今回は、エヴァ初号機が暴走した理由とA10(エーテン)神経接続について考察します。
新劇場版
序 第4使徒戦での暴走
序の第4の使徒(人型)戦は、碇シンジが初めて初号機に搭乗したデビュー戦でした。
シンジはうまく操縦することができず、初号機は少し歩いただけで転倒してしまいました。
そこから初号機は、第4使徒から一方的な攻撃を受け、頭部を貫かれて完全に沈黙してしまいます。
しかし、初号機は再起動します。
同シーンにおいて、ネルフのクルー達は次のような会話をしていました。
伊吹マヤ「そんな。動けるはずありません」
葛城ミサト「まさか」
赤木リツコ「暴走」
エヴァンゲリオン新劇場版:序
初号機は雄叫びをあげ、明らかにシンジの操縦ではない動きで第4使徒を圧倒しました。
暴走は予定されていた
シンジは、父親の碇ゲンドウに急遽呼ばれてネルフに来たわけですから、それまで何の訓練も受けていませんでした。
そんなシンジをいきなり初号機に乗せて使徒と戦わせるというのも無理な話です。
「できるわけないよ!」と言ったシンジの反応は当然です。
しかし、少なくとも、ゲンドウ、冬月コウゾウ、リツコは、シンジがまともに操縦することは無理でも、初号機が暴走して第4使徒を殲滅できると考えていたようです。
シンジを説得するシーンの画コンテでは、「でも綾波レイでさえエヴァとシンクロするのに7ケ月もかかったんでしょ。今来たばかりのこの子にはとても無理よ」と言うミサトに対し、リツコが「座っていればいいわ。それ以上は望みません」と言うことになっていました。
つまり、ただ座っているだけでも勝てる見込みがあることを分かっていたということです。
また、実際に初号機が暴走した際、冬月は、特に驚く様子もなく、「勝ったな」とつぶやきました。
初号機が暴走した理由
上記のとおり、初号機が暴走することはあらかじめ予定されていたと言えるわけですが、初号機が暴走した仕組みは何なのでしょうか。
A10神経接続
シンジが初号機のエントリープラグに入った際、マヤが「A10神経接続異常なし」と言っていました。
「A10神経群」(エーテンしんけいぐん)とは、恐怖、好き嫌いなどの感情を司る実在の脳内神経のことだそうです。
上記マヤのセリフからすると、シンジと初号機のA10神経を接続した、つまり感情を共有できるようにしたということになります。
そうすると、少なくとも、初号機には感情があるということになります(劇中でA10神経接続について語られたのは初号機だけです。)。
碇ユイの感情、意思
初号機に感情があるとして、それは誰のものなのでしょうか。
Qの、冬月とシンジが将棋をするシーンにおいて、冬月は、シンジに対し、「エヴァの極初期型制御システムだ。ここでユイ君が発案したコアへのダイレクトエントリーを自らが被験者となり試みた」と言っていました。
つまり、初号機のコアには、シンジの母親である碇ユイがダイレクトエントリーしていました。
したがって、初号機の感情は、ユイの感情であるということができます。
初号機(ユイ)は、第4使徒に頭部を貫かれ、シンジが抱いた強い恐怖をA10神経を通じて感じとり、シンジを守るために、暴走、つまりシンジの操縦による制御から外れて自らの意思で戦ったのだと考えられます。
破 第10使徒戦は暴走でなく覚醒
破のラスト「最強の拒絶タイプ」第10使徒戦では、初号機の電源が尽きて活動限界を迎えた後、シンジの目が赤く光り「綾波を…返せ!」と言うと、初号機も覚醒し、再起動して第10使徒を圧倒しました。
同シーンにおいて、ネルフのクルー達は次のような会話をしていました。
マヤ「動いてる?活動限界のはずなのに」
ミサト「暴走?」
リツコ「分からない。一体何が、初号機に起こっているのか」
エヴァンゲリオン新劇場版:破
このとき初号機に起きたことは、上記の第4使徒戦のときのような「暴走」ではなく、「覚醒」(擬似シン化)です。
上記のとおり、「暴走」がシンジを守ろうとするユイの意思によるものであるのに対し、「覚醒」はシンジの綾波レイ(白レイ・白波)を救いたいという強力な意思によるものであり、両者は異なっています。
動力源は必要
後述するとおり、新世紀版では、暴走すると動力源(アンビリカルケーブルによる外部電源か内部電源)がなくても動ける設定になっていました。
しかし、これがなぜなのかとの疑問が生じたためか、新劇場版ではこの問題がクリアにされています。
第4使徒戦の暴走時は、アンビリカルケーブル(外部電源)が装着されていました(この点は新世紀版も同様)。
また、破のエヴァ3号機に浸食した第9使徒戦において、初号機は、浸食されたエントリープラグを嚙み砕いて捕食、殲滅しており(新世紀版では握り潰していた。)、このときS2機関(生命の実)を取り込んだと思われます。
したがって、その後の第10使徒戦で活動限界後に再起動できたのは、既にS2機関を取り込み済みであったため、と説明することができます。
新世紀版(テレビアニメ版)
暴走・覚醒シーン
新世紀版においては、初号機は3度再起動しました。
第3使徒サキエル戦(1話)
新劇場版の第4使徒戦(上記)とほぼ同じ状況でした。
第12使徒レリエル戦(16話)
レリエルの「ディラックの海」に引きずり込まれ、電源が無くなるまで虚無空間に閉じ込められました。
しかし、シンジが限界を迎えると、初号機が暴走し、「ディラックの海」から脱出しました。
第14使徒ゼルエル戦(19話)
新劇場版の第10使徒戦(上記)と似たような状況でした。
一旦電源が尽きて活動限界を迎えましたが、初号機が覚醒、再起動して、ゼルエルを圧倒しました。
初号機は、このときゼルエルを捕食し、S2機関を取り込みました。
リツコ「S2機関を自ら取り込んでいるというの?」
加持リョウジ「初号機の覚醒と解放。ゼーレが黙っちゃいませんな」
テレビアニメ版19話
動力源なく再起動可
サキエル戦では、アンビリカルケーブルが装着され外部電源が確保されていましたが、レリエル戦とゼルエル戦では、外部電源も内部電源もない状態で再起動しました。
このように、新世紀版の初号機は、なぜか動力源がない状態でも再起動ができていたことが分かります。
上記のとおり、新劇場版では、この点の疑問がクリアにされています。