整」をしないと肉体を維持できないタイプと、アスカのように「調整」が不要なタイプとがあります。
マリがクローンであるとすると、アスカと同様に「調整」が不要なタイプだったと言えます。
マリが歌う懐メロ
新劇場版では、個々の事象について、具体的な年月日の記述がほとんどありませんが、時間軸は基本的に新世紀版(テレビアニメ版、旧劇場版)と同様に考えてよいと思います。
ユイが初号機コアにダイレクトエントリーしたのが、新旧ともに西暦2004年で統一されているからです(ユイの墓標より)。
ところで、マリは、次のとおり、劇中で懐メロを口ずさんでいました。
破:第3使徒戦「三百六十五歩のマーチ」1968年 水前寺清子さん
特典映像3.0(-46h):「いっぽんどっこの唄」1966年 水前寺清子さん
特典映像3.0(-46h):「この広い野原いっぱい」1967年 森山良子さん
特典映像3.0(-120min.):「若者たち」1970年 坂本九さん
特典映像3.0(-120min.):「花嫁」1971年 はしだのりひことクライマックスさん
Q:US作戦「ひとりじゃないの」1972年 天地真理さん
シンエヴァ:冒頭「真実一路のマーチ」1969年 水前寺清子さん
シンエヴァ:冒頭「世界は二人のために」1967年 佐良直美さん
これらの演出は、マリは肉体年齢が10代でも精神年齢はゲンドウやユイと同じであることを示す伏線だったと思われます。
イスカリオテのマリアの意味とは
マリは、次のとおり、冬月から「イスカリオテのマリア君」と呼ばれていました。これは何を意味するのでしょうか。
マリ「ゲンドウ君は自らが補完の中心になることで願いをかなえようとしている。それを助けたい、いえ、願いを重ねる冬月先生の気持ちも分かりますが、人類全てを巻き添えにするのは御免被りたいにゃ」
冬月「だろうな。私の役目は終わりだ。君が欲しいものは集めてある。あとはよしなにしたまえ。イスカリオテのマリア君」
マリ「ふふ。超久しぶりに聞いたな。その名前。では、おさらばです」
シン・エヴァンゲリオン劇場版 エアーレーズング内
「イスカリオテ」は、イエス・キリストを裏切り死に追いやった12使徒の1人である「イスカリオテのユダ」から、「マリア」は、イエス・キリストの死と復活を見届けた証人で、イエス・キリストの伴侶だったとする説もある「マグダラのマリア」が関係していると言われています。
そして、「イスカリオテのマリア」とは、「イスカリオテのユダ」と「マグダラのマリア」をかけあわせた造語であると言われています。
多くの考察では、「イスカリオテのマリア」とは、「ゲンドウや冬月を裏切り、神の子シンジを支え伴侶になった」ことを示していると言われていますが、私は違うと思っています。
私も、「イスカリオテのマリア」の由来が、「イスカリオテのユダ」と「マグダラのマリア」であることはその通りだと思います。
しかし、上記セリフによれば、マリが「イスカリオテのマリア」と呼ばれたのは「超久しぶり」なわけですから、冬月がマリにあだ名で呼ぶような関係にあった時期に名付けられたと考えるのが自然です。
つまり、「イスカリオテのマリア」とのあだ名が付けられたのは、マリが京都の大学で冬月の研究室にいた頃だと考えられます。
そうだとすれば、シンジは生まれたかどうかくらいの時期です。にもかかわらず、シンジを支え伴侶になることを予期して「マリア」と呼んだという解釈には無理がある思われます。
さらに、なぜゲンドウや冬月を裏切ったことが、神を裏切ったことを意味する「イスカリオテ」になるのかを説明できていないと思います。
私は、「イスカリオテのマリア」とは、「マリは、ユイに言われてあえてユイを裏切ったように見せたものの、実はユイの最大の理解者であり、ユイを支え、その死(ダイレクトエントリー)と息子シンジの誕生を見届けた証人である」ことを意味しているのだと考えます。以下、説明します。
まず、前提として、私は、ユイ=神であると考察しています。
つまり、イエス・キリストに相当するのは、シンジでなくユイであり、マリが「マグダラのマリア」のように支えていた相手は、ユイのことだと考えます。
また、「イスカリオテのユダ」は、銀貨30枚でイエス・キリストを売った裏切り者のイメージが強いのですが、イエス・キリストは、ユダの裏切りを予期していました。イエス・キリストは、ユダが裏切ることを知りながら、あえてそれを止めることはしなかったのです。
この点に関し、ユダは、イエス・キリストが最も愛し、信頼していた弟子であり、イエス・キリストは、あえてユダに裏切らせたとする説もあります。
ユイは、表向きはゼーレの人類補完計画を進めていましたが、その真の目的は、神の定めから脱却し、人の意志で新たな世界を創生するネオンジェネシスを達成させることでした。
ユイは、このことをマリにだけ知らせ、表向きはユイから(その結果ゼーレ、ゲンドウ、冬月からも)離反させつつ、実はネオンジェネシスの達成をシンジとマリに託していたのだと考えます。
つまり、ユイは、全てを見越した上で、最も信頼するマリに対し、あえてゼーレ、ゲンドウ、冬月を裏切らせ、シンジによるネオンジェネシスの達成を支えるように伝えていたのだと思います。
「イスカリオテのマリア」と名付けたのは、全てを見越したユイだったのではないでしょうか。
なお、「マグダラのマリア」は、「7つの悪霊」に憑りつかれていたところ、イエス・キリストが解放したとする伝説がありますが、ゼーレを7つの悪霊と見ることもできるかと思います(ゼーレは7人)。